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遠い旋律6

部屋を出た高広は、インスタントのコーヒーとポットを持って戻って来た。
「あんたが淹れてくれるんじゃなかったの?」
私はそう言いながら、コーヒーをカップに入れてお湯を注いだ。
「インスタントなんだから、誰が淹れようが大して変わんねぇじゃん。」
帰って来た高広はなんだか不機嫌になっていた。いつもみたいにしゃべってこないから、会話が続かない。何か私、悪い事でも言ったっけ…だけど、思い当たる節はないし、何だか気まずかった。

「じゃぁ、私帰るわ。」
私がそう言ったら、
「えっ、もう…ああ…そうだな、玄関まで送るわ。」
と何か奥歯に物が挟まったような返事が返ってきた。何か言いたそうなんだけど、高広はそれを口にはしなかった。

そして、玄関まで来た時、ドアを開けて近所の高校の制服を着た女の子が入ってきた。
「お兄ちゃん、ただいま!」
「お、おお、お帰り。」
女の子がそう挨拶をすると、高広は何だかすごくマズイって顔になった。
「お兄ちゃん、お客さんだったの?」
「うん、まぁ…紹介するわ。三輪さくら(一旦はそこで切ろうとしたけど)…さん。高校の先輩。さくら(でも、ここで『さん』つけるの忘れてる)、コレ妹の久美子。」
久美子ちゃんは高広に似たかわいい女の子だった。彼女はぺこりとお辞儀して言った。
「はじめまして、妹の久美子です。兄がいつもお世話になってます。」
「べ、別にお世話なんてしてもらってねぇよ。」
「うふふふ…三輪さん、ゆっくりしてってくださいね。」
そううそぶく高広を横目で見ながら、久美子ちゃんは私に向かってそう言った。
「あ…いえ、今もう帰るところですから。」
「あ、そうなんですか?」
「じゃぁな、また連絡するわ。」
そして、高広は右手を挙げながらそう言うと、自分の部屋へ戻ろうとした。それを見た久美子ちゃんは、
「お兄ちゃん、せっかく来てくださったのに、駅まで位送って行ったら?」
と高広を非難した。
「いいですよ、行きだってちゃんと迷わず来れたし。」
駅からそんなに遠くないし、道も迷うようなとこ、なかったもん。だけど、高広はちらっと久美子ちゃんのほうを見て急に
「あ、やっぱオレ送って行くわ。ちょっと待ってろ、今ジャケット取ってくっから。」
と言うと、部屋から慌ててジャケットを取って戻ってきた。

「別に良いのに…」
家を出た後、送って行くと言った割にはずんずんと1人先を歩く高広に私はこう言った。
「…」
「何?聞こえない!」
高広の前を歩きながらの声はぼそぼそとしていて、私には聞き取れなかった。私が聞こえないと言うと、彼はさっきよりもう少し大きな声で言った。
「…あのまま家に居たら、さくらのこと…久美子に質問攻めに遭いそうだったからさ…」
あ、そうか…そうだよね。でも、送った後帰っても同じだと思うけどな。ま、いっか。
「それにしてもさくら、おめー歩くの遅せーよ。貸せ、ほら!」
それから高広は、そう言うと、ジャケットのポケットに突っ込んでいた手を出して、私のギターを引っつかむと、もう一方の手で私の手をギュッと握り締めた。彼の手はとても暖かかった。
高広は私の手を引っ張って、そのまま何も言わずに駅まで歩いた。

(もしかして、怒ってるんじゃなくて照れてるの?)私はそれが分かってホッとした。
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