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深い森 5

 そして、かー君が死んだ。姫ちゃんは親戚でも来賓でもない後ろの席で、ひっそりとかー君を送った。でも、かー君が出棺した後、入院友達が、
「全部終わったね」
って言ったとき姫ちゃんは、
「まだ早いから、かー君の病院に寄ろうかな」
って言ったので、その娘は慌てて姫ちゃんを彼女の家まで送り届けたそうだ。時々あるそうだ。悲しすぎて記憶がとんでしまうこと……
 いや、解っていてもそう言いたかったのかもしれない。家に戻った姫ちゃんはちゃんとかー君の死を受け止めていて、私に『サビシイ』コールをしてきてくれていたから。
 
 そして、それが一週間後ぷっつりとなくなった。その前日、
『以前から約束していた映画に行ってくるよ。行きたくないけど』
と言っていた。映画を見て、すこし吹っ切れたんだろうか。それとも、人混みにやられて最近でなかった発作がまた出たのかも。
 その当時、私は立ち上げたばかりの新しい企画に参加していて、毎日帰るのは日付が変わる寸前で、だから休日は泥のように眠っていて……姫ちゃんはそれを見越して日付が変わったくらいに電話してきていたけれど、さすがに私からそんな時間に電話することもできなかった。
 ううん、本当は怖かったのだ。彼女の家族から姫ちゃんは入院したのではなく、もうすでにかー君のところに旅立ったと言われてしまうのじゃないかと。
 25日後、企画が一段落して私はやっと姫ちゃんちに電話を入れた。
 
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深い森 4

 あまりかからなくなった電話がまたかかり始めたのは、それから一年くらいたった頃だったろうか。
 姫ちゃんは涙声で、
「かー君との結婚を反対されている」
と私に告げた。
 かー君の病状が思わしくなく、正直な話今度発作を起こしたら命の保証はないと言われているらしい。
 かー君と姫ちゃんは、彼の最後のひとときをちゃんと夫婦として共に過ごしたいと思ったのだ。夫として、妻としてならずっと一緒にいられる。いかにも彼ららしいささやかな望みだった。
 でも、夫婦という響きに、かー君がその命の灯を尚も削って命の営みをするんでないか、親たちはそう思っていたみたいだ。
 確かに、死期の迫った若い男性は自らの子孫を残そうという本能が働くのか、したくなるのだと後日誰かに聞いたけれど。姫ちゃんを本当に愛していたかー君が、姫ちゃんの命を削るそんな行為をするとは私には思えなかった。
 その上、かー君のお家はかなりお金持ちだった。そんなこと姫ちゃんも姫ちゃんの両親も望んではいないけど、かー君の両親が亡くなれば、かー君がいなくても遺産が転がり込んでくる。かー君の従兄弟なんかは、面と向かって、『財産目当ての性悪女』
と言ったそうだ。
「ねぇ、たぁちゃん、一緒に居たいって思うのは、いけないことなの?」
 私は、そんな姫ちゃんの嘆きを毎日ほぼ一ヶ月聞き続けた。私にはそれしかしてあげられることがなかったからだ。

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genre : 小説・文学

深い森 3

 姫ちゃんの退学を期に、姫ちゃんちは県外に引っ越しをした。姫ちゃんの病気の権威の先生がいる病院に転院するためだった。
 姫ちゃんはそこで、かー君という一つ年上のにたような病気の男の人と出会った。共に病気を支えあうほほえましい付き合いだった。
 適切な指導だけじゃなく、気持ちの充実もたぶんあったと思う。姫ちゃんの身体はどんどんと元気になっていった。それまでは私が彼女に(自作のこととか)話して聞かせることが多かったけど、完全に逆転して彼女ののろけ話を聞くことの方が圧倒的に多くなった。
 やがて、私にも彼氏ができ(というより、中学時代からつるんでいた友人の一人にコクられたんだけど)二人の間はしばらく疎遠になった。

