スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

最初は面倒だったんですが…

「切り取られた青空」は最初から一話ずつ全部にサブタイトルを冠しました。実際に思い浮かばないものもあって大変だったので、「切り取られた青空-いと-」「遠い旋律」「満月に焦がれて」は最初サブタイトルをつけずに数字だけだったんです。

でも、FC2小説の作品表紙は目次付き。そこに数字が並ぶと何と貧相なことよ…それで急遽話の筋立てに合わせてサブタイトルを付けるようになりました。未だに、ポータル移動時に冠するという悪い癖は抜けていませんがね。

「パラレル」ではそのサブタイ付けを楽しめる余裕も出てきました。それが対タイトル。
<「R」からの解放>→「<R」への回帰>、<嘘→嘘から出た真実>、<同じではない未来→同じではなかった未来>、<愛してる?→それでも…愛してる。結構あるでしょ。

同じシーンを書いているのに、「指輪の記憶」では<関わる役者が変わらなければ>、「my precious」では<君になら…とサブタイトルを変えたり。

ずいぶん前に書いたように、名づけは好きなのかもしれません。

最後に、現時点での私のベストサブタイトルは何だろう?迷うけど、<融けけだした万年雪>かな。
スポンサーサイト

theme : ヒトリゴト
genre : 小説・文学

人生で一番熱い正月?

連載が終了して、今のんびりとしている…はずだったんですが…

FC2(元、現役取りまぜて)つながりで小説コミュにmixiで入ってるんですが、そこのみんなで、SFの短編賞に応募しようというので盛り上がって、慣れないSFなんぞ書いています。

とは言え、パラレルワールドにタイムパラドックス、「Future」も非現実的な世界だった気もしますが。

本業は年末商戦まっただ中。明日までは日配(牛乳・お豆腐などの日持ちのしないもの)以外は入荷するので、品だしで筋肉痛になるほど。

締め切りは成人式明け。正月返上で…さて、完成しますことやら。

内も外も全開で走っております。今年はデブでも走る「師走」です。

theme : 物書きのひとりごと
genre : 小説・文学

ベストパートナー

宿題あるのに、遊んでる子供みたく関係ない物が書きたくなるのが人の常?!
クリスマスをテーマに一つ書いてみました。



ベストパートナー

-12月-町にクリスマスの音楽があふれる頃…

俺はある決心をして、震える手でその電話番号を押した。
1回だけのコールの後、
「はい、浪川です。」
と、聞きなれた声が俺の耳に届いた。
「あ、俺…」
「徹さん…久しぶり、今日は何の用?」
まるで詐欺師のような俺の言い草に、電話の相手-俺の妻の玲子は戸惑った様子でそう返した。
「あのな…聞きたいことって言うかお願いがあるんだが…」
そう言った俺の手は緊張でじっとりと汗ばんでいた。

2年前、俺たち夫婦の仲は冷え切っていた。まだ3歳の佑太が不安そうに見つめる中、どんな些細なことでもケンカせずにはおられなかった。
そんな矢先の遠地への転勤辞令…玲子は佑太や自分の両親の事を理由に一緒に行くとは言わなかった。

「それにね、お互いにもう少し距離を置いた方がいいと思うの。」
そう言う玲子に
「そうだな、それが良いかもしれない。一緒にいなければ、ケンカにもならない。」
俺も、肯いてそう返して…俺は一人任地に赴いた。
だが、一緒にいて埋まらなかった溝は、200km離れて尚更埋まる訳もなく、そろそろけじめをつけて別々に歩き出す方が良いのではないかと思い始めていた。

そんなある日、佑太が一人で電話をしてきた。
「ねぇ、パパ…パパはいつ帰ってくるの。」
「ああ、近々一度帰るよ。」
「ホントに!嬉しいな、お祈りが聞かれたぁ。」
俺が帰ると言うと、佑太は手を叩いて喜んだ。一度帰る-それは、玲子と別れるためだと言うのに…俺の胸がちりちり痛んだ。
「ボクね、このごろ毎日お祈りしてるんだよ、パパとママとずーっと一緒にいられますようにって。ママもお祈りしてるよ。ママが何を祈ってるのかは分かんないけど、お祈りするようになってから、ママ泣かなくなったよ。」
そして、佑太は玲子と佑太が最近、通っている幼稚園のある教会に通い始めたと俺に告げた。それにしても、あの気の強い玲子が泣いている?それも佑太の前で…
「ママ、泣いてたのか?」
「うん…でもママには内緒だよ。」
「ああ、聞かないよ。男の約束だ。」
電話の向こうで、佑太が安堵している様子が判った。

そして次の週末、家に帰った俺は、別れ話をせずに赴任先に戻って来た。玲子は今までとは何かが違っていたからだ。はっきりと何が違うとは言えないのだが、違っていた。そして、いつもとは違って、ケンカをせずに週末を過ごせたのだ。

俺は、玲子が変わった理由が知りたくなり、赴任先近くの教会の扉を叩いた。そこで、キリストに触れられた俺は、その年のクリスマスに洗礼を受ける決心をした。

そして、洗礼式が終わったら新しい自分として、「もう一度やり直したい。こっちに来て一緒に暮さないか。」そう言うために今電話をしたのだ。

「なぁ、クリスマスの週の日曜日なんだけど、こっちに出てこられないか。」
散々迷った挙句、意を決して俺は切り出した。
「どうしても外せない用があるの。行けないわ。ねぇ、その日じゃないとダメ?」
「ああ、今からじゃ予定を変えるのは難しいな…」
俺の他にも洗礼を受ける人がいるし、同じならクリスマスの礼拝の日にやりたかった。
「そう…こっちも私一人の問題じゃないから…」
すると玲子はそう返した。自分ひとりの問題じゃない…あいつの予定は相手のあることなのか。まさか…玲子は既に別の男と?!玲子が変わったのは教会に通い始めたからではなく、俺以外の誰かが支えているからなのか…俺は激しく動悸が打つのを感じた。

「でも、残念だわ。私の方もその日こっちに戻ってきて欲しかったのに…一緒にクリスマスを過ごしたかったわ。」
だが、続いて玲子はそう言った。何だ、勘違いか…俺はホッとして急激に体中の力が抜ける気がした。
「その日、佑太の生活発表会でもあるのか?」
それでも、玲子が俺に戻ってきて欲しいと思うのは、佑太がらみのことしか思い浮かばなかった。
「それは、2月よ。ミッション系の幼稚園が、そんな忙しい時期に発表会なんてしないわよ。」
だが、俺の質問に玲子は笑ってそう答えた。それから、おずおずと続けていった言葉に俺は驚いた。
「あのね、私…クリスチャンになろうと思うの。その洗礼式っていうのがその日曜日なのよ。」
なんてことだ、俺と同じ日に玲子も同じように受洗(洗礼を受けること)を考えていたなんて!
「あ…もしかして、こんなこと相談もなしに勝手に決めちゃっていけなかった?」
驚いて声も出なくなっている俺に、玲子は心配そうにそう尋ねた。
「あ、いや…そうじゃないんだ。実はな、俺がここに来て欲しかったのも、お前と同じなんだ。」
「同じって…」
同じと言われて玲子も驚いている。それはそうかもしれない。あいつは俺が教会に通っていることすら知らないのだから。
「最近、お前が変わった理由が知りたくて、俺も教会に行き始めて…イエス様を信じた。で、洗礼を受けるんだよ。」
「ホントに?!」
「ああ。」
電話口で玲子の鼻をすする音が聞こえた。
「…こんなに早くお祈りが聞かれるなんて…思わなかった。神様感謝します!」
そして、玲子は神に感謝の祈りを捧げた。
「ホントに…感謝だな。」
そんな涙声の玲子の祈りの言葉に、俺の目頭も熱くなった。

