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決定的瞬間-Parallel 4

決定的瞬間

夏海は時折、平日の会社帰りに龍太郎のマンションを訪れる事がある。切れかかっている生活用品を置きに行くためだ。龍太郎は本当にそういうことに疎い。大抵は一緒に買い物するのだが、うっかりと買い忘れて、それを思い出すことがある。その日彼女は、そんな日用雑貨を抱えて彼のマンションを訪ねたのだ。
 いつもはそんな時、龍太郎がいたためしはないのだが、その日玄関のドアは開いていた。あれっ、今日は休んじゃったのかしら、風邪でも引いたのかな。彼女はそう思いながらドアを開いた。
 開けてすぐ彼女の目に飛び込んできたのが、龍太郎の靴の横の自分のものではない女物の靴。そして、次に彼女の耳に届いたものに――彼女は全身を強張らせた。
それはあろうことか、女性の嬌声だったのだ。夏海は蹴り飛ばすかのように靴を脱ぎ散らかすと、つかつかと奥の寝室へと進んで行った。そして、勢い込んで彼の寝室に飛び込んだ夏海が目にしたものは――龍太郎が他の女性とまさに繋がろうとしている光景だった。
「海、どうして!」
龍太郎は突然の夏海の来訪に、飛び上がってその女性から離れた。
「同じ家に暮らせないって、ホントはそういうことだったの!」
買ってきた日用品を投げつけながら、夏海はそう叫んだ。
「ち……」
龍太郎は否定しようとしたのだろうか。あるいは舌打ちしたのか……ち、とだけ一言つぶやいて口ごもり、夏海に背を向けた。それから徐に側にあったバスローブを羽織ると振り返り、黙って彼女を見た。
「龍太郎?」
その表情は、それまで夏海が一度も見たことがないもので、冷酷という言葉がしっくりくる冷たい暗い表情だった。
「そうだよ、僕が海だけで満足できるだなんて思ってた訳?」
続いて吐きだされた言葉に、夏海は身震いした。驚きで声を失ってしまった彼女に向かって、龍太郎はさらに続けた。
「ま、一番体の相性が良いのは海だけどね」
そして、龍太郎は夏海の肩を抱いて、耳元で甘く囁いた。
「ねぇ、こういうとこ解かってくれるんだったら、今からでも結婚……してあげても良いけど?」
彼女は肩に置かれた彼の手を払いのけながら叫んだ。
「バ、バカにしないでよ! そんなの解る訳ないじゃない、龍太郎のバカ!」
私は結婚に焦ってあんなこと言ったんじゃない。ただ、龍太郎とずっと一緒に居たかっただけ……
「何よ、こんなもの!」
夏海は誕生日にもらった指輪を引きぬき龍太郎に投げつけると、鞄の中から指輪の箱も取り出して投げつけた。
そして、鞄を鷲掴みにしたまま、彼のマンションを飛び出して行った。

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