深い森 2

 私の名前は小山 翼(こやま たすく)。
 姫ちゃん曜子と同じように高校で知り合った。ただ、同じクラスになったことは一度もなかった。
 一年の時隣のクラスで、体育の時は一緒だった。
 私たちは所謂体育見学常連組。私は喘息持ちで、姫ちゃんはなにやら漢字がいっぱいの難しい名前の病気だった。
 みんながわいわいと走り回る中、日陰であるいは教室の中でぽつりと待っていなければならなかった。その分仲良くなるのは早かった。
 だけど、二年の時には隣のクラスでもなかったし、姫ちゃんは大発作を起こし、二学期を丸々棒に振って留年した。
 私の方は、二年で同じクラスになった曜子が副部長をしていて、部費の獲得のために『幽霊でいいから!』とムリムリ入れられた水泳部で、なぜか結局泳がされてしまうことになり、皮肉なことにそれで体力が少しついてあまり休むこともなくなって、無事なんとか高校を卒業できたけど。
 姫ちゃんはその次の年はなんとか二年生を終えたけど、三年生の時また長期入院になり、結局学校は卒業せずにやめなければならなかった。
 元々同じクラスになったことがなかったし、私たちは姫ちゃんが留年しようが、自分が卒業しようがつきあいは続いた。同中ではなかったけれど、お互いの家は割と近く、私は自分の書いた拙い詩や小説なんかを彼女の元に持ち込んで無理矢理読ませていた。
 

theme : オリジナル小説
genre : 小説・文学

深い森 1

 私にとって痛みを伴う作品が映画化され、公開されている。
 仕事終わりにメールを見たら高校時代の友人、曜子からメールが着ていた。
ーねぇ、翼はみた? あの映画。ケンイチ君かっこよかったよぉー
曜子からのそんなのんきなメールに、私は、
ー見てない。見るつもりもない。ー
とすげなく返信した。あの子は年甲斐もなくケンイチ君のファンだから、彼がどんな仕草をしようがかっこよく感じてしまうのだろうけれど。私は……
ー何で?ー
ー言いたくないー
ーどうしてよ、あんたらしくないー
間髪入れずにそう返ってきたメールに、私は大きなため息をついてから、
ー姫ちゃんを思い出すからって言えば解ってくれる?ー
と返信した。曜子から
ーゴメン……ー
と一言だけのメールが届いたのは、私がそのメールを送信して10分も後のことだった。

 








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genre : 小説・文学

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道の先には…… 7

 それから気を取り直して、僕たちは町で唯一の居酒屋兼食堂らしきところに入った。さすがにちゃんとした店構えならそんなに妙なものは出てこないと……信じてマシューに注文してもらう。ただ、先輩は料理と一緒にちゃっかりビールを注文していた。
「先輩、これからまだ車に乗るんだったら、飲酒運転はダメですよ」
と僕が窘めると、
「うるさい、これが飲まずにやってられるか。それに、車の存在していない社会で飲酒運転もクソもあるか」
と逆ギレした。言われてみればそうかも。たくさんあるからルールができてくるのであって、僕たちが乗っている車一台しかなければ、そんなものできる訳がない。
 やがてやってきた料理を僕たちは一切聞かずに食べた。もし聞いて、その材料にさっきマシューが襲われていた『犬もどき』やその他の妙なモンスターなんかが使われていることが判ってしまったら、僕たちは餓死しかねない。僕はともかく、先輩はその可能性大だ。その証拠に、先輩はさっきからベジタリアンに宗旨替えしたのかと思うほど野菜しかつっついていない。
 それでも何とか食事らしいものを終えると、先輩は徐にタバコを取り出して、ライターで火をつけた。それを見てマシューが驚く。
【コータロ、あんた剣の腕もあるのに、魔法も使えるのか?】
【は? ああ、これね。まぁちょっとな】
先輩はマシューがまじまじと見ている、今度の新商品につける予定だったロイヤリティーのライター(つまりタダもらいの品物)を手のひらで転がして不敵な笑みを浮かべた。 
「先輩っ!」
「何だ、宮本。お前何か言いたそうだな」
「先輩、コレって要するにおまけじゃないですか。そんなんで魔法使いごっこなんかしてると後でイタい目に遭いますよ」
「堅いこと言うなって。あっちが勝手に勘違いしてんだから」