「それで、どうしようか…そう言うことなら俺の方をずらしてもらおうか?」
俺の提案に玲子はしばらくの沈黙の後こう言った。
「ううん、このままそれぞれの場所で信仰告白しようよ。私、教会の人にビデオを撮ってもらうから。でね…」
「それが終わったら、こっちに来て一緒に暮してくれないか。」
俺は玲子に言われる前に、言われるであろう言葉をひったくって言った。
「もう…それ私が言おうとしてたのに!そっちで一緒に住んでもいいかって。」
案の定玲子はそう返した。
「やっぱりな。」
「何がやっぱりなの?」
「同じタイミングで同じこと考えてる。」
「あ…」
俺たちはまた同じタイミングで吹き出しそのまましばらく笑い続けた。
「ホントね、私たちってベストパートナーなのかもしれないね。」
「かもしれないじゃないさ、ベストパートナーなんだよ。神様が俺たちを引き合わせたんだから。」
玲子の言葉に俺はそう答えた。

                  - Merry Chirstmas!-


theme : ショートショート
genre : 小説・文学

自分ではここまで最初から考えてなかったんだけどな

実は「パラレル」シリーズのタイトルは私の中では全て英語でした。「パラレル」はもちろんparallel。「指輪の記憶」は本当はRing of memories。

何で和訳したかと言うと、私はブログレベルではサブタイトルを付けずに書くことが多いので、タイトル代わりに作品名を冠するから。これ、全角で書きたいんでひらがなのまま入力しているという変則技使ってますから、

でも、「my precious」「precious dream」「Future」は頑張って毎回ぽちぽちアルファベット打ち込んでしまいました。時々「マイプレ」とか略して書きますけど、preciousという単語をプレシャスとカナ書きすると大事感が減るような気がして…(笑)

そして、「Future」の時にははっきりと意味を持って英語にしてました。語頭が大文字、「未来(みく)」です。
私が「Future」で最初に見たビジョンは未来が自室でパソコンに向かって「パラレル」シリーズを執筆する姿でした。窓の外には雪を冠した壮大な山々…最初は日本アルプス?と思ったんですが、そこに入ってきたのが、2人分のコーヒーを持ったフランス系カナダ人の彼女の夫ジェラール。ああ、ここ外国なの?未来、あんたがこの話書いたんだぁ…とそう解かったとき、私が何故このシリーズのタイトルがすべて英語なのかってことが解かったんです。

まさに「Future」!未来という「パラレル」の序盤にはいない“未計算の値”が最後に全部まとめていっちゃいましたよ。



theme : 物書きのひとりごと
genre : 小説・文学

妄想だからこそできる夢のコラボ!

この際だから、書いちゃおうかなってことを一つ。

夏海の声は、なんとあのチェ・ジウさんなんです。と言うか、彼女の顔を思い浮かべて書きましたし。台詞も衛星吹き替えの田中美里さんではなく、チェ・ジウさん本人のお声で聞こえておりました。

それから、龍太郎は声優の保志総一郎さん、健史は同じく声優の小野大輔さん、康文も声優の佐々木望さん。
で、雅彦がタレントの石塚英彦さん。

第二世代では、秀一郎はそれぞれの実の父親の声で。未来は声優の渡辺美佐さん明日香は声は声優の岡村明美さんなんですが、キャラクターイメージはペ・ドゥナさん。

現実問題このメンバーが集まることは絶対にないでしょうから、妄想だからこそできる、自分だけのコラボレーションというわけなのです。

皆様が持つパラレルメンバーのイメージが壊れなければ良いですが…

theme : キャラクター設定
genre : 小説・文学

使いまわししすぎなんでない?!

あ、そうそう…今回コラボでまた「青空」メンバー出しちゃいました。今回は家族総出です。

家出した未来を預けられる人って…私の中で新しく生み出さないとなると、加奈子しか思い浮かばなかった。で、ネームおこしをしているうちに、陸と秀一郎のキャラが被ってることに気付いた。第3話のタイトル「似ている…」はもろ私がそう呟いてしまったくらいですから、そのままサブタイトルに採用。

ところで、コラボったことで、小ネタが頭に浮かんだんですが、「Future」の流れの中でうまく乗り切れませんでした。近々練り直して番外編として出したいと思います。タイトルは「埋火」の予定。

コラボと言うと、「満月」ともコラボってました。病気ネタそろい踏みということで。

それと、お題小説第二弾「東京LOVER」の女性は清華です。
ま、キャラの分だけ人生があるってのは持論ですけど、少ないキャラを使いまわしすぎかもなぁとも思う今日この頃です。

theme : 話のネタくらいですが…
genre : 小説・文学

明日のことは分らないもの!

今回、別々に書きゃ良いものを、本編、パラレルワールドを同時に書いちゃうという荒業をしてしまったために、「パラレル」と量的には同じなんですが、すごく時間がかかってしまいました。おまけに追っかけでトランスまでしてしまったし。今更ながらに誤字脱字がでてまいります。

もう頭がショートしそうになったこともありましたが、とにかく2つの世界を無事終わらせることができました。

本編の龍太郎の死の真相は彼が持って行ったままで誰も分らなかったでしょ?それを表に出してやりたかったんです。それが書き始めた理由かも。

で、書いていく内に、両方の世界を見ることのできる未来がこのシリーズを書くというオチをつけようということになったんです。最初は、未来がカナダへ旅立つところまでしか書くつもりはなかった。だから第一話のタイトルが「西へ」。で、「再び西へ」で終わると…

でも、特別養子の件を書いたら、秀一郎が言わんでもいいのに、勝手に土下座しちゃいました。で、頭の中に次々と後日談が浮かんできて、んじゃぁ親を全部看取ろうじゃないって話になっちゃったんですねぇ。その間の時代の進歩は一切無視…過去編はかなり気を使ってプチ時代考証したのに、ここまで来てうざうざ…

