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桜舞い散る下で…遠い旋律16

桜舞い散る下で… 


私は一旦病院を出て、既に散り始めている桜の木の下に行った。
『ホントならあの桜の下でプロポーズするつもりだったんだ。』私にははにかみながらぶっきらぼうに待ってろって言う高広の声が聞こえるような気がした。

まるで、私が断るなんて選択肢が無いみたいに、当然のようにあいつは言うのよ、きっと…
『もうちょっとだけ待っててくれよな。お前に食わせてもらってるようなことはしたくねぇからさ。』
なんてね…ホントにカッコつけなんだから…
私はそんな想像をして、くすっと笑って…涙が1つ2つと流れて…いつしか私は声を上げて泣き出していた。泣いても何も変わらないのに…そう思いながら。

ひとしきり泣いてから、私は再び-今度は出勤するために病院に戻った。白衣に着替えた私は婦長に呼ばれた。
「三輪さん、」
「はい…。」
「今日は中川さんにローテ代わってもらったから、あなた彼についててあげなさい。」
「えっ…」
「306号室の坪内さん、恋人なんでしょ。救急の子に聞いたわ、搬送されてきた時あなたかなり取り乱していたって。」
「お気遣はありがとうございます。でも、私仕事します。実は、彼とは1ヶ月前に別れてるんです。だから、今更…昨日はいきなりでしたからビックリして取り乱してしまいましたけど、もう大丈夫です。」
婦長は私たちが別れていると聞いて驚いている様子だった。
「別れたって、それホントなの?」
婦長は私にそう尋ねた。
「ええ、本当です。」
「でも、あなたはそれで良いの?ずいぶん泣いたみたいだけど。」
しまった…顔を洗った位では、泣き腫らした目は元には戻らなかったみたいだ。
「終ったことですから…」
私は言い訳も思いつかず、ぼそっとそう答えた。

「…でも、夜勤明けの上に、その顔じゃ昨日もほとんど寝てないみたいね。何にしてももう、中川さん出て来ることになってるから、今日は帰りなさい。そうじゃなくても、今のあなたには人の命は任せられないわ。その代わり、明日からはいつも通りお願いするわね。」
婦長は有無を言わせない口調で私にそう言った。
「分かりました。今日は帰ります。」
仕方なく私は、のろのろとロッカールームへと戻って行った。
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theme : 自作小説
genre : 小説・文学

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