 やがて、先輩が一服し終わり、僕たちは席を立った。
【あのぉ、お代は】
【はい、75ガルドになります】
そして料金を尋ねた僕に、店のおかみさんは愛想の良い笑みを浮かべてそう答えた。そうか、75。ずいぶん安いな。えっ? 75……75ガルドぉ!! 
「先輩、通貨単位が違う……」
「そりゃそうだろ。言葉が通じない世界で、金が一緒なわけないだろ」
持っているお金が使えないことに気づいて慌てる僕に、先輩は平然とそう返す。
「じゃぁ、どうして払うんですか! マシューにばっかり払わせられないでしょ?」
「何なら、お前が身体で払う? お前なら高く買ってもらえそうだぞ。何せビクだもんな」
続く僕の言葉に、先輩はそう言って高笑いした。

……やっぱりこの人、鬼だ……



  

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genre : 小説・文学

道の先には…… 6

【男ぉ!!】
【そんなにびっくりすることないでしょ!? 僕ちゃんとスカートなんか穿いてないじゃないですか!】
【そりゃ、勇者様の連れなんだから、お忍びの姫様なのかなぁとか……】
女性に間違われていたことに激怒する僕に、マシューが遠慮がちにそう言った。その目はどことなく傷ついた風。そして、
【バカ、こいつがそんな品のいい顔してるか?】
【確かに上品とは言えないかもしれないけど、かわいいじゃないですか。コータロと並ぶとお似合いです】
先輩がいつものように僕をこき下ろすのに同調して、何気に酷いことをさらっと言ってのける。ううっ、確かに165cmの僕は、183cmの先輩やほぼ変わりないだろうマシューからすれば小柄だけどね、
【げっ、こいつとお似合いだなんて言うな!】
すかさず先輩が言う。でも、それはこっちの台詞です。

【そうか、妙な光に包まれてこっちに運ばれてきたねぇ。あんたたちこれからどうするね】
 それから、僕たちはマシューにここに運ばれてきた経緯を掻い摘んで話した。マシューは僕たちが別に高貴な出自でもなく、歳もさして変わらないことが判ると幾分砕けた口調になっていた。だけど、元々敬語が曖昧(日本語が厳密すぎるのか)な英語では大して変化はないのだけれど。 それに、マシューが僕たちを高貴な出自だと勘違いしたのも、その口語というより、ブリティッシュイングリッシュな日本の英語教育が原因なのだろうし。 
 大体、僕だって私だって、こっちじゃ全部I my meだ。それが間違いの根元だって気がする……って、英語に八つ当たりしても仕方ないのだけどね。

【とにかく、腹が減っていてはなんもいい考えは浮かばんて、リルムの町で腹ごしらえといくか】
マシューに促されて僕たちは町外れで車を降りると(馬のない馬車なんかに乗っていたら、絶対にドン引きされるとマシューが言うので)リルムの町に入った。
【お、良いぞ。今日は市が立ってる】
見ると町のショボいメインストリートにはいくつかの屋台が出ていた。
「プリンだぁ!」
その中に僕は『Mon Pudding』という看板を見つけて色めきたった。車のないこの世界には当然プラ容器なんてものはないらしく、極小のブリキっぽいバケツに黄色いプルプルが収まっていた。
【それ三つ】
すると、その声を聞いたマシューがプリンを買って僕たちに手渡してくれた。
【助けてくれた礼だ、食え】
【うわぁ、ありがとう】
僕はそれを受け取ると、添え付けの木の棒で掬い取って口に入れる。予想通りと言うか、予想以上の美味しさ。
「んまい! 幸せだぁ~」
思わず日本語でうなってしまう。
「相変わらず、おまえの幸せはお手軽だなぁ。ま、なかなかいけるがな」
先輩もまんざらではない様子。
【旨いか】
【はい、とっても】
味を聞いてきたマシューに僕はぶんぶんと首を縦に振ってそう答えた。でも、僕の頷きにニコニコしながらマシューが言った
【そうだろ、そうだろ。ここいらは本当に良いスライムがいっぱいとれるからな】
の一言で、僕と先輩は互いの顔を見合わせて固まってしまった。
「す、スライム!!?」
「お、おえ~っ!」
僕が素っ頓狂な声を上げるのと同時に先輩が吐いた。あんなに美味しかったプリンの原料がほんのついさっき戦ったあのゲル状だっただなんて……
「ショックだ……こんなに美味しいものがスライムでできているなんて……」
「っていいながら、お前まだ食ってんじゃねぇか。一体どんな神経してんだ」
ショックだと言いながらどんどんと食べ続ける僕に、先輩は蒼い顔をしながらそう言った。
「だけど、こんなに美味しいんですよ。それに、途中で捨てるなんてもったいないです、そんなこと僕にはできません」
そのあとも僕は、
『何でこんなに美味しいものがスライムからできてるんだ』と繰り返しつぶやきながら、先輩の分のプリンも平らげたのだった。