この後の話ですが…(まだ続くんかい!)
未来は書き上げた「パラレル」シリーズを製本して健史に送ります。マイプレの種明かしは夏海でしたが、本編のすべての種明かしは彼にすることで終了です。親世代が亡くなった後は、もう別々の世界なので未来は相反する世界を見ることはなくなりました。

theme : 物書きのひとりごと
genre : 小説・文学

パラレルお料理教室

今回、龍太郎の好物として出てきた「クラシックショコラ」。
これは、夏海寄りの目線。

龍太郎は本当のところ結構甘い物好き。しかし、病気の再発を恐れてあまりお菓子を食べないようにしていました。そんな彼のために夏海が作ったのが、自作で甘さを極力抑えて作られたこのケーキなのです。

酒豪で甘い物が苦手な夏海もこのケーキは好きでした。なので、ほのかを妊娠した際、甘い物を欲するようになった時に一番最初にチョコレートケーキが頭に浮かんだ訳です。

実は、このケーキ…私自身の得意料理でもあります。というより、ものすごく簡単でおいしいのです。

材料は卵白と牛乳とココアと小麦粉に砂糖。これだけ。

卵白6個分(200g)を砂糖70gを入れてメレンゲにし、そこにと小麦粉50gココア50g牛乳100ccを入れ、あればチョコリキュール(うちの近所では売っているので、使っていますがなくてもバニラエッセンスでOKです)を入れてかき混ぜ、容器に流しいれたら(私の場合火の通りがいいので、シリコンカップに10等分して入れてます)190℃のオーブンで20~22分焼きます。

ただ、このケーキを作ると卵黄がたくさん残るのです。卵黄と言えばマヨネーズ…かもしれませんが、私はマヨが嫌い(加奈子のように恐怖症ではなく、本当に嫌い)余った卵黄は、茶碗蒸しとか、カスタードクリームに化けます。でも、この間バザーのようなものに出品したときには30個も作ったので、卵黄だらけ。あれから20日経つのに、まだあの時作ったカスタードクリームが冷凍庫で残ってます。
卵黄の利用法がこれからの課題です。

theme : 物書きのひとりごと
genre : 小説・文学

タイムパラドックス

「Future」、完結でございます!ああ、終わったぁ~ってのが正直な感想です。

二代にわたってというより、親世代の最期を看取ると言うつもりの第二世代バージョンでした。
実は、「パラレル」執筆中に既に雅彦と夏海の最期のシーンは頭にありました。追いかけるように亡くなる夫婦っていますよね。みんなが口をそろえて、「本当に仲が良かったから。」と言う中、本当にそうなのかしらと思ったりした、意地の悪い作者の一面が出てしまいました。私としては、夏海は龍太郎が、龍太郎は夏海が迎えに来て「本来ある場所」に還っていくというつもりで書いておりました。解かってもらえないでしょうけど。

そんなかなり初期の段階から世界観が決まっていた「パラレル」なんですが、パラレルワールドを書いてしまったことで若干の修正というか、タイムパラドックスが生じた部分があります。

それが、秀一郎の子供を産むのは未来だという事実。「パラレル」だけの時から、本編秀一郎と明日香夫婦の間には明日香の病気が原因で子供がいないというのは見えていたんです。その時ちらっと私の頭を「秀一郎の子供は未来が産む。」ということが頭をかすめたんですが、自分でも意味が解かってませんでした。
後日、「my precious」を書いてパラレルワールドを表面化させた時、当然のように秀一郎と未来は出会い結ばれました。その時、再びこのことが頭をもたげたんです。
??未来って5歳年上だよ、マーさんには一番辛い展開だよっ!と作者が焦る中、どんどんと年の差カップルは愛を深めて…ある意味こちらの二人も「my precious」の健史が結び合わせたんだと作者がようやく開き直った時、「Future」が生まれました。

theme : 物書きのひとりごと
genre : 小説・文学

エピローグ(marine side)

エピローグ(marine side)


【ミク、何を一生懸命書いているんだ?】
私が夜中、パソコンを叩いていると、ジェラールにそう言われた。
【うん?いろいろあったけど、私の人生って面白いかなと思って、今までの事をぽつぽつと書きためてるの。でも、日記にするのも面白くないかなと思って、少し違うことも書き加えて小説にね。】
本当は全部事実だけど、パラレルワールドなんて信じてもらえるはずもないので、私はそう言った。
【えっ、ミクが主人公?見たい!】
すると、彼はそう即答した。そんなジェラールに私は、
【見たいって日本語よ、解らないでしょ?私、自分の文章翻訳なんかしないわよ。】
って返した。本当は見られるのが恥ずかしかったからなんだけどね。
【それでも良いからって言ったら、君は見せてくれるのかな?】
【良いけど…】
読めない日本語の文章を見てどうするつもりよと思った私に、彼は一言、
【君は翻訳ソフトの事を忘れてないかい?第一、私がもっとミクの事を知りたいと思うのはイケナイ事なのかな。】
と言った。あ、しまった、忘れてた。翻訳ソフトの精度って今はかなり良いのよね…
それに、私は彼の『もっとミクの事を知りたいと思うのはイケナイ事なのかな。』という言葉にも感動していた。
【じゃぁ、私の見ていないところで、翻訳ソフトで勝手に見てくれるって言うんなら良いわ。】
私は渋々という調子を装ってそう答えた。

数日後…
【ミク、これ不思議で感動的で…本当に良いよ。私だけじゃなくてもっといろんな人に見てもらいたい。ただね、1つだけ気になるのは「future」って言葉が多用されてるんだけど、これ何?意味がつながらないんだけど。】
私は、それを聞いて吹き出した。それは、精度が良くなった翻訳ソフトでもカバーできない、最後の欠点とでも言えるもの。
【ああ、それは私の名前よ。私の名前は、英語では未来を意味する単語になるから、名前だと思わずに訳しちゃうのよ。】
【そういうことか!それを除けばすごく良かった。そうだ、Webででも発表すればいい。絶対にウケるよ。企業名や個人名を変えればいいんだ。】
謎が解けたジェラールは私にこの話を発表するように言った。
【ダメよ、これ龍太郎さんの事が書いてあるし、見る人が見れば判っちゃう。】
【大丈夫だよ、誰も君が書いてるなんて思いやしないさ。】
【それに、私の名前が未来だから「Future」なのよ。名前を変えたら、この話成立しなくなっちゃうわ。】
【君は、ハンドルネームに本名を使う気かい?ねぇ、出そうよ、これ。君と君の家族との生きた証にもさ。】
書いたものの、人前に出すつもりなんて少しもなかったのに、ジェラールは一生懸命私にWebに載せるように説いた。はじめは絶対にイヤだと思ったけど、ものすごく熱心に言ってくれることと、『生きた証』という言葉が私を捉えた。

私は、自分の事に先立って、ママの事から書くことにした。
タイトルは「パラレル」にした。気持ちは最初からつながっていたのに、決して交われなかった彼らの道筋を思って、「並行」という単語を充てた。

そして私は、パソコンに向かって言葉を紡ぎ始めた。
-私の…私たち家族の生きた証を-

                           Future -fin-

theme : 自作連載小説
genre : 小説・文学

エピローグ(chiffon side)

