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淡い期待-Parallel 2

淡い期待

「はぁ……」
夏海はその日、職場で何度目か判らないため息をついた。
「何かあったの、倉本っち。」
「ううん、別に……」
彼女はため息に気付いた男性社員に、そう答えた。

 言えるわけがない……彼女の目下の悩みは『いつもくるものがこない』ということなのだから。
思えば最近、龍太郎は全くと言って無防備だったりする。それについても、
「間に合わなかった、ゴメンね」
と笑顔で彼に言われてしまうと、もう責める言葉を吐くことが出来ない。それに、それは彼の衒いで、そうなることを本当は望んでいるのではないか。彼が学生だったころならともかく、今はお互い社会人だ。
夏海は心に淡い期待が広がるのを抑える事ができなかった。
 確実なことを知りたい。それなら三ヶ月を越えた方が良いんじゃないだろうか。それにはまだ間がある。でも、内心は一刻でも早く結果が知りたいのだ。その思いの行きつ戻りつが、職場であろうが何であろうが所構わずため息となって吐きだされてしまう。
 頭を切り替えて仕事仕事! 夏海は自分で自分の頭を拳でコンっと叩いて、パソコンの画面に向かった。

 悶々とした日々を過ごしていた夏海がそろそろ検査をと思っていた矢先、「月よりの使者」が訪れた。
彼女は心底ホッとした半面、とても残念だった。龍太郎が何も策を講じないまま突き進むことに期待してしまっただけ……彼女はそう思った。
 期間が空いてしまったそれは、いつもより長く辛かった。彼女は立っていることすらままならなくなり、それを上司に見咎められて早退を命じられた。
 しかし、そんな翌日も彼女はいつも通り、龍太郎のマンションに向かった。
「2回もすっとんだ後だから、もうへろへろ……何か気分悪いし」
そう言いながら、彼女はいつもと同じように部屋の掃除を始めた。
「へぇ、そう」
それに対して龍太郎は残念がる様子もなく、そう言っただけだった。どちらかと言えばホッとしたように夏海には見えた。思わず夏海からため息が漏れる。
「ねぇ、海。辛いんなら掃除なんて良いから。休みなよ」
ため息をつきながらも手を休めない彼女に、彼はそう労いの言葉をかけた。
――体が辛いのはホントだけど……本当に辛いのは心の方――
「そんなこと言ったって、私が掃除しなきゃ龍太郎ってばろくに掃除もしないじゃん!」
この鈍感自己中男は、たぶんそんなことも解んないんだ。夏海はそう思いながら、龍太郎の前でわざと掃除機をせかせかと動かしたのだった。

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