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genre : 小説・文学

道の先には……5

 車の中には晴れやかに笑う先輩と、恐怖でゆがんだ顔の男。
 やがて僕らの行く先に、見慣れないヨーロッパ風の田舎町が見えてきた。
【リルムの町だ!】
それを見て男はひきつったまんまでちょっと綻んだ。逆にそれを聞いた先輩の方が苦虫を噛みつぶした顔になって、車を停めた。
「やっぱり、さっきの光で僕たちの方がとばされたみたいですね。異世界トリップってやつですかね」
思案顔で僕がそう言うと、先輩は僕の頭を叩いて、
「何、冷静に分析してやんだ。ったく、やっぱりお前と一緒にいると禄なことがない」
とハンドルに突っ伏した。
「だぁからぁ、先輩が運転してたんだし、僕の所為じゃないですって!」
「うるさい、黙れ!! なら俺の所為だとでも言いたいか」
「別にそんなこと、言ってないでしょ!」
 だけど、僕たちがいつものように言い合いを始めた時、はじめは呆気にとられていた男がクスクスと笑い出した。
【おい、何笑ってんだ。それと、お前名前は?】
【マシュー、マシュー・カールっす】
すると先輩はむっとした顔のまま男に聞いた。
「先輩もこの人の言葉判るんですか?」
「お前がさっきこいつのしゃべってるのは英語だって言ったろ。お前にできることが、俺にできない訳あるか!」
僕が驚いて聞き返すと、先輩はそう言った。でも、よくよく考えてみると、名前聞いただけなんだよね。それだったら誰でもできる……なんてことは口が裂けてもいえないけど。
【で、勇者様方のお名前は】
【俺? 俺は鮎川幸太郎。あ、コータロー・アユカワ、わかるか?】
「OーOh,コータル、コータル」
「コータロー」
「コータロ」
「ま、これが限界か。OK」
マシューは頷くと今度は僕を指さしたので、
【僕は宮本美久。ヨシヒサ・ミヤモト】
「ヨッシャ?」
「ヨシヒサ!!」
「ヨッシャ?」
「よっしゃ、よっしゃそれでいい」
ヨッシャと言ったマシューに、先輩はうなづきながらOKを出す。
「勝手に決めないでください。よっしゃよっしゃって、何十年か前の政治家じゃあるまいし、良い訳ないでしょ!」
名前を聞かれてるのは僕なんですから。
「お前も古いな。じゃぁ、音読みでビクとでも呼ばせるか」
「音読み? ヨシでもヒサでもあるでしょ?」
まぁ、ヨッシャよりはまし……そう言いかけた僕に、マシューはビクというワードに反応し、
「Oh,ヴィク! ヴィクトリア!! OK、OK」
と満面の笑みで理解? を示した。
 だけど、ヴィクトリアって……
【ダメです、やっぱりダメ!! ヴィクトリアって言ったら女性の名前じゃないですか。ダメ、Not Victria! I’m not female!!】
「Not female!?」
慌てて訂正した僕に、マシューは目をまん丸にしてそう聞き返した。