エピローグ(chiffon side)


私も、全ての星を一回りする年齢になった。

(うふふ、アンヌちゃんの花嫁姿綺麗だったわね。)
私はその日、もう今やほとんど見ることはなくなっていたもう一人の私の夢を久しぶりに見た。それも向こうの龍也くんとアンヌちゃんとの結婚式の夢を。
あのあと、語学留学にカナダに行った龍也くんはアンヌちゃんに一目ぼれ。
それにしても、秀一郎さんと言い、あちらの男性陣ってどうも年上の女性に弱いようだ。

さてと…こんな日にはお祝いじゃないけど、あのケーキでも焼こうかな。
実は、一月前に倒れてから、お義父様の調子が本当に良くない。元々あまり丈夫ではなかったお義父様が、だましだましでも傘寿を超えるまで生きておられるのは、それなりにすごいことだと思うのだけど。きっとお義母様や梁原さんの分まで生きようと頑張られたのに違いない。
そんなお義父様にお義母様ご自慢のケーキを焼いてプリンスオブウェールズを入れて差し上げたら少しは元気になられるかも…そう考えたのだ。

その一月前に倒れた時、三日間の昏睡状態から目覚めたお義父様は泣いておられた。心配して私が尋ねると『夢を見ていた』という。
それも、お義母様と梁原さんが駆け落ちをして、彼が発見された山のふもとで開いた民宿に、20年後お義父様と私の母が結婚してほのかちゃんを連れて訪ねるのだそうだ。
ちなみに私は秀一郎さんの妹らしい。下に弟がいたという。お義父様は知らないけれど、もしかしたらそれはあっちの私の弟の暁彦ちゃんなんじゃないかと思う。
そして、秀一郎さんとほのかちゃんが結婚する。そんな夢だそうだ。

たぶん…あっちの世界で梁原さんが後悔していたように、お義父様もこっちの世界で同じように後悔の念を抱いておられるのだと思う。お互い最期に遺された者同士、パラレルワールドのそれぞれの岸辺でそれぞれの祈りを捧げているのかもしれない。

私は焼きあがったケーキと紅茶を持って、お義父様の部屋に向かった。お義父様は最近では珍しく起きていて、ゆったりと揺り椅子に座っておられた。私は、
「お義父様、ケーキ焼きましたの。お茶とご一緒に…召し上がられます?」
と言ったのだけど、お義父様は、
「ああ、海。へぇ、久しぶりにケーキ焼いたの?そこに置いといて、後で食べるよ。」
と、私とお義母様を間違えた。何だか、その口調がとても若々しい気がしたので、お二人が結婚された頃にでもお気持ちが戻られているのかもしれないなと思った。(ま、いっか…)私は、訂正もせず、椅子のすぐそばのテーブルにそれらを置いて部屋を出た。

夕方になり、私はお皿とカップを取りにお義父様の部屋に入った。お義父様は昼間と同じ姿勢でゆったりとくつろいでおられた。お菓子もお茶も手つかずのままだった。
見ると、窓が開いていてカーテンがふわふわと風に舞っていた。
「お義父様、窓が開いたままですね。風邪でも引かれたら大変ですわ。」
私はそう言って窓を閉めに走った。その時…お義父様が膝の上に置かれた手がコトリと落ち、首が力なく項垂れた…

…ああ、だから…お義父様は私とお義母様を間違えたんじゃない。お義母様が迎えに来られていたんですね。今は3人でお茶を…されているんでしょうか。

私はそうひとりごちると、そのままでそっと部屋のドアを閉めた。


                                 chiffon side -fin-

第二部 marine side 14

【お帰り、ミク】
【ただいま】
私にお帰りのキスをするジェラールに、私も首筋にキスを落として応えた。
【両親を一度になくしてしまうなんて、辛かったね。大変だったろ。】
【ううん、ずっと離れてたから現実味なくてね…それに、大変なことはみんな明日香に任せちゃったから。】
【子供たちとも会ったの】
それから彼は遠慮がちに私にそう聞いた。
【ええ、立派に憎まれ口を叩けるようになってたわ。私、嫌いだってはっきり言われた。】
【そうか…テオと同い年だったっけ?でも、嫌われたって言う割には嬉しそうじゃないか。】
【嫌いだって言われた後、産んでくれてありがとうって…】
【そりゃ、やられたな。】
ジェラールはそれを聞いて笑った。
【ミク、良い子たちだね。】
【そう、とっても良い子たちよ。でも、私じゃあの子たちをあんな風に育てられなかったわ。妹たちのおかげ。】
【そうか、そんな良い子を振り切って君はここに戻ってきてくれた訳か。私はね、もうミクが戻ってこないんじゃないかと思ってた。】
【どうして?両親がいなくなった今、私はもうここしか戻る所はないわ。それとも私はここにいちゃダメなの?】
私がそう言うと、ジェラールは、
【まさか?!その反対だよ。だから、君にこれを…】
と、言って照れながら私に一枚の書類を取り出して渡した。その書類の-結婚証明書の申請-の文字がみるみる涙で歪んでいく。
【ホントに…私なんかで良いの?】
【当たり前じゃないか。実を言うとね、ミクが日本から帰ってなかなか戻ってこないから、アンに責められてたんだ。『ママンは私たちのベビーシッター?いい加減きちんとしてなかったから、ママンはダディの許に戻ってこないのよ。』ってね。】
【そうなの?私はそんなつもりで、日本にいた訳じゃないんだけど。】
アンヌも私の事情を知ってるはずなんだから、これはたぶん、煮え切らない父親にわざと発破をかけていただけなのだろう。わたしは、いかにもアンヌらしいと思った。
【だから…改めて言っておくよ。私は子供のためじゃなく、私のためにミク…君が必要だ。これからも一緒にいてくれるかい。】
【もちろんよ!というより、私がみんなと一緒に居させて、お願いします】
ジェラールは私の返事を聞くと、片手に私の荷物を持ち、反対の方で私の肩を抱いて…私たちは歩き出した。
-私たちのFuture、明日にむかって-

そして、その週が明けた日曜日、私とジェラールは子供たちや親しい人の前で、永遠の愛を誓い合った。

theme : 自作連載小説
genre : 小説・文学

旅立ちの季(とき)第二部 marine side 13

旅立ちの季(とき)


私がカナダに戻る日が来た。空港には明日香と子供たちはもちろん、忙しい仕事の合間を縫って、秀一郎までが来てくれた。
「お姉ちゃん、それじゃぁ…元気で。」
秀一郎から差し出された手を私も握り返す。
「あんたたちも元気でね。そうだ、こっちにも遊びに来てよ、待ってる。」
私も穏やかな気持ちでそう返すことができるようになっていた。
「そうよね、何なら龍也、あなたあっちに留学する?あなたフランス語学科に行きたいって言ってたじゃない。」
すると明日香が龍也にそう言った。
「何で?」
龍也が不思議そうに尋ね返す。
「知らないの?伯母さまの住んでる所って、フランス語で会話する人も多いのよ。」
「へぇ、北アメリカだから、当然英語だけだと思ってたよ。」
龍也はその言葉に目を輝かせた。
「両方通じるから私、あそこに行ったのよ、あの時。」
私は龍也もまたフランス語に興味を持っていてくれていることが、見えない親子の絆を感じたような気がして嬉しかった。

