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一縷の望み-遠い旋律15

一縷の望み


久美子ちゃんも夕方帰って行き、私はその夜、高広の病室に付き添った。
明け方…再び目を覚ました高広が私を呼んだ。
「さくら…さくら…」
「ここにいるよ、高広。何?苦しいの?」
「心配すんなよ、大丈夫だ。今日はすげぇ楽だから。お前、もう帰れ。」
「高広…」
「オレたちはもう別れてんだから、お前はオレの面倒なんて看ることなんてないんだ。今日も仕事、あるんだろ。」
やっぱり仕事のこと気にするんだ。
「仕事なんて…お願い、そばに居させて。」
私は高広の手を握ってそう言った。
「ここ、お前の病院なんだろ。聞こえたらどうすんだよ。」
そしたら高広はそういって怒った。
「聞こえたって構わないよ。」
私は口を尖らせて返した。こんな状態で仕事になんかならないもん。
「ダメだ!今日仕事ができなくちゃ、この先だって同じだろ。辞めるっていうつもりか?!」
高広の言いたいことは解かっている…でも、心はまた別なんだって…私は、あいつの質問に答えることができなかった。高広は私が黙っていたら、そのまま続けた。
「オレが今、どんな状態だかわかってんだろ?お前の仕事ならこれからオレがどうなるのか、オレよりお前の方が知ってんだろ?」
「止めて、そんな言い方しないで!あきらめちゃうみたいで、すごく辛いよ。」
私はあいつの顔を見ていられなくなって俯いた。そんな私に、高広はこう返した。
「あきらめてんじゃなくて、これは事実だろ。」
そう言われてわたしはまた顔を上げて高広を見た。あいつは笑っていた。すごく穏やかな笑顔だった。
「それに、お前いつもオレのことカッコつけって言うんじゃねぇか。まだ今は、こうやって喋れるけど、その内それもできなくなって、いよいよって時には、オレはお前の名前呼んで泣き叫ぶだけかもしんない。そんなカッコ悪いとこ、お前には見せらんない。」
「カッコなんてどうでも良いじゃない!泣き叫んだって私、あんたのこと嫌いになんかならない!」
最後まで私の名前を呼んでくれるとしたら、その方が嬉しいから…でも、認めたくないと思いながら結局私最後だって認めてるのか…そう思うと悲しかった。
「ヤダよ、これがオレの最後のワガママだ。聞け。」
「最後だなんて言わないで!」
そんなに最後、最後って言わないで!そんなこと…聞きたくないよ!!
「それと、ここに居ると来たくなるだろうから、前の病院に戻れるように手続きしてもらうつもりだから、見舞いには来るな。死んでも葬式には出て欲しくない。」
「何で!何でそこまでしなくちゃならないの!!」
「それがオレの愛し方だ。お前なら解ってくれるよな。」
「そんなのどう解れって言うの?!解らないわよ!解りたく…ないわよ!!」
「ゴメン…これだけはゆずれない…」
高広は目を閉じて、頷きながらそう言った。気持ちは絶対に変わらない、高広の顔はそう言っていた。

このまま、別れてしまって、それで私は何もできないままなの?そんなのヤダ!!何か私ができること…
その時、私の胸に、高広の昨日の一言がよみがえってきた。
-ホントにこいつとはつながっているから…-
…本当に私たちがつながっているのなら…
「じゃぁ、これだけは約束して!もしどうしても辛くなったら私を呼んで。私、どんなとこにいてもあんたのとこに行くから…私たちはつながってるんでしょ。」
私がそう言うと高広の顔色が変わった。
「さくら?お前、あん時ウソ寝してたのか?!」
「ううん、ちゃんと寝てたよ。でも、夢の中でテレビ見てるみたいに、高広と久美子ちゃんが喋ってる姿が見えたの。だから、…私、どこにいてもあんたのところにいける気がする。」
そう言って私は高広のケータイを見た。その様子を見た高広は、そんなとんでもない私の提案を驚いてはいたけど、呆れてはいない様子だった。そして、私が久美子ちゃんとのやり取りを本当にテレビのように見たのだと確信したのかもしれない。
「気がするってな…お前。」
と言いながらも、
「じゃぁ、かあさんと久美子にそん時には電話するように言っとく。」
と答えた。
「ありがと…じゃぁ帰るわ。待ってるから。」
「来れなくても恨むなよ。それ、オレのせいじゃねぇからな。」
「大丈夫私、絶対に行けるから。」
不思議なんだけど、私はその時本気で絶対にいける気がしていた。妙に自信あり気な私を見て、なんだかあいつが嬉しそうな顔をしたように思ったのは、気のせいだったんだろうか。

だから私は、涙ですぐに曇ってしまう目で高広をしっかりと焼き付けて…病室を後にした。



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