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genre : 小説・文学

道の先には…… 4

 僕たちが駆けつけると、声の主は茶髪で碧眼の男。大きな荷物を今度は犬? みたいな(そう言うにはかわい気のない)奴らに取られようとしていた。その男自身結構ガタイもデカくて一匹ぐらいなら振り切れるんだろうが、相手は4匹もいて、その中の一匹が指揮して集団的に動いているという、なかなか獣とはいえ賢そうな連中だった。
 僕はそのときになってやっと、自分がリンゴを車の中に全部置いてきたことを思い出した。
「宮本、お前は下がってろ!」
僕がそのことに気づいてあたふたしていると、先輩はそう言って、スパナで犬もどきをボカボカと殴ってあっと言う間に退散させた。

【助けてくだすって、本当にありがとうごぜぇました。この中には王都にもって行かなきゃならんでぇじな手紙が入っていたもんで、焦ったですじゃ】
その男の人は何度も頭を下げながらで早口にそう言った。
【オウト? オウトって何?】
【王都と言えば、王都グランディーナに決まってってでしょ? おかしなことを聞かんでくだっせ】
「先輩、この人変です」
「さっきから出てきている変な化けもんと言い、この外人と言い、確かに妙だがな、俺に言わせりゃお前も変だ。大体俺には何を言ってるのかさっぱりわからん。そんな男とちゃんと会話できているお前っていったい何だ?」
「えっ、先輩わからないんですか。この人王様に届ける手紙を守ってくれたってお礼言ってるんですけど」
「お前こいつがしゃべってることわかるのか?」
ものすごく驚いてそう言う先輩に、僕は逆にビックリしながら頷いた。確かに早口だったし、ものすごく訛ってるけど、この人のしゃべっているのは基本英語だ。それがわかれば、時々くるう文法を少し修正すれば内容はつかめる。
「だって、この人のしゃべってるの英語ですよ」
「英語?」
「ええ、かなり訛ってますけど」
「宮本、お前帰国子女か?」
「いいえ。大学英文科でしたけど、外国なんて一度も行ったことないですよ、僕」
「じゃぁ、何で解るんだ?」
「僕授業ちゃんと出てましたもん」
外国に行ったことがないと言った僕に信じられないと目を瞠った先輩に僕は胸を張って答えた。

「……とにかくだな、この男が変なのかお前が変なのかもう少し行ってみれば判るだろ。おいそこの、お前も乗れ! ……Ride in This car」
先輩はひとしきり頭を抱えてから、そう言って男に車に乗るように強要した。
【この車に乗ってくださいと言ってます】
だけど、先輩に車に乗るように言われてもきょとんとしている男に僕が通訳する。
【コレに? 馬のない馬車に……ですかい? 勇者様方も、モンスターに襲われて馬を盗られたんですねぇ。それでおいらを助けて下さったんかぁ。ここでまず一休みしてから出発ってことですね。んじゃま、Lady】
男はそう言って、先に僕が乗り込もうとしていた助手席のドアを開けると、僕の手を取った。そして、僕が乗り込むとおもむろにドアを閉め、自分は後部座席のドアを開けて荷物をドンと放り込むと自分も乗り込んだ。僕は勇者様とLadyという単語にすごく嫌な予感がした。その部分だけは先輩も理解したらしく、僕の顔を見てぶっと吹きながら車に乗り込む。
【で、これからどうするんですかい】
それから身を乗り出しながら聞いた男に、先輩は答える代わりにエンジンをかけ、思いっきりアクセルを踏んだ。
【ば、馬車が……馬もないのに走って…… ぎゃぁ~ お助けを!!!】
 続いて車の中には、僕たちが駆けつける時に聞いたよりさらにひきつった悲鳴が響きわたったのだった。