「いい気なもんよね。」
その時、穂香がそう言った。
「そんな理由で、カナダに行ったの。未来伯母さま、私はあなたが嫌いよ。」
「穂香!あなた伯母さまに向かって何て事言うの?!あの話、解ってなかった訳?!」
驚いて叫んだ明日香の方を一瞥した穂香はふてくされた様子で彼女から目を反らして言った。
「勝手に産んで勝手に消えた。そして、14年も経って戻ってきたら嬉しそうに今の子供たちの話をする…そんな女の事をどうして好きになれっていうのよ!私も龍もずっと待ってたんだから。2人で『明日はママお仕事から帰って来るよね。』って毎日、毎日…」
「穂香、ゴメン…」
私が子供たちのためだと思って姿を消したことは間違っていたのだろうか。
「だから、一言言っといてあげるわ。伯母さま、産んでくれて…ありがと…。」
-どんな罵りの言葉も受けなければならない-そう思ってぐっと唇をかみしめた私の耳に意外な言葉が響いた。
「伯母さまが生きていて、帰国するって聞いた時、私今みたいにお母様に言ったら、うんと叱られたわ。『伯母さまはあなたたちを捨てたんじゃないの、あなたたちを私たちの本当の子供にするためには、伯母さまは側にいてはいけなかったのよ。』って言って、お父様とお母様の実子になっている戸籍を見せてくれた…
でもね、それでも私はあなたが私たちを捨てて行ったことは許せない。でもね、産んでくれたことには感謝するわ。生きてるから、そう言えるんだもの。」
「何だよそれ、屈折してやんの。俺はそんなメンドーなことは考えないぞ。」
「何よ、龍の能天気。」
「能天気で結構、人生楽しけりゃいいじゃん。」
二人はそう言いながらお互いを小突きあって笑っていた。
「ありがとね…穂香…ありがとね…みんな…」
涙が止まらなかった。私はこんな小憎らしいことを言う穂香に、そしてそんな言葉を生みだすことができる子に育ててくれた秀一郎と明日香に感謝した。
「じゃぁ私、帰ります!」
涙を振り切るように、私は小学校の子供が下校する時みたく右手を空に高く掲げてそう言った。

そして、私を待つ新しい『家族』の許へと向かって、三度機上の人となった。

theme : 自作連載小説
genre : 小説・文学

おしどり夫婦-第二部 marine side 12

おしどり夫婦


私は、パパの葬儀の後、懐かしい千葉の家に帰った。

ママは元々小柄で食も細い人だったけど、パパが亡くなってからはますます食が細くなり、一段と小さくなってしまった気がした。だから、心配で一人置いてカナダに戻れなくなってしまったのだ。

「未来、あなたそろそろあっちに戻らなくて良いの。」
そうこうしている内に、ママの方からそう聞かれた。
「ママを一人で置いてなんか帰れないよ。」
「私は大丈夫よ。」
私の言葉にママは笑ってそう返した。
「ねぇ、一緒にカナダに来ない?あっちで一緒に住もうよ。実はね、アンヌがどうしてもママをカナダに連れて来いって、毎日メールが来てるのよ。」
「カナダへ?無理だわ。第一、マーさんの49日が明けてもいないのに。」
ママは手を振りながらそう答えた。
「じゃぁ、49日が終わったら。」
「イヤよ、あなたは言葉が解るから苦でもなかったでしょうけど。それに、この歳で外国暮らしなんてまっぴらごめんだわ。」
「じゃぁ、旅行ならいいでしょ。顔だけでも見てやってよ。本当に会いたがってるのよ。」
私がそうやって尚も食い下がると、ママはやれやれといった様子で、
「しょうがないわね、じゃぁ考えておくわ。」
と、渋々旅行ということで承諾した。

そして、私は半ば強引に49日が明けたすぐ後、カナダに行くための2人分の航空チケットを用意した。明日香も、
「その方が急にさびしくならなくて良いわよ。」
と賛成してくれていたのに…

-49日の法要が終わって、いざカナダへと向かうことになった前日の朝-
早起きのママがいつまで経っても起きてこなかった。
「ママ、具合でも悪いの?」
と、私がママの部屋を覗くと、ママはその声にも反応しないで眠ったままだった。渡航の用意とかあったから疲れているのかな…一旦はそう思って部屋を出ようとした。でも、何だか様子がおかしい気がした。第一、耳が異様に良いママが、部屋を覗いて起きなかったことなんてなかったもの。
私は恐る恐るママに近づいた。そして…私はママがもう息をしていないことに気付いた。
だけどママの顔は、本当に眠っているだけのようにしか見えない、安らかでホッとしたような顔をしていた。

-ママのお葬式で-
参列者の人々は口を揃えて、
「飯塚さんのご夫婦は本当に仲が良かったですもんねぇ。だから、ご主人が奥様を放っておけなくて迎えにこられたんですよ。」
と言った。
だけど、私はそうは思わなかった。
確かに高校生だった頃のように、二人に愛が全くなかったなんて今は思っていない。パートナーとして家族として、ママは精一杯パパを愛していたのだと思う。
それでも私は、ママがパパへの恩返しを全うしたから、自分の本来あるべき場所に戻って行った…そんな気がするのだ。

私は、パパ・ママの荷物の整理を終えた後、明日香に後の事を頼んでカナダに戻ることを決めた。

theme : 自作連載小説
genre : 小説・文学

蚊帳の外-第二部 marine side 11

蚊帳の外


夜になった。みんなはパパの思い出話をしていた。30年間娘として一緒に暮してきたのだから、それに参加できなことはもちろんないのだが、悲しみに打ちひしがれている明日香にパパの思い出を一生懸命に話す穂香を見ていると、それに口をさしはさむことが出来なくて、私は一人でパパといようとパパの棺の前に行った。だけど…先約がいた。ヤナのおじさんだった。

