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着信-遠い旋律17

着信


私は帰ったものの…眠れはしなかった。高広との思い出がいくつもよみがえってきて、涙となって流れていく。私は充電ホルダーにケータイをつないだまま、何度も何度も繰り返しあの曲を聴いた。

私は翌日の準夜勤に出勤した。高広は午前中に元の病院に戻ったと、その時聞かされた。

私たちのことは面と向かって言う人はさすがになかったけれど、陰ではいろいろ囁かれていたみたいだ。中には「別れてるからってさらっと突き離せるなんて薄情ね。」と言っていた人もいたらしい。
「三輪ちゃんのあんときの様子を見てから言えっていうのよね!」
ずっと後になって、同僚の1人がその話を怒りながらしてくれた。
確かに、何も知らない人から見たら、私は死期迫る恋人をあっさり捨てた薄情な女としてしか映らないかもしれない。

私は、仕事に没頭してあいつを忘れようとした。本当は片時も忘れてはいなかったけれど、できるだけ他の患者さんのことを考えるようにして時を過ごした。

ただ…1週間後、悲惨な交通事故から驚異的な回復を見せた松野さんという患者さんが退院したときは涙が止まらなくなってしまった。こんな風に引き戻れる人もいるのにって思ったら、なんで高広だけがあんなに急に逝かなくちゃならないんだろうって思ってしまって、その途端に涙があふれて止まらなくなってしまったのだ。

そして…高広の顔を最後に見たたった23日後の事だった。

その日私は公休で、ノエに無理やり買い物に連れ出されていた。
ノエには高弘の病気のことは一切話していなかった。あの子に話せば何を置いても高広の許へ行くべきだと何度も主張するに決まっている。

「ねぇ、お昼何にしようか?」
ランチの時間はもうだいぶ過ぎていた。
「何でも…いいよ。あんまり食欲ないし…」
私がそう答えるとノエは怒り出した。
「さくら、あんた痩せたのはいいけど、ちょっと減らしすぎ!食べないとその内倒れちゃうよ。もう、高広くんのせいでしょ…あんな薄情な奴、いい加減に忘れなよ。」
「止めて!高広のこと悪く言わないで!!」
事情を説明してない私が悪いんだけど、どうしても聞けなくて私は耳を塞いだ。
「あ、ゴメン…言い過ぎたよ。」
「ううん、こっちこそゴメン…」
「じゃぁ、私の好みでって…これがまた決めらんないのよねぇ。」
そう言いながら、ノエは辺りのお店を物色し始めた。

その時-私のケータイからあの曲が流れた。今、この曲は高広のケータイ番号にしか使っていない。ついに、この時が…そう思った。
「あんた、まだその曲が着メロなの?こりゃどーしよーもないわね。」
何も知らないノエが呆れかえる中、私は震える手で着信ボタンを押した。
「はい…もしもし…」
「三輪さん?!お兄ちゃんが…」

かかってきたのは久美子ちゃんから。でも、その時、私には久美子ちゃんの声にかぶさって高広の声がはっきり聞こえた。
-さくら…さくら…ー
高広、約束どおり呼んでくれるんだね…
「高広?!今…行くから…」
私は声に出してそう高広に呼びかけた。
「三輪さん?お兄ちゃんって?三輪さん?!」
ビックリした様子の久美子ちゃんの声がしだいに遠くなる。
高広と聞いて前を歩いていたノエも驚いて振り返った。

高弘待ってて…あなたのところに今…行くから…
「さくら?!…さくら!高広くんって?あんたどうしたの?さくら!!」

そして…ノエの叫び声を聞きながら、私の体は崩れるように倒れていった。






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