theme : オリジナル小説
genre : 小説・文学

道の先には…… 3

 先輩はとっさにその辺にあった木の棒を持って構える。某ド〇ク〇の初期アイテム『ひのきのぼう』っていうのがあるけど、さしずめこれは『りんごのぼう』ってところだろうか。何にしても再弱アイテムには違いない。確か剣道2段の先輩は格好に反して意外と素早いゲル状を、それでバンバンふっ叩いている。何をしても様になる人だと思う。
 そのとき、先輩がぶっ叩いているのとは別のゲル状が僕の足にまとわりついてきた。ひえ~っ、キモチワルイ!! 僕は全身総毛立ちながら、そのゲル状に自分の食べていたリンゴをぶつけた。そして自分の手でもげる範囲のリンゴを次々ともぎとって、ガンガンゲル状に投げつける。
「宮本、もういい。これ以上やったら、リンゴがもったいない」
しばらくして、そう言いながら先輩が僕の腕を抑えた。
「僕がどうなってもいいっていうんですか」
「どうなるって、どうもならんだろ。もうこいつとっくにノビてるし」
だって、こんなアンデットっぽい奴、またすぐ復活して動き出しそうな気がするんだもの。そう言おうとした僕に先輩は、
「でも、お前思ったよりもなかなかやるな。さしずめ技名は『リンゴ乱舞』ってとこか。ガキ大将に泣きながらめちゃくちゃな攻撃加えるチビガキみたいで、なかなか良かったぞ」
と言った。一応褒められているみたいだけど、そんな褒め方ってなんかウレシクナイ。
 とにかく、投げたリンゴを回収して(だって、そのまま放置したって腐っていくだけだし、それなら洗って食べた方が……)車に乗せると、先輩はそれを見て鼻で笑った。 その時、ちょっと離れたところから
「Help help me!」
と、ちょっと訛った英語で助けを呼ぶ声が聞こえた。僕はその声を聞くと、自分のスキルなんてものは一切無視して、そこに走り出していた。
「おいこら、宮本! 待てよ!!」
それをみた先輩がやれやれと首を振りながら、今度はトランクを開けて車から修理用のスパナを取り出し、僕の後を追いかけた。

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genre : 小説・文学

道の先には…… 2

 僕たちはしばらくそのまま気を失っていたらしい、次に気がついた時、森の中にいた。落ちる前も山道を走っていたのはそうなんだけど、木の種類が全く違っていた。落ちる前に走っていた周りの木はいかにも日本らしい杉木立だったけれども、今目の前にあるのは広葉樹。しかも、青々としている。それに、心なしか気温も高い気がする。
 それに、落ちてきたはずの切り立った崖とか斜面なんてものはなくて、緩やかな丘みたいなものが遙か向こうまで広がっている。アスファルトで舗装された道は石畳になっているし、なにより確かにかなりな高さを降りたはずなのに、僕たちはもちろん、会社の車(先輩に言わせれば廃車寸前のポンコツ)にもぜんぜん傷なんか一つも付いていなかった。
「おい、宮本、乗れっ」
それを確認した先輩は、そう言って車に戻る。慌てて僕も車に乗るとエンジンをかけ発進させた。
「ちゃんと走るみたいですね」
「ああ、ポンコツの割には上等じゃねぇか」
先輩はそう言ってさらに車を走らせた。
 しばらく行くと道ばたに大きなリンゴの木が見えてきた。真っ赤な実が所狭しとひしめき合っている。
「そう言えばお腹空きましたね。あのリンゴ食べましょうよ」
「宮本、お前の頭には食うことと寝ることしかないのか?」
「そんなこと言ったって、お腹空いたんですから。それに、こんな道ばたにぽつりと植わってるんだから絶対に野生ですよ。採ったって誰にも怒られないと思います」
呆れる先輩に僕は胸を張ってそう答えた。どう言ったって先輩は僕をバカにするだろうし、それなら開き直って空腹を満たす方が建設的だと思わない? 
「じゃぁ、お前勝手に行って採って来い! 俺は知らん」
先輩はそう言うと、僕をリンゴの木の端まで戻って降ろしてくれた。
 僕は僕の背でも届くところになっている実を三つ四つ採り、その内の一つにかぶりついた。
「うー、おいひい」
間違いなく完全無農薬のそれは、僕が今まで食べたリンゴの中で一番美味しかった。
 しかし次の瞬間、僕は
「ぎゃっ!!」
という、悲鳴を上げた。
「宮本、どうした? やっぱり毒リンゴだったのか、それ」
その悲鳴を聞きつけて先輩は後から考えるとあんまりな台詞を吐きながらそれでも降りてきてくれた。
「違いますよ、ほ、ほらアレ……うわぁ!!」
そのとき、震える僕に向かって、そのゲル状の物体が突進してきたのだった。
 