「未来ちゃん、どうしたの。積もる話もあるんじゃないのかい?」
ヤナのおじさんは、私を見てそう言った。
「私は…長いこと一緒にいなかったし。今は、自分のことを話す時じゃないもの。」
「そうか…じゃぁ、お互い蚊帳の外って訳だ。」
そう言って、ヤナのおじさんは彼の横に置いてある焼酎の瓶から手酌で自分のグラスに注ぎ入れた。
「俺はね、今マーさんに謝ってた。マーさんには本当に迷惑かけてばっかだったからな。」
そして、乾杯の仕草をして、一口焼酎を飲み込むと、そう言って寂しげに笑った。おじさんは今でも龍太郎さんの言う通りママを自分のものにしなかったことに後悔の念を禁じ得ないのだろう。
「そうですね。お互い何を隠せても、自分の気持ちは変えられませんものね。」
そしてそう言うと、おじさんはぎょっとしたような顔をして私を見た。
「君は俺の何を知ってるって言うんだい?」
「いいえ、私は何も…でもわかるな、龍太郎さんって素敵ですもんね。」
ヤナのおじさんは、続く私の一言で、危うく持っていたグラスを落としそうになった。そして、咳払いを一つすると、
「未来ちゃん、年寄りをからかうもんじゃないよ。それに、君は龍太郎に会ったこともないだろう。」
と憮然とした表情で言った。
「ええ、お会いしたことはないけど、みんなの話を聞いて…秀一郎を見てたら充分分かります。」
本当は私はパラレルワールドの方で、龍太郎さんを義理の父としてその人となりも優しさもよく知っているんだけど、それは言わぬが花だ。
「つくづく君は不思議な娘だな。」
そう言ったヤナのおじさんに、
「それ、褒め言葉だと思っておきます。」
と、私は笑顔で答えた。

私は、あっちの世界はヤナのおじさんの後悔が生んだ世界なんじゃないのかと、ふと思った。

theme : 自作連載小説
genre : 小説・文学

蛙の子は蛙-第二部 marine side 10

懐かしい言葉の海を急ぎパパの待つ病院へと向かう。気持ちはその場所へと逸るけれど、電車はそれに呼応しては走ってくれないなと思いながら。目的の駅に着いた私は、タクシーに乗り込んだ。
「〇〇総合病院へ…」
行き先を告げた私がいらいらとしている様子なのに気付いた運転手さんが、
「どなたかご病気ですか?それとも怪我?」
と私に聞いた。
「父なんです。でも、倒れたと聞いただけで様子が判らなくて。ずっと外国で暮らしていて、14年ぶりに日本に帰って来たものですから…」
「そりゃ、ご心配ですね。大したことがなければ良いですね。」
「ええ…」
運転手さんの言葉に相槌を打った後、私は窓の外の風景をぼんやりと眺めた。運転手さんもそれ以上話すことはせず、車内のラジオのパーソナリティーだけが、楽しそうにおしゃべりを続けていた。

やがて、タクシーは病院に着き、私が受付で「飯塚雅彦」の病室を聞こうとした時のことだった。
「未来ちゃん!」
懐かしい声に振り向くと、そこに…志穂さんが立っていた。志穂さんは悲しそうに私の肩を抱くと、
「未来ちゃん…遅かった…」
とだけ言った。わざわざ私を待っていてくれたらしいことと、その言葉で、私はパパの最期に間に合わなかったことを悟った。
「あなたの乗った飛行機を聞いて、待ってたのよ。とにかく、行きましょう。マーさんが、待ってるわ。」
私は志穂さんの言葉に黙って頷くと、志穂さんに連れられて病院の駐車場に向かった。車には既にヤナのおじさんが乗っていて、
「未来ちゃん、お帰り。」
とだけ言って私たちを乗せると、パパの待つセレモニーホールに向かって走り出した。

そして、セレモニーホールに着いた私は、そこでもう怒鳴ってはくれないパパと対面した。
私が14年の間日本を離れていて、体格の大きい人々の中で暮らしてきたせいもあるのかもしれないけれど、再会したパパはすっかり痩せてしまっていて、大きな大きな私の知っているパパではなくなっていた。
「パパ、ゴメンなさい!私、生きてるってことも知らせないで…」
私はパパの棺に跪いて泣いた。そしたら、それを聞いていた明日香が私の肩に手を置いて言った。
「お姉ちゃん、パパはね、お姉ちゃんがカナダにいる事、知ってたよ。」
「えっ…?」
私は驚いて顔を上げた。
「ゴメン、お姉ちゃんには黙っててって言われたんだけど、私、パパとママと秀君には言っちゃったんだよね。」
「もう、みんな知ってたの…」
明日香の横にいた秀一郎が無言で肯いた。
「あのね、パパが倒れたのって、今回が最初じゃないんだ。もう、5年ぐらい前なの。お姉ちゃんからメールもらった時にはさ、もう自由に動けない状態だったんだ。でも、あの電話でそんなことを言ったらお姉ちゃん心配するでしょ?カナダなんて言ったら、おいそれとは戻ってこれないだろうし…だから、言えなかったの。」
もう5年も前に倒れて、自由に動けなくなってた-ああ、だから明日香は『今のパパはカナダには迎えには行かないよ。』と言ったのだ。と言うより、『行けない』というべきなのかもしれない。そう言えば明日香は『今度は本当に危ないの。』と言っていた。
「パパね、お姉ちゃんがカナダにいるって話したら、怒るどころか『そうか…生きているんだな。子供までいるのか。』って泣いてたよ。私、アンヌちゃんやテオドール君の写真を送れって言ったでしょ?お姉ちゃんも一緒に写ってるのねって注文付けたよね。ほら、これ…」
明日香は私の送った写真を取りだした。写真は綺麗にラミネートされてあった。
「あれ、私じゃなくって本当はパパが欲しがったの。だから、枕元に常に置いとけるようにって、秀君がラミネートしてね。パパ、いつもその写真を見てたよ。」
明日香にそう言われても、私にはパパが涙を流しているところを想像することはできなかった。
「パパさ、『俺に話したことは未来には内緒にしろよ。あいつは今でも、俺の事をカナダまで連れ戻しに行くような頑固親父だと思ってるんだろ。ならそうしといてくれ。』って言ったんだ。ホント、お姉ちゃんとパパって、昔からそっくりなんだから…」
そして、明日香はそう言って声を詰まらせた。

theme : 自作連載小説
genre : 小説・文学

日本へ-第二部 marine side 9

日本へ


私の中で、パパはいつでも元気な存在だった。特に、離れた地で暮らすここ15年ばかりの間は、私の頭の中でパパは全く歳を取ってはいなかった。
でも、よくよく自分の歳を考えれば、パパももう78歳。喜寿を超える年齢に達していた。

私は大急ぎで飛行機のチケットを取ると、荷物をまとめ、日本に向かうことになった。
【ママン、帰るのはいつ?】
私の首筋にアンヌが泣きながらキスをしてそう聞いた。私が迷いながらそれに答えあぐねていると、
【行っちゃヤダ!】
と私に縋りついた。
【アン】
そんな、アンヌにジェラールは優しく呼び掛けた。
【ミクを困らせちゃいけないよ。ミクの本当の家は日本にあるんだからね。】
【だからって、ママンがもう帰ってこなくても良いって言うの?】
すると、アンヌはそんな風に反論した。
【誰もそんなことは言ってないさ。でもね、アンにとってミクが大事なように、ミクにもミクのダディは大事なんだよ。】
【そんなの、解ってるけど…】
解っていると言いながら剥れているアンヌの手を取って、私は言った。
【ねぇ、アン…私はね、帰ってこないつもりはこれっぽっちもないわ。ただ…私のダディの様子がここではちっとも判らないからどれくらいかかるか判らないし、ダディにもしものことがあったら、私のママンは一人ぼっちになってしまうから。】
【じゃぁ、グランマをここに連れてきて!一緒に住めばいいじゃない。】
するとアンヌはそう言った、私はママの事をグランマと言ってくれた事が嬉しかった。
【ありがとう…アンがそう言ってくれて、嬉しいわ。】
【もうそれくらいで良いだろう、アン。飛行機の時間に遅れてしまうよ。さぁ、テオもそんな所で拗ねてないで、ミクに行ってらっしゃいのキスぐらいしたらどうだ。】
ジェラールが軽くため息をついてそう言うと、テオドールが目線を下に落したまま私の頬にキスを落とすと、私に背を向けた。
【じゃぁ、行こうか。】
私はジェラールの運転する車に乗り込むと、空港に向かった。

