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満月(フルムーン)に焦がれて16

家を出て少し歩いた所で、弘毅は洋介に電話を入れた。
「洋介、今いいか?」
「今、病院にいる。電話できるところまで移動するから、ちょっと待ってくれ。」


「お前、何やってんだ?」
「あ、ああ…」
開口一番そう言った弘毅に、洋介は何が言いたいのかを一瞬で理解したようだった。
「お前、あん時俺を殴ったよな。殴っといて、何でこんなに簡単にドジ踏むんだよ。」
「失敗した訳じゃない、これは小百合の希望だ。」
嫁の希望って…それ何だ!
「希望?いくら小百合ちゃんが希望したって、お前がやらなきゃこんなことにはならんだろーが!」
「俺が手をださなきゃ子供なんてできない、そうだよ!それが正論だ。だが、俺たちの気持ちはこともなげに子供を作ったお前には一生わからんさ!!」
弘毅の言葉に洋介は吐き捨てるようにそう言った。
「俺との交わりが惨めになるからって、夜中に離婚届突きつけられて、子供産むのを取るか離婚を取るか迫られてみろ!自分の今の人生は死んだも同然だとまで言われて…それでもお前は子どもは要らないと突っぱねられるか?!」
弘毅は、軽々しく電話するんじゃなかったと思った。洋介と小百合の性格を考えればアクシデントで妊娠するなどということはあり得ないだろうと判りそうなものじゃないか。
「洋介…ゴメン。俺ってホントにバカだよな。」
弘毅は今一度洋介に殴られたような気がした。
「けどさ、他人になれば、そういうことから解放されるんなら、離婚しても良かったんじゃないか?」
「お前…小百合にそんな小器用なことができると思うか?俺が素直に離婚届に判を押したとしたら、家を出てあいつはたぶんどこかで死ぬよ。」
「まさか?!でも、小百合ちゃんの性格ならありそうで怖いな。」
洋介の言葉に反射的に否定したものの、自由になった小百合が荷物を抱えてふらふらとどこかに消えてしまう姿を想像して、弘毅は思わず身震いした。
「お前も、そう思うだろ。俺は小百合を失いたくない。だから、かけるしかなかったんだ。」
弘毅の耳に悲痛な洋介の声が響く。

「なぁ、それって俺たちのことが原因なのか?」
それから、弘毅は自分が一番聞きたかったことを舌に乗せた。
「それは、気にしなくて良い。あいつと同じ病気の人が困難を乗り越えて子供を産んだと知って、自分もと思ったらしい。」
それならいいけど…と弘毅は思った。それから、洋介は咳払いを1つして、
「勝手なことばかり言うようで悪いが、圭子さんに小百合の支えになってもらえるように頼んでくれないか。」
と言った。
「んなもん、言わなくても圭子は小百合ちゃんの面倒を看るさ。俺は下手なこと、言わない方がいい。」
俺からそんなこと言ったら、絶対に不自然だと弘毅は思った。
「じゃぁな。」
「わざわざ、ありがとう。」

弘毅は電話を切ってから、この重い心のままでは帰れない。今帰れば簡単に圭子に気付かれて、圭子にいきなり外に出たことの説明を強要されてしまいそうだ。もう少しその辺を歩かなければと思った。


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