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genre : 小説・文学

道の先には…… 1

「だぁーっ、もう! やっぱりお前と来ると禄な事がねぇ、この疫病神!!」
そう言って車のダッシュボードを叩くのは、僕の会社の先輩鮎川幸太郎。
「そんなぁ、道に迷ったのは僕のせいじゃないですよ」
遠慮がちにそういう僕を先輩はぐっと睨んだ。
「宮本、お前のせいじゃないって!? この状態のどこが都内で頻繁に迷子になる地図の読めないお前のせいじゃないって言うんだ。だから、ナビ付きの俺の車で行くって言ったんだ」
「でも、こんな山道で先輩の真っ赤なセリカちゃんなんて走らせたら、それはそれで何と言われるか……」
それで遠慮がちにそう言った僕に先輩は間髪入れずに、
「黙れ、ヘタレ宮本のくせに。確かにこんな道で俺のかわいいセリカWXに傷でもついた日にゃ、泣くにも泣けない。でも、こんな訳の解らないところで迷うよりは何ぼかましだろ」
と、返した。
「けど、今回は地図見てないし、僕のせいじゃないですって!」
「うるさいっ! 自分が地図見れないのを自慢するな!!」
そう言いながら不毛な言い合いをしているそのとき、ものすごい光に包まれたかと思うと、僕たち(正確に言えば僕たちの乗った車)はいきなり落ちたのだった。
何でだろ、たしかに前に道はあったはずなのに……

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意外な波及効果

先日なろうで頂いたバトン、そのころなろうはほとんど読み専に近かったこともあり、なかなか勇気を出して回せなかったのですが、結構自分の作品紹介にもなりそうな内容なので、FC2小説に転載しました。

その名も『小説家さんを問い詰めるバトン』らしいです。
問い詰められてもなんも吐けないんですけど、まぁ、やってみましょうか。

1:小説を書く際、資料などは使いますか? 何を使いますか? (例:wikipedia、書籍名、etc)

ほとんど、グーグル検索ですね。大体元々得手な事を書いている場合が多いので、その補足として(なんつーと賢そうに聞こえるが、大したことは書いておりませんので)

2:プロットやフローなどは用意しますか? 用意するとしたら、どのように立てていますか?(例:メモ書き、StorYBook、etc)

プロットはほとんど用意しないですね。用意するのは主人公の性格・環境設定。これはかなり徹底的にやるかも。フローはシリーズ物の時には作ってますね。時系列をはっきりさせないと、時々数年の誤差があったりして、後で冷や汗をかきながら訂正することになりますから(実は「切り取られた青空」でそれ、やっちまいました。)
3:小説を、どこかに投稿したことはありますか?

過去、3回も……いずれも予選落ちです。全部ここに持ってきてます(明記してあります)ので、良かったらご一読、粗探しよろしく。


4:あなたの小説(文章)が一番影響を受けている作家さんを一人挙げるとしたら、どなただと思いますか?