空港に着いて、搭乗手続きを済ませた私に、彼が言った。
【ゆっくり行って、うんと親孝行しておいで。私たちはいつでもここで待っているから。】
その言葉に、私は彼の首に縋りついて、搭乗のリミットギリギリまでそうしていた。

そして、14年前とは逆の道を辿って、私は懐かしい日本の地に降り立ち、パパの待つ病院を目指した。

theme : 自作連載小説
genre : 小説・文学

日本語の電話-第二部 marine side 8

お姉ちゃんは…今幸せ?」
それから急に、明日香は私に水を向けてきた。
「うん、幸せだよ。じゃないと、電話…かけられなかったかな。会社のボス…ジェラールって言うんだけど、その人と一緒に暮らしてるの。子供もね、彼の前の奥さんとの子供なんだけどね、二人いるんだ。ってか、あの子たちがいたから、私たち一緒にいるようになったんだ。
私がこの町にたどり着いた時、彼、奥さんを亡くしたばっかでね、子供たち…アンヌとテオドールを抱えて途方に暮れてたのよ。とくにテオドールはあの子たちと同い年でね、余計ほっとけなかったのよ。で、仕事に関係なく面倒見てたら、懐かれちゃって…ジェラールの家に帰るようになっちゃったのよね。」
「あはは、そうなの?みんなにお姉ちゃんから連絡があったって伝えとくよ。」
「あっ、ダメ!みんなには内緒にしといて。特に、パパには…。」
「何でさ。」
明日香は慌てて内緒にしてほしいと言った私に、不満そうな声を上げた。
「家を出て13…14年だっけ?それだけ音信不通だったんだもん、パパに知れたら殴られるだけじゃ済みそうにないし、今更カナダまで迎えに来られてもさぁ…」
「カナダまで迎えに?まさか!でも、パパならありそうよねぇ。でも、今のパパなら大丈夫だよ、たぶん。」
私は正直ホントに迎えに来られるかと思って心配してるのに、明日香はそう言って笑い飛ばした。
「でも、お願い。明日香だけの秘密にしておいて。」
「はいはい、解った解った。」
明日香はそう言って電話を切った。

私が明日香に急に連絡を取りたくなったのは、私が今幸せだと言いたかったのかもしれない。

-*-

私はそれから時々明日香と連絡を取るようになった。私にはお互いのパートナーや子供たちの話に盛り上がれる普通の姉妹に戻れたことが一番嬉しかった。

そして、最初の電話から1年半くらいたった日のことだった。昼、仕事の最中にアンヌから電話がかかってきた。
【ママン、今アスカだと思うの、日本語みたいな言葉で電話があって…しかも泣いてるし、意味解んなくて。あっちにかけなおしてみてくれる?】
明日香とは時間が合わないので、普段はほとんどメール。たまに電話するのは、両方の時間の合う明け方だ。しかも、泣いているというのが気にかかる。
私は明日香に電話を入れてみた。でも、呼び出し音ばかりでつながらない。携帯にもかけてみる。あの子のは秀一郎が仕事で海外に行くことも多いので、国際電話対応のタイプだったはずだから。…こちらは話し中だ。
そうこうしている内に、着信音が事務所に響いた。
「もしもし!」
明日香の声だ。
「もしもし、明日香?」
「ああ、お姉ちゃん!やっとつながった…」
明日香は安堵の声を上げた。
「最初慌ててて私、日本語でしゃべってたのにも気づかなかったみたいで…そのうちアンちゃんが電話切っちゃうしさ。」
「それ、アンヌが私にたぶんあんただと思うからかけ直せって、ここに電話してきたのよ。でも、全然つながらないし。どうしたのかと思ったわよ。」
「だから、2回目はちゃんと『Canpany call please!』って連呼したわよ。そしたら、解ってくれて、ここの番号教えてくれた。」
「あんた仮にもYUUKIの次期社長夫人でしょうが、いくらネイティブと接してないって言ったって、そのブロークンな英語は何とかならないの?」
私は吹き出しながらそう言った。すると明日香は怒りながらこう返した。
「私だって、普段ならもう少しマシに話せるわよ!でも、そんなバカ話をしてる暇なんてないの!パパが…倒れたの。」
-パパが倒れたの-
一瞬、私の周りの時間がすべて止まった気がした。
「ねぇ、今度は本当に危ないのよ。お願い、すぐに帰ってきて!…お姉ちゃん、聞いてる?!」
私は手に持っていた受話器を力なく取り落していた。遠くの方で明日香の声が夢みたいに響いた。

