スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

切り取られた青空-いと-20

「着いたよ、降りれば?」
私は車を自宅駐車場に止めてエル-香織にこう言った。
「泊まって行くんだろ。わざわざ茨城から僕のところへのこのこやって来たんだからさ。」
私はそう言って車から降りると、彼女の座っている助手席のドアを開けた。
「あ、あの…」
彼女は困惑した表情でドアを開けた私を見上げた。
「別に、逃げたって良いんだよ。今なら駅に戻ってあげるから。」
香織は息を呑んでからくっと口を結ぶと、黙ってかぶりを振った。
「じゃぁ、どうぞ。」
私は彼女を招きいれた。

「へぇ、綺麗にしてるんですね。」
家に入ると、香織は部屋の中をぐるっと見回してそう言った。
「デブだった頃は何をするのも面倒だったけど、最近はマメに掃除するかな。元々あまり物を置く趣味はないし、そのいう意味では散らからないかもね。」


「さあ、こっちだよ。」
私は香織に鞄を置くように促して、隣の部屋-ベッドルームに誘った。部屋の入り口で彼女の足が止まる…
「怖い?逃げるなら今の内かもね。」
私は薄く笑いながら、彼女にそう言って最後の選択をさせた。
私の中の狂気とでも言うのだろうか…
私の中で彼女が逃げ出して欲しいという気持ちと彼女をめちゃくちゃに壊したいという気持ちが交錯していた。

そして…彼女は逃げなかった。私が差し出した手を取って部屋の中に…

その夜、私は彼女を何度も苛んだ。
スポンサーサイト

theme : 自作小説
genre : 小説・文学

ソシテ、ボクハ壊レテイク…切り取られた青空-いと-19

ソシテ、ボクハ壊レテイク…


私はあれ以来、一度もブログ更新をしていなかった。目標を達成してから摂取カロリーを上げたもののカロリー管理も続けていたのだが、それも止めて普通に食べていた。普通に食べているつもりだが、ダイエットしてきた食生活が当たり前になってしまった今、急にリバウンドするということはなかった。

あの電話から何日経った頃だったろうか、夕方会社から帰宅した途端携帯に着信があった。番号だけの着信に、一度は間違いかと思ってそのままにしたが、またかかってきたので取った。

「あの…エイプリルさんですか。」
「ええ、そうですが。」
それは、若い女性の声だった。エイプリルということは、オフ会のメンバーか…
「私、設楽香織-エルです。」
「ああ、エルちゃん、どうしたの?」
そういえば、オフ会の写真を送ってくれると言うので、住所と携帯番号も書いた覚えがある。
「私今、○○の駅にいるんです。会ってもらえますか。」
私は駅名を聞いて驚いた。私の家の最寄り駅だったからだ。
「とにかく、駅まで行くよ。」
しかし、住所1つでここまで来た?一体何のために…
私は訳も分からぬままその最寄り駅まで車を走らせた。とりあえず彼女を乗せて岐阜羽島まで行けば、まだ新幹線はある。常磐線はどうなんだろうか…そんなことを考えながら。

「どうしたの、いきなり。こっちの方に用事でもあって寄ってくれた?」
彼女の何か思いつめたような表情を見ながら、たぶんそんなことはないだろうと思いながら、私はとりあえずそう尋ねた。彼女はうつむきながらゆっくり被りを振った。
「とにかく乗って、岐阜羽島まで送るよ。」
私がそう言うと、彼女はものすごく悲しげな目をして車に乗り込んだ。

車が走り出してからしばらくして、彼女はやっと口を開いた。
「エイプリルさんは…エイプリルさんもブログ止めちゃうんですか。」
それは細く消え入りそうな声だった。私はそれに答えることができなかった。
「かりんさんが突然ブログ止めちゃったからですか?何となくエイプリルさんはかりんさんのこと好きなんじゃないかとは思ってましたけど、そんなので止めちゃうんですか?…」
そして、いきなりかりんの名前を出してきた彼女…だが、まだかりんの名前を聞いて冷静で入られるほど私はこの時大人ではなかった。
「僕がかりんのことが好きだって?!…それがエルちゃんに何の関係がある!!」
かろうじて路肩に車を止めて、私は自分でもビックリするような大声で怒鳴っていた。
「関係あります!私、エイプリルさんが好きだから…まだ一緒にいて欲しいから…急にいなくなっちゃうなんて嫌です。このままだとエイプリルさんブログやめちゃう…そう思ったら、いてもたってもいられなくなったんです。」
彼女が私を…?噓だ!彼女はコメントだけで、かりんのような個人的なやり取りなんて何もなかった。
「好きだなんてそんなこと、軽々しく言わないでくれ!そうさ、僕はかりんを愛していた、彼女もね…僕らはそういう関係だったんだよ。でも、彼女は結局家族を選んで僕の前から姿を消した…」
「…」
「大体、ネットでなんかで本当の愛が育つはずがないんだ!僕がバカだっただけだよ。だから、君の今の僕を好きな気持ちもきっと妄想さ!!」
「そんな、妄想だなんて…ひどい。」
彼女は手を顔に当てて泣き出した。
「じゃぁ何かい、君は今すぐ僕の家族になれるとでも言うのか?それじゃぁ、別の女のことを思う男の子供を産むことができるのか?…子供がいなきゃ、かりんは僕のところに来てくれたはずなんだ…僕はあいつに負けた訳じゃない…」
めちゃくちゃな論理-ソシテ、ボクハ壊レテイク…-

車をUターンさせ、私は今度は自宅に向かって車を走らせた。




theme : 自作小説
genre : 小説・文学

傷心-切り取られた青空-いと-18

傷心


私はその日、浴びるように酒を飲んだ。とは言え、ダイエットのため1年あまりほとんど飲んでいなかった私は、すぐに酔っ払ってしまった。私にはそれが尚更悲しかった。

次の日、出社した私を見て俊樹が言った。
「お前、ひどい顔してんな、女にでも振られたか?」
「まぁな…」
「図星かよ。」
私が口ごもりながら返事をすると、地雷でも踏んだかのように、俊樹はしまったという顔をした。
「でもさ、それだけスリムになったんだから、女が放っとかねーさ。」
「痩せるのとモテるのは別もんだよ。デブにも奥さんのいるやつは五万といるじゃないか。」
私は吐き捨てるようにそう言った。
「こりゃ相当重症だな。さっさと新しい彼女でも見つけた方が、傷の治りも早いんだけどな。」
「そんな簡単に忘れられるか!」
「おお、怖っ。」
私のあまりの剣幕ぶりに、俊樹は取り付く島がないという表情をして持ち場に戻って行った。

そうだ…そんなに簡単に彼女のことを忘れられるものか!!そのとき私は本気でそう思っていた。

theme : 自作小説
genre : 小説・文学

別れ-切り取られた青空-いと-17

別れ


私の中に広がった言いようのない不安が現実のものとなるのに、そう時間はかからなかった。

私たちが逢った日から4日後、かりんからのメールはなかった。更新もされてはいなかったし、私は瞳ちゃんのこともあったから、看病疲れでダウンしてるのかとも思ったが、何かよくない胸騒ぎを抑えることができなかった。

そして翌日、私は帰宅後いつもなら帰宅を知らせるメールを彼女に入れてから更新を見るのだが、その日はメールフォームではなく、彼女のブログから覗いた。そしていきなり目に飛び込んできたのが-彼女のブログ閉鎖のお知らせという記事だった。

程なくして、彼女のほうから別れたいという旨のメールがきた。夫の浮気が勘違いであったこと。私の許に来る事を真剣に考えたが、どうしても自分には家庭は壊せないこと-彼女と夫の欠片は隙間だらけだけれど、それを子供たちがうまくつないで今の形になっているのだと気づいたからと…

何故だ!そんなこと最初からわかってたことじゃないか。私は握りこぶしを机に打ちつけながらそう思った。それを越えられるほど愛してはいなかったのか?なら、最初から気のあるそぶりなんかしなければ良いんだ!!と。

私は初めて彼女の携帯に直接電話を入れた。
「もしもし、かりんちゃん?」
彼女は声で私だとすぐに判って、声を潜めながら、
「待って…駐車場まで行くわ。」
と言った。
「君はそうやって最後まで家族に隠し通そうとする訳だ。まぁ…いいけどね。」

私のそんな皮肉めいた言葉に、彼女は無言のまま駐車場を目指しているようだった。
ドアを開ける音、走って階段を下りる音、そしてキーレスの音…車に乗ったのを音で確認して、私は続けた。
「どういうことか説明してくれるかな。あんなメールじゃ僕は納得できない。」
「ごめんなさい、うまく言葉にならなくて…」
「だってそうだろ、結局旦那にかまってもらえなかった分の遊びだった訳?!旦那が戻ってきたら何事もなかったようにしれっと元の鞘に納まればそれで良いって。」
「それは違うわ!」
彼女は悲鳴にも似た叫び声を上げた。
「一体、どう違うの…同じことだよ。」
結局同じじゃないか…
「ごめんなさい、そうなるかもしれない。でも、私だけなら間違いなくあなたのところに行ったわ。だけど…子どもたちにはパパはあの人だから…」
「そんなの最初からわかってたはずだろ!後悔はないって言ったじゃないか!!」
「恨んでくれてもいいわ、憎んでもらってもいい。もう、決めたの。」
「勝手だ、勝手すぎる!!」
「本当にごめんなさい、今はそれしか言えない…」

そこで通話が途切れた。私はもう一度電話してみたが、彼女はでなかった。一度切ってもう一度かけると、彼女は電源まで切ってしまったらしく、『電波の届かないところにあるか電源が入っていない可能性があります』という電話会社のお決まりのインフォメーションの声が流れるだけだった。

私は携帯を床に放り投げて、しばらくこぶしを握ったまま呆然としていた。

theme : 自作小説
genre : 小説・文学

再会-切り取られた青空-いと-16

再会


私は今回車で彼女の元に行った。新幹線からの乗り継ぎのこともあるけれど、移動できる二人だけの空間-そう思ったからだ。

しかし、待ち合わせ場所で彼女を乗せて走り出したものの、別段目的地がある訳ではない。気の向くまま走って、人通りの全くない川べりに車を止めた。そして、シートを倒して彼女に腕を絡めてキスをした。

それは、半ば冗談のつもりだった。彼女がびっくりして大笑いしてそれでおしまい。そんなシナリオを私は頭に描いていた。

しかし、彼女はびっくりはしたけれど、大笑いも拒否もしなかった。私たちはそのまま溶け合った。私は彼女と本当に1つになれたような気がした。

だが、ことの後、彼女は浮かない顔をしていた。
「やっぱり、こんなとこでなんて思ってる?」
「ううん、なんだか瞳のこと思い出しちゃったから…出かけるとき些細なことでぐずるもんだから、『もうママいなくなっちゃうよ』ってつい言っちゃって。あの子自分が置いてかれることに過剰反応するから…」
そう答えるかりんは母親の顔になっていた。
「じゃぁさ、子供たちも一緒に連れて出てきてくれる?僕は君がいてくれれば一向構わない。この歳だし、いきなり二人の父親って言うのも悪くないかな。」
意を決して切り出した私の提案に、彼女の答えはなかった。

しばらくの沈黙の後、話題を変えて話し始めたとき-彼女の携帯が鳴った。瞳ちゃんの学校からで、熱があるから迎えに来てほしいという連絡だった。
「ごめんなさい、折角わざわざ来てくれたのに、私帰らないと…」
「病気だもの、仕方ないさ。送るよ。」
「じゃぁ、一駅手前で降ろして。そこから電車で帰るから。」
「わかった。」

別れ際、私は車を降りる彼女に、
「子供たちと一緒に来る件、考えていてくれないか。」
と言った。彼女は何も言わず複雑な表情をして頷いて駅に向かった。

彼女が去った後、私の中で言いようのない不安が広がった。



theme : 自作小説
genre : 小説・文学

必然-切り取られた青空-いと-15

必然


帰ってきてからはまた変わり映えのしない日常。仕事場と家との往復で1日が終っていく。

14年前、こっちに帰らずそのまま東京にいたらもっと逢えただろう、そんな思いが頭を占拠する。あのときは父が倒れて、自分も合わない仕事にいっぱいいっぱいで…それが最善の策だったとは思うが。

それに、東京にいてテラさんに会えなかった私は、果たしてダイエットを決意していたかどうか。そう決意したとしても、同じようにかりんに逢えるという確率は宝くじを当てるより難しいのではないか。

-人生に偶然なんてないのよ-
そんなことをブログで誰かが書いていた。

彼女と出会って彼女を愛した、これは必然なのか…?

オフ会の1月後、私は休日出勤をした。そして私は代休に翌週の月曜日を申請し、その旨を彼女にメールした。必然なら必ず手繰り寄せられると信じて。

theme : 自作小説
genre : 小説・文学

距離-切り取られた青空-いと-14

距離


私は家に戻って真っ先にかりんにメールを入れた。しかし、彼女からのメールは返ってこなかった。ブログの更新もされていない。あのあと、体調が悪化して道に倒れたりしてないだろうか…一旦は携帯に電話しようとしたが、私はかけるのをやめた。

-携帯はメールでも着メロが流れるから極力かけないでね。-
彼女はそう言っていた。それに、携帯だからといって彼女が出るという保障は何もないのだ。もしも、彼女の体調がひどく悪化していて入院ということにでもなれば、彼女が出られるはずもなく、最悪いきなり彼女の夫が取る可能性だってあるのだから。

このまま待つしかないのか…何も手につかないまま4日が過ぎた。

そして、5日目にやっとメールが届いた。やはりあのあと寝込んだと書いてあった。彼女のおかあさんが家に手伝いに来ていてパソコンに触ることができなかったと。

普段は感じない彼女との距離を私はひしひしと噛みしめた。こんな思いをするのなら、いっそのこと彼女を連れ去りたいと思った。



theme : 自作小説
genre : 小説・文学

抑え切れない感情-切り取られた青空-いと-13

抑え切れない感情


私たちは駅近くのネットカフェに。横になれるお座敷タイプのシートがあったので、そこでかりんを横にならせた。
「そんなに心配しないで、もう大丈夫よ。」
彼女はしきりに元気なのを私にアピールした。
「信じないよ。」
私は彼女の顔を覗き込んでそう言った。
「どうして?」
「ブログ見てたら分かるよ。君は何にでも一生懸命になってしまうだろ。だから、疲れてても気づかないで走ってしまう。そんな奴を信じられると思う?しばらく横になってて、今なんか冷たいものでももってくるから。」
「…はい。」
彼女はしぶしぶ、でも嬉しそうに頷いた。

ドリンクを運んでから、私はついでに自分のブログの更新をしようとパソコンを開いた。
するとTomさんからメールが着ていた。

-自分、言わないでおこうと思ったんですが、なんか気になって。
だから、率直に言います。エイプリルさん、かりんさんのこと好きなんじゃないですか?かりんさんもまんざらじゃない様子だったし。

でも、かりんさんには旦那さんもお子さんもいらっしゃるわけだし、そういうのって、やっぱりダメですよ。
みんなが不幸になるじゃないですか。

すいません、自分みたいな若輩者が言うのも何かと思いましたが、あえて言わせて頂きました。
もし違っていたら謝ります
                                                   Tom-

「心配してくれてるのよね、みんな…」
「みんなって?」
「あの日、一緒に歩いてたところをうららさんに見られてたみたい。『けしかけたけど、大丈夫?』みたいなメールが着たわ。『人違い』だって送っておいたけど…」
「ばれてるか…」
どんなに押し殺そうとしても抑えきれないこの気持ちは、みんなに丸見えだったのかもしれない。
「でも、僕は後悔してないよ。」
「私も…」
彼女のその一言ですべてを敵に回してもいい、私はそう思った。

theme : 自作小説
genre : 小説・文学

横浜駅-切り取られた青空-いと-12

横浜駅


-月曜日-

朝、早々にホテルを引き払った私は横浜駅に向かった。案の定早く着きすぎてしまったけれど、部屋にいたところで何もすることもないし、こうやって人の波をみるのも悪いもんじゃないと思った。とは言え、休日とは違って人は週明けということもあり、群れることなく一様につまらなそうな顔をして足早に行くだけなのだが、時々明らかに段取りをシュミレーションしながら歩いているとか、ちょっと毛色の変わったのもやってくる。

私はそれこそデブ時代、少し歩けばとんでもなく疲れてしまったこともあるけれど、こうやって人の波の中に身を置くことはほとんどと言ってなかった。たくさんの人に溶け合わない-あの体型が人の波から浮いてしまう。だから、東京時代はそれでも仕方なくそういう場所に居ることもあったが、岐阜に帰ってからは極力避けてきたように思う。

そんなことを思っていると、かりんが現われた。
「ごめん、待った?」
「ううん、全然。」
私はありがちな恋人たちのシチュエーションに嬉しくなった。

「そういえばお土産買わなきゃな。1日伸ばしてるし、何か持って帰らないと何言われるかわからない。かりんちゃん、何かおススメはある?」
「そうねぇ…それなら東京で買ったほうがいいんじゃない?東京行って来るって言ったんでしょ?」
「あっちじゃ、東京も横浜もさして変わらないさ。なんせ、『箱根越えれば闇の中』だから。」
「何それ?」
不思議そうに彼女は私を見た。
「僕が東京の大学に行くとき、ばーちゃんがあんまり心配するもんだから、『心配することないよ、同じ日本の中だから』って言ったらそう言われた。」
「へぇ、そうなんだ…」
彼女は納得したように、笑いながら相槌を打った。
「実際、関東地方に疎い人は多いよ。」

「じゃぁ、何がいいかしらね…でも、ものすごく横浜っぽいのは止めた方が…」
そんなことを言いながら土産物を扱う店に歩を進めようとしたかりんの言葉がふっと途切れた。そして、彼女の体は右に傾いだ。
「かりんちゃん?!」
私は咄嗟に彼女の肩を抱くように支えて彼女の顔を覗き込んだ。彼女はその白い肌をなお白くして、虚ろな表情を浮かべている。
「かりんちゃん!!」
「うん…だいじょぶ…」
大丈夫だという彼女の呂律は今ひとつ回っていなかった。
「大丈夫じゃないよ、真っ青な顔して!!」
少し経って、彼女は一度頭を振ると、顔を上げて私を見た。顔色は先程よりは幾分マシにはなっていた。
「ありがとう、もう大丈夫よ。ちょっと眩暈がしただけだから。お土産何が良いかしら。」
「ダメだ。お土産なんてもうどうでもいいよ。新幹線に乗るときに何でもつかんで帰りゃ済むことだから。それより落ち着くこと探そう。」
私は有無を言わせずかりんの肩を抱いて休憩ができる場所を探した。

theme : 自作小説
genre : 小説・文学

東京での空白-切り取られた青空-いと-11

東京での空白


私は彼女との逢瀬を一度きりにしたくはなかったので、東京での滞在を1日伸ばすことにした。専業主婦の彼女は、翌日の日曜日より平日の方が動きがとれるようだったからだ。

朝、彼女から『明日9時に横浜駅に来て欲しい』とのメールを受け取る。彼女には東京に住んでいたことを話したけれど、横浜は土地勘がないと思ったんだろうか、それとも偶然を装うためなのか…

それにしても何も予定のない空っぽの日曜日、私は今のサイズに合わせた服を探してみたりして時間をつぶそうとしてはみたものの、まったく時が進まない。こんな時、以前なら食べることでずいぶん間が持ったような気がする。というか、食べることにこんなに時間を割いていたのかと思うくらい私はいつでも食べ続けていたのだと思う。

だからと言って、この時間を食べることには割けないし、またかつてのように食べることはたぶんできないだろう。

それに、彼女の白い肌に、顔の見えない彼女の夫が今日は触れているかも…そんな思いが一度ならずも頭をかすめて、食欲がわかなかったのも事実だ。

彼女が私の、色のなかった世界に色をつけた。それまで1人が寂しいと思ったことは一度もなかった。色のない世界が当たり前だと思っていたのだ。しかし、一度色のある世界を見てしまった今は、それまでの自分の世界がなんと味気なく感じるのだろうと思った。

theme : 自作小説
genre : 小説・文学

切り取られた青空-いと-10

かりんとふたり夜の東京の街を歩く。私たちは周りの目にどう映っているのだろう。たぶん、この雑踏の中では誰もが他の人になんて興味はない-そんな安心感がここにはあるような気がした。

そして、こんな眠らないごみごみした街の中にも死角がある。私たちはいつしかそんな死角に滑り込んでいた。
(ここなら…)
心臓はもしかしたら彼女にも音が聞こえるのではないかというくらい鼓動を打っていたし、相変わらず私にはからきしの自信もなかった。それでも私はできるだけの虚勢を張って大きく息をして背後からかりんの肩を抱いた。
「僕は…うぬぼれているんじゃないよね…君も同じ気持ちでいてくれるんだよね。」
そして驚いて振り返った彼女の唇を奪った。

私たちはその日にお互いを知った。

今から考えると、私はやはりうぬぼれていたのだろう。
私たちに糸がつながっているのなら必ず手繰り寄せる。たとえそれがどんな色であったとしても、この手で赤く染め上げてみせる。彼女が受け入れてくれたことで有頂天になり、そのときはそんなことを思っていたのだから。

theme : 自作小説
genre : 小説・文学

あきらピョン??

途中まで加奈子サイドと亮平サイドは全く同じところをそれぞれの目線で見ております。ということは、次回は…ってシーンな訳で…。ここらでちょっとブレイクです。

私は一定量書いて印刷し、ノートにはってチープな書籍化してるんですが、その際翻訳システムをお借りしているので、折角だから勉強をしているハングルでも印刷しているんです。翻訳精度は高いので非常に勉強になってうれしいかぎりなのですが、1つだけ難をいうと、キャラ名が面白すぎること。

夫修司はちゃんとシュウジと出てきます。息子陸はリクチ(陸地でしょうたぶん)加奈子はカナジャ、子だけが読みが違っているのねってことで、ここまでは許せる。

すごいのが瞳(一応読みはまなこなんですが)瞳を意味するヌントンジャ。訳さんでええっちゅーねん。訳すというと、亮平のハンドルネームエイプリルは4ウォルつまり4月って…4は算用数字になってるし。

そして圧巻なのが亮平。なんとタイトルのアキラピョン!!一応翻訳ソフト亮の字をあきらとまで読めたのは偉かったんですが、平の字は向こう読みでピョンだって。爆笑して力抜けちゃいましたよ。

亮平サイドに突入し、自分のことなのであまり亮平と打ち込むことはなくなりましたが、亮平と打ち込むたびにかすめるあきらピョン、こみ上げる笑い-シリアスキャラなのに…困ったもんです。

theme : つぶやき
genre : 小説・文学

密会-切り取られた青空-いと-9

密会


私は前日のかりんとの個人メールに、オフ会がはねたあと、一人でとある喫茶店に来てほしいと入れてあった。私が東京での社会人生活のころよく通ったなじみの店。あの頃はストレスで既に私は90kg近くになっていた。

「おっ、何年ぶりかね~…それにしてもずいぶん痩せたよな。」
「お久しぶりです…10年以上にはなりますよ。」
マスターはおおよそ14年ぶりでしかもすっかりと風貌の変わった私をいとも簡単に思い出した。
「病気でもしたの?」
「そう…見えますか?」
またか、と私は思った。こちらは懸命に痩せたのに、久々に会うと判で押したように病気を尋ねられる。私はその辺が不満だった。
「いや、そうじゃないならいいんだけどね。私くらいの年になるとね、見た目が変わったから聞くとそういう話ばっかだから。君はまだ若いか…」
「もう、若くはないですよ。」
「私に比べたらまだまだ若いさ…」
多分60代後半か70代頭であろうマスターは、ずれた眼鏡の位置を直しながらそう言って笑った。

こんな面の割れたところで待ち合わせはするべきではなかったかと思ったが、東京でさっと思い出せる店はここしかなかった。少々複雑な気持ちのままかりんを待つ。
それに絶対に来てくれるという自信も私にはなかった。じりじりとした気持ちのまますごす時間は殊更長く感じられた。

そして-かりんは店に現れた。
「いらっしゃい…」
店に入ってきてまっすぐ私のところに来たかりんを見て、マスターはほぉというような顔して、にやりとほくそ笑んだ。
「無事、撒いてきた?」
「みんな忙しいみたいで、そんな心配なかったわ。」
「そう」
かりんは店内を見回して言った。
「でも…このお店…」
「ああ、東京の大学に行ってたし、その後4年くらい仕事もしてた。帰ってもう14年かな…だから記事にはしてなかったかもしれないけど。」
「知らなかった。」
「今日もね、ほんとは迷ってたりしてなかったんだよ。あの時僕は誰よりも先に君を見つけてた。」
私がそう言うと、彼女は驚いたような顔をして言った。
「じゃぁ、何で声をかけてくれなかったの?誰にも会えなくて不安だったのに。」
「あまりにも君が僕の思っていたとおりの人だったから、君が僕を同じように思ってくれるかどうか急に怖くなった。」
その言葉に、かりんは頬を染めてうつむいた。

「外、出よっか…」
マスターは聞かない振りをしてくれてはいるのだが、私はやはり恥ずかしくてかりんを外に連れ出した。会計をする際に、マスターがかりんに聞こえないように小声で、
「やっぱり、若いっていいね。頑張りなさい。」
と言った。傍目には普通の幸せなカップルに映ったのだろうか。



theme : 自作小説
genre : 小説・文学

オフ会-切り取られた青空-いと-8

オフ会


オフ会当日-

集合場所の東京駅八重洲口で…
私はかりんをすぐに見つけた。ウエーブのかかったショートヘアに、小花柄のワンピース。不安げに目を凝らして、約束のデブ写真を握りしめ人波を見つめる。都会の雑踏の中、周りはモノクロでそこだけがカラーのような…そんな印象を私は持った。

私はすぐに見つけていたにもかかわらず、どうにも彼女に声をかけることができなかった。彼女は私の想像したとおりの人だったけれど、彼女の目に私がどう映るのか全く自信が持てなかったのだ。合コンじゃないけれども、実際に見て好みじゃないと思われてしまうのではないかという不安で、私の心はいっぱいになってしまったからだ。

程なくして、茨城に住むエルちゃんがかりんを見つけて声をかけてくれたので、意を決して二人のそばに行こうとしたとき、大阪在住のTomさんが合流した。おかげで私はおのぼりさんの振りをすることで自分の不安を抑えた。実際は大学と併せて計8年間東京で生活していて、東京駅で迷うなどということはなかった。

目標を同じくする仲間の集まりは本当に盛り上がった。特に、間髪入れずにくるTomさんの関西人ならではの絶妙なツッコミにかりんはよく笑った。
よく見ると、笑う時に顔にかざす左手に指輪はなかった。確か結婚指輪が入るようになったという記事がでてたはず…(これは期待していいんだろうか)

そんなことを考えていると、千葉在住のうららさんが
「エイプリルさんとかりんちゃんって以前から知り合いな訳?」
と聞いてきた。何とか
「コメントのやり取りを一番長くしてるからかな、始めてあった気がしないんですよ」
と無難に答えることができたのだが、内心穏やかではなく、冷や汗がどっと流れた。
「なんかアブナイ雰囲気期待しちゃったんだけど…」
と茶目っ気たっぷりに切り替えしてきた彼女に向けた私の笑みは、たぶん引きつっていたんじゃないだろうか。


theme : 自作小説
genre : 小説・文学

ゴールを前に…-切り取られた青空-いと-7

ゴールを前に…


減体重ではかりんを抜いていたものの、後を追うように彼女も確実にゴールに近づいていた。

私は、目標体重に達したからと言ってブログををやめる気持ちはさらさらなかった。むしろその逆で、生まれ変わったとも言える体とうまく付き合っていくためにはブログは必要なアイテムだと思っていた。

しかし、女性はどうなのだろう。維持に移行してからもブログを続けている女性は少ないような気がした。なかなか維持すること自体難しいのかもしれないが、減量の終わった日常は平凡で、記事にする気持ちになれないと感じてしまうのかもしれない。

そんな風に、彼女もまた、卒業という形でこの場所を去ってしまうのだろうか。彼女を繋ぎ止めたい-その気持ちは目標体重が近づくにつれてますます高まっていった。


私は自ブログで目標達成旅行と称して、東京でオフ会を開きたいと書き込んだ。東京ならば、横浜の彼女は間違いなくきてくれるだろう、そう期待を込めて。

そうして参加を表明したのは私とかりんを入れて6人。彼女の参加はもちろん、それ以外にいつもコメントをくれる仲間たちが、大阪や茨城から参加してくれるのも私には嬉しかった。

私は軽くなった体でさらに筋トレを強化し…そして、オフ会予定の3日前になんとか無事目標である65kgの数字を見ることができた。

theme : 自作小説
genre : 小説・文学

切り取られた青空-いと-6

それが…かりんとの出会いであった。
今から考えると、ダイエットの方法はそれこそ人の数ほどあるけれども、ダイエットにかける意気込みとか信条は案外似たようなものなのかも知れない。しかし、減量体重は同じ50kgで初めてのコメント、しかも自分と本当に同じような考えを持つかりんからのそれは私の心を大きく揺さぶった。

そして、何回もコメントをやり取りする中で、彼女が私に対して気のあるそぶりをしているように思えることが時々あった。もちろん、彼女が家庭を持っていることは彼女のブログを見れば一目瞭然なのだが、彼女は夫のことはほとんど記事にすることがなかったので、私にはいまいち実感に欠けた。

それでもかなり長いこと、私たちはそれこそ普通にコメントをやり取りするだけのブロ友だった。

-30kgを境にぴたっと彼女の体重減少が止まったとき、彼女はダイエットはもとより、心理学や哲学の本まで読み漁っていた。その頃、私は昔手に入れて当時読み返した本のことを記事にした。彼女はその本を是非読みたいとコメントしてきた。既に絶版になっていたため、ネットの中古市場をあたってみたもののヒットしなかったと書かれてあった。

ならばと、わたしは彼女に本を貸すことを持ちかけて、メールアドレスを交換して送られてきたメールに書かれた住所に本を送った。

しばらくして…かりんから読み終えた本とお礼のマグカップが届いて、…それが自分の好みそのままなのに驚いた。そのことを正直にメールしたことがきっかけになり、コメント以外に直接彼女とのメールの送受信が始まった。

この頃になると、私はかりんが私に好意を持っていると確信していた。

彼女に逢いたい…私は狂おしいほどにそう思うようになっていった。





theme : 自作小説
genre : 小説・文学

ノクターンの衝撃

私はいつでも書くときにモチベアップのためのテーマ曲っていうのを決めることが多いです。

加奈子サイドは、EXILEの「Ti Amo」とレイトン教授のトリロジーCD(ゲームについてた非売品ですが)でした。

亮平サイドを書くときにコブクロの「赤い糸」がいいとCDショップへ買いに言った際、どうしても気になって平原綾香さんの「ノクターン」も一緒に購入しました。

店でノクターンを聞いてはいたんですが、英語ですし、仕事中に聞いても意味まで理解するところまで行きませんでしたが、なんとなく胸の痛くなるような曲だなとだけは思ってました。

で、家に帰ってじっくり聞いてみて衝撃を受けました。これ、香織です!!という訳で一気にBGMに昇格。

ちょっとネタバレって感も無きにしも非ずですが、是非修羅場のシーンには「ノクターン」をBGMにどうぞ、な~んてね。

あ、こんな文章、読んでくださるだけでホントは感謝ですよ。

theme : 物書きのひとりごと
genre : 小説・文学

出会い-切り取られた青空-いと-5

出会い


私はますますダイエットにはまっていった。心配していた飢餓感も、20日を過ぎた頃から急激に治まっていった。体が新しい食生活に慣れたのだ。

ダイエットを始めてから、私は毎日朝食を食べるようになった。それまで夜遅くに量の多い食事をするので、朝は食べられないことが多かった。回数を多くして1回量を減らすのがいいと聞いて5回とか6回の食事をこなす人もいるらしいが、さすがにそこまではマメにはなれない。それでも2食から3食にしたことで体調はさらに良くなったように思えた。

それを毎晩ブログに記載して、日々の所感を記事にする。3ヶ月位訪問者はなく、パソコンに関係なく1人で日記をつけているのと変わらない日々が続いていた。

体重の方は週に1kg位ずつ減り、86日目に3桁の大台を割り、そして…ついに初コメントが着た。

手応え-切り取られた青空-いと-4

手応え


初日の朝食で早くも危機感を感じた私は、自分が食べていた食事を考えてみることにした。

それでわかったことは、自分がわざわざ選んで高カロリーなものを食べているという事実だった。確かに量的にも多いのはもちろんだが、それ以上に少量でもカロリーがいくものに自分の目が行くということに気づいたのだった。

食を改善すると言っても、両親の近くに帰ってきたものの相変わらず1人暮らしの私には完全自炊する力量はなく、朝を軽くすることで夜の配分を上げる、揚げ物などのカロリーが突出するものを避けるように外食する、酒を控えるなどのことから始めるしかなかった。

食べてしまってからの計算では計算ミスとも言えないような数字が並ぶこともあったが、つとめて1500kcalに近づくように考えながら食べる日々…

そして、1ヶ月で6.2kg減らして107.8kgになった。私は115kgが107.8kgになったからって、傍目から見てそんなに変わるもんじゃないと思っていた。

しかしちょうどその頃、法事で実家に帰ったのだが、妹の沙苗に
「お兄ちゃん、ちょっと痩せた?」
と言われたのである。気がついたのは家族だからか?とも思ったが、この一言は小気味良い手ごたえとして私の耳に響いた。

それは、手探りのまま進んでいた私に、本格的にダイエットに取り組ませるには充分な言葉だった。

theme : 自作小説
genre : 小説・文学

通夜-切り取られた青空-いと-3

通夜


事件性がなかったためテラさんは意外と早くかえってきた。

私はテラさんが死んで初めて、彼がかつて結婚していたことを知った。高校生になる娘さんまでいるらしいが、26歳で私が入社した頃には彼は既に独りになっていた。

「俺には食いもんさえあればいいのさ。」
その言葉は私が考えていた以上に重いものだったのかもしれない。

仕事を終えて通夜に参列した。血を分けた娘さんのためにその場にいたのであろう、決して目立たぬように隅にひっそりとたたずんでいた彼のかつての奥さんが、私を見たときの目が忘れられない。

こっそりと俊樹に、彼女がテラさんの元奥さんであることを教えられて彼女を見た時、偶然彼女と目が合った。彼女は驚いたような顔をしてから、私に深々と頭を下げた。たぶん、私の中にテラさんと同じ毛色みたいなものを感じたのだろう。そして何とも悲しい目をして私を見た。

2人がどんな理由で道を違たのかは知る由もないが、その目が私には
『あなたは同じ道を歩まないで欲しい』と言ってるように思えてならなかった。

theme : 自作小説
genre : 小説・文学

お詫び(ご都合主義のつけ2)

困った!とっても困った…

何がって?方言ですww~

加奈子サイドで加奈子と亮平をそんなに近い距離にしたくはなかったのです。いっそのこと関西にしとけば良かったのですが、シリアスキャラなので、大阪人にはできなかった。

いっそのこと三重にとも思いましたが、桑名・四日市くらいなら良かったか…新幹線通ってないでしょ。…ってことで、新幹線の駅もある岐阜にしたんです。

でも、いまいち岐阜の訛りって知らないんです。加奈子サイドにわずかに出てくるあ~いう表現くらいしか知りません。

岐阜ネイティブさんごめんなさい。どう検索してよいのか見当付かないので、ご都合で標準語のままいかせていただきます。

theme : ヒトリゴト
genre : 小説・文学

検索-切り取られた青空-いと-2

検索


ダイエットを始めよう-そうは考えたもののどうすればいいのか。私にはその方法がまったく思い浮かばなかった。

答えに詰まるとパソコンを開く-半ば習性のようになってしまった行為にその答えがあるとはそのときには夢にも思っていなかったが。

ダイエットというその大雑把過ぎる検索項目で出てくる膨大な量の検索結果。その中でちらちらと覗いているブログの文字。今度はダイエットブログで検索してみる…やはり膨大な量の検索結果を表示する。

その中で目を引いたものは、ダイエットブログランキングというポータルサイトだった。開いてみた印象は、やはり女性が多いということ。しかし、男性も全くいないわけではないようだ。私はそんな男性先輩ダイエッターのブログを読み漁り、とりあえず1500kCalでのカロリーコントロールとブログを立ち上げを決めた。

(女もすなる日記といふものを男もしてみんとてするなり)まるで逆土佐日記だなと思った私は、自ブログに「逆土佐日記」というタイトルを冠した。
ハンドルネームは、私の本名が綿貫で、四月一日を古い言葉でわたぬき(綿入れの着物を脱ぐという意味らしい)と呼ぶことから、エイプリルとした。私は本当は2月生まれだ。

そんな風に始まったダイエットだが、翌朝早くも壁に突き当たることになる。
1500kcalを3等分した500kcal目安の食事のその量の少なさに愕然としたのである。
朝はまだしも、夜にこの量では…

これはかなり技術が必要だな…私はため息をつきながら朝食を口に入れた。


theme : 自作小説
genre : 小説・文学

序章-切り取られた青空-いと-1

序章


私はその日朝遅く、同僚の俊樹の電話に起こされた。(今日は休みだし、昨日も夜遅くまでパソコンを触っていたから、もっとゆっくり寝ていたかったのに…)着信に俊樹の名前を見たとき、正直そのまま放っておいてやろうかと思ったほどだ。あまり何度も鳴らすので仕方なく出た。
「こんな朝っぱらから何度も鳴らすなよ。」
私はもしもしとも言わず、いきなり不機嫌な声で俊樹にそう言った。
「寝起きの悪いお前に、何もなきゃかけないさ。驚くなよ…テラさんが死んだ。」
「冗談だろ?!3日前に一緒に飯食いに行った時にはぴんぴんしてたぞ。事故にでもあったってか。」
確かに寝起きの悪い頭では、にわかに理解できない話だった。
「いや、心筋梗塞だと。休出メンバーが事務所で倒れてるテラさん見つけて大騒ぎさ。その時にはもうう、亡くなってたらしいし…」

テラさんというのは寺内衛。私の先輩社員であり、44歳で独身の彼とは仕事の枠を超えて気の合うデカ盛りメイトでもあった。
『テラは寺内だけじゃなく、テラ盛りのテラだ。』
と、豪語していた彼。
「変死で警察に運ばれたらしいから、すぐに葬式になるかどうかはわかんないけど、連絡待てってさ。」
「わかった…」
「亮平、大丈夫か?お前テラさんと仲良かったし…」
俊樹は最後の言葉を濁したが、言いたいことは分かっていた。お前も同じような体型だし気をつけろ、そう言いたいのだ。

私の名前は綿貫亮平。39歳になったばかりの独身男。彼女いない暦は…もうカウントするのも面倒だ。

電話を切った後、私はのろのろと体重計に乗ってみた。115kgか…
このままでは同じ道を行くのも時間の問題かもしれないな。

これが私がダイエットに踏み切ったきっかけである。


theme : 自作小説
genre : 小説・文学

tag : *

ボタンを掛け違わなければ…

あの時はぐらかしてしまった答えについて…

本来ボタンを掛け違わない分には、性の問題は暗いものでも悲しいものでもない。浮ついたように映ってしまう危険性を冒してでも、加奈子と修司の関係回復は是非とも書かねばならないと思った。その対比として亮平がいる。それがあのときの本当の答えだと言えるのではないか…

愛されている実感を確めたい。こんな風にならなくても心でそう叫んでいるアラフォー世代の女性は多いのではないか。私があと10歳若くてクリスチャンでないなら、そう考えたのではないか…だから「これも私です」と言えたりする。そして、自信