その昔は新井素子さんだったのですが、今は個人サイトのIさん。ご迷惑でしょうが、いろんなとこで影響されましたぁって叫ばさせて頂いております

5:あなたの書いた小説に今まで登場した中で、一番好きな情景描写の言い回しを一つ、見せてください。(ネタバレしそうな部分は伏字などで構いません)

それから、彼女は満開の桜を見上げてぽつりと、
「高広が笑っている。」
と言った。一斉に花が咲きそろう様子を『山笑う』と表現した歌人もいる。そう言われれば、このピンクの花の波は、彼の穏やかな笑顔に似ている。

-サクラサク-
今、私の前でもう一つの桜の花が笑っていた。
                  (「再び桜花笑う季(とき)」より)

情景描写……でしょうか(微妙かな)

6:あなたの書いた小説に今まで登場した中で、一番好きな心理描写の言い回しを一つ、見せてください。(ネタバレしそうな部分は伏字などで構いません)

「うん、大好きよ」
夏海は夫に愛していると言えず、大好きだと言葉を濁して答えた。愛しているかどうかは判らない。でも、夫として、子供たちの父親として尊敬し好きなことは間違いない。
 すると、その言葉を待っていたかのように、雅彦は夏海を自分に引きよせてその唇をついばむ。夏海の口内の感触を確かめるようなそれに、夏海は雅彦に愛していると言えないその心の中まで見透かされている様な気がして怖かった。
 夫の唇が離れた時、自然に涙がこぼれた。
「どうした?」
突然涙を流す妻を、雅彦は不思議そうに覗き込む。
「分らないわ、自分でも。最近飲んでないから、弱くなってるのかもしれないわ」
彼女はそう言って、悲しげに笑うしかなかった。
                     (「Parallel」41話より)

 ……実は、明日の原稿です。ま、あと24時間ほどで公開するから、良いですよね(良くない??)

7:あなたの書いた小説に今まで登場した中で、好きな台詞を三つ、見せてください。(ネタバレしそうな部分は伏字などで構いません)

1.男と女の結びつきなど、案外そんな勘違いのなせる業なのかもしれない(「Parallel」)

2.おまえは相談して良かったんだよ。そう、今が良きゃそれで良いんだよ(「満月に焦がれて」)

3.関わっている役者が代わらなければ、昭和が平成になろうがそんなこと何も変わりはしないよ(「Parallel」)

一番好きなのは3.です。アラフィフの実感だから。


8:あなたがこれから小説に書こうとしている台詞で、「今後の見所!」になりそうな意味深台詞を三つ、ここでコソッと教えてはいただけませんか?

「だから、一言言っといてあげるわ。伯母さま、産んでくれて…ありがと…」

これはまだここには持ってきていないある作品のものです。さて、誰が誰に言ってるのかもまだ内緒。


9:小説を書く時に、音楽は聞きますか? 聞くとしたら、どんな音楽を聞きますか?

コレを語らせると、たぶん字数制限をオーバーします。
まず、各作品にテーマソングが存在します。その作品に合わせてそれらしい曲(大抵JPOP)が書き始めると見つかるんです、これが。それを愛用のMP3に入れて繰り返し聞きます。聞いてるか聞いてないか分からなくなるほど聞いたときに一番筆がのりますけど。

10:日々の生活で、「あのキャラならここはこうするだろう」「あのキャラならこれを選ぶだろう」といった妄想が展開されることはありますか?

「遠い旋律」の時に仕事中(スーパーのチェッカー)にいきなりクライマックス部分の妄想劇場が始まってしまいました。(テーマソングが丁度その時有線で流れちゃったんですよ)あれがいちばん焦った。

11:これから小説を書き始めようとしている方に、何かアドバイスがあればどうぞ。

そんな、こちらが教えてください。


12:ありがとうございました。 もし良かったら五人くらいにパスしてはいただけませんでしょうか

ああ、どうしましょう。一応お名前とか出して宜しいでしょうか。見てらっしゃらない可能性の方が高いですけど……(だって私が好きで通い詰めてるだけの方ばかりですもん)

こたろー様
ハットリミキ様
フジヤマ様

(あ、書かなくて良いですよ! 苦し紛れに名前入れただけですから)

もちろん、回す方の名前は外しましたが、私としては飽くまで自己紹介の一環だったんです。

しかし、これに食いついてくださった方がいらして、バトンを拾った上に、回してくださいました。

おかげでFC2小説で、それぞれの方の力作ダイジェストがたくさん読めて原因菌としては恐縮するやら嬉しいやら……

今、お礼とお詫びの行脚の毎日です。

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