theme : 自作小説
genre : 小説・文学

幸せ-第二部 marine side 7

幸せ


「で、さぁ、一つだけお姉ちゃんに謝らなきゃならないんだわ。」
特別養子縁組での顛末を話し終わった後、明日香が私に言った。
「何。」
「私、二人の名前勝手に変えちゃったのよ。」
「名前を変える?」
私にはにわかにはその意味が解らなかった。
「正確に言うと漢字を変えただけなんだけどね。たっくん、達也って達するっていう字だったでしょ、それを龍にしたの。それからほのかちゃんは、ひらがなからお義母さんの穂と、私の香で穂香。
私ね、龍也は本当のとこ龍彦にしたかったのよ。そしたらパパがね、『俺に変な気なんか回すな。漢字ならまだ知らないから今から覚えさせればいいが、名前自体を変えてしまったら、龍也は混乱するぞ。』って聞かないの。私だってママだって、あのころたっくんって呼んでたのにね。だから、たつやのまま字だけ変えるってことになったの。」
「それ、別にあやまることじゃないじゃん。」
明日香は私が付けたくても付けられなかった名前に変えてくれていた。嬉しくて涙がこぼれそうになるのを必死にこらえて、わざとそっけなくそう言った。
「だって、戸籍上だけじゃなく、本当の意味での親子になりたかったんだもん。だから、お義父さんの名前も、お義母さんの名前も私の名前も盛り込んで付けちゃった。私って、欲張りだよね。」
「ありがと…」
欲張りな娘がこんなにみんなのことなんか考えたりしないよ、そう思いつつ私はついにこらえ切れなくなって、涙をこぼしながらようやくお礼だけを言った。
「ううん、お礼を言うのはこっちの方よ。お姉ちゃんがあの時二人を産んで、そして手離してくれなかったら、私は子供を持てなかったから。」
何でもないような調子で明日香はそう返した。
私やあの子たちに気なんか遣わずに、自分たちの子供を産めばいいのにと思った私に、明日香は続けてこう言った。
「私ね、再発したのよ。今度は摘出した訳じゃないんだけど、もう怖くってムリ。」
「明日香…」
何で、この子だけがこんな辛い思いをしなきゃならないんだろう…そう思った私の気持ちを察したのか、明日香はなおも続けた。明日香の口調は軽かった。
「ねぇ、お姉ちゃん。まさか、私がかわいそうだとか思ってないでしょうね。私、かわいそうなんかじゃないよ。たっくんだってほのかちゃんだっているし、それだけじゃないの、私には全世界に子供がいるのよ。いっぺんには何人だか把握してないわ。それくらい、子沢山なんだから。」
「へっ?」
「私たちね、貧困で教育も受けられない世界の子供たちの里親になってるの。今年も一人増えたわ。その子たちからね、『勉強させてくれてありがとう』『ご飯を食べさせてくれてありがとう』って手紙が届くのがすごく楽しみなの。」
「…」
私はそれに対してどう返していいのか分からなかった。
「他の人と比べなくたって良いじゃない。他の人なんて関係ない。私はね、今自分がホントに幸せだと思っているから。」
そして、そう言いきった明日香の言葉には、一点のくもりも迷いもないように私には思えた。

theme : 自作小説
genre : 小説・文学

第二部 marine side 6

しかし、雅彦が力を緩めたのは一瞬だった。
「じゃぁ、未来が望んでもいない関係をお前は無理強いしたのか!許せない、殺してやる!!」
雅彦はそう叫ぶと、秀一郎を掴んでいる手に更に力を込めた。(これでは本当に秀一郎が殺されてしまう)健史が慌てて二人の間に割って入ろうとしたその時だった、夏海が言った。
「マーさん、それは違うわ。未来はね、秀一郎君を本気で愛してた。」
「何だと?!」
雅彦は秀一郎を放り投げて、夏海の方に向き直った。
「そうよ、未来は秀一郎君を本気で好きだったから、手離したのよ。秀一郎君と明日香のためにね。」
「未来が二人のために身を引いただと!!」
「ええ、そうよ。未来はね、秀一郎君は明日香を好きだと思っていたの。だから、あの子はかなわぬ恋を忘れるために別の人とお付き合いしてたの。あの子、あの時25歳だもの、たぶん彼とも関係があったんだと思うわ、だから。妊娠した時点ではどちらが父親だなんて誰にも判らないもの。今なら、達也もほのかもそう言われれば秀一郎君によく似てるって思うし、その気になればDNA鑑定ではっきりさせたって良い。
それにね、あの子は人一倍周りの事を考える子だわ。明日香の事だけじゃなく、そうなったときの秀一郎君の会社での立場なんかも考えたんだと思うわ。まだ学生の身分で年上の女と出来ちゃった結婚する男を企業のトップに据えるのはどうしたものか、そう言う輩が必ず出るってそう思ったの。志穂さん、あちらにも男の子がおられるんでしょ。」
「ええ、妙子さんには3人いらっしゃって、その内二人が男の子なんだけど、長男さんはお義父様を嫌って、家を出て職人みたいなことしてるんだけど、二男さんはYUUKIにいるわ。」
夏海の質問に、すかさず志穂が答えた。
「ウソだ!ウソだ、ウソだ、ウソだ!!」
それを聞くと、雅彦はウソだを連発しながら、今度は夏海に掴みかかった。
「マーさん、もうそれくらいにして、止めましょう。」
そこで、たまりかねて健史がそこに割って入った。
「健史!退け!!お前だってそうだったんじゃないのか?!お前だって、結城さえいなきゃ、お前が夏海とすんなり一緒になれてたって、そう思ってるんじゃないのか?!」
「!…違う…俺は…違うんだ。」
それを聞いた健史はわなわなと震えながらそう言った。
ちなみに、雅彦が健史を健史と呼ぶようになっていたのは、志穂と結婚し帰化して結城姓になり、話すときに龍太郎と混同するためだ。
「いや、やっぱり俺のせいだ。龍太郎に『海を頼む』って言われた時、俺が素直に聞いてればこんなことにはならなかった。誰も…誰も苦しまずに済んだんだ!」
そして健史はそう叫ぶと、頭を抱えながらその場に蹲った。それを見た志穂が健史に駆け寄り、肩を抱く。
「健史さん、それは違うわ。誰にだって聞けることと聞けないことがあるのよ。あなたは何も悪くないわ。」
「そうよ、ヤナ…あなたが悪いんじゃない。私がお見合いをした時、マーさんにちゃんと断れば良かったのよ。一番悪いのは私。」
「違う、俺があの時夏海を引きとめなければ…」
そうして、大人たちは口々に自分の非を唱え始めた。その時、明日香がすっくと机の前に立ち、それをバンっと大きな音をさせて叩いた。
「ねぇ、昔のことなんかどうでもいいでしょ?!それより今を考えようよ。本当に大事なのは何?誰が一番悪いかじゃないでしょ、どうしたらたっくんとほのちゃんが幸せに暮らせるか、それなんじゃないの??」
その場にいた全員が一斉に明日香を見た。
「私はお姉ちゃんの提案を受け入れようと思うの。と言うより、私はあの子たちを自分の本当の子供にずっとしたかったの。だから、戸籍上も私たち夫婦の子供にできるなんて、まるで夢みたいよ。」
「明日香…」
雅彦・夏海の両方から同時にため息に似た娘の名前が漏れた。
「明日香ちゃん、本当にそれでいいの?」
志穂が明日香に向かってそう尋ねた。明日香は大きく頷いた。
「お前はどうなんだ、秀一郎…未来が本当はお前が好きだったと判った今、未来が出てきた途端、乗り換えるなんてことはないだろうな。」
それを見て、雅彦は秀一郎を睨みながらそう言った。
「それはありません、誓って言います。僕に本当に必要なのは明日香です。でなければ、結婚はしていません。」
秀一郎もそれに対して、雅彦の目を見ながらそう返した。
それを聞いた雅彦は大きくため息をつくと、秀一郎に背を向けてぼそりと言った。
「なら…俺はこれ以上何も言わん。お前ら夫婦が納得できているんなら、手続きしてくれば良い。」
「ありがとうございます。」
深々と頭を下げる秀一郎に、
「礼を言われる筋合いはない。俺は先に帰る。」
と言うと、そのまま話し合いの場を後にしたのだった。

theme : 自作連載小説
genre : 小説・文学

プロフィール

こうやまたすく

Author:こうやまたすく
FC2ブログへようこそ!

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

FC2カウンター

カテゴリ

Web page translation

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

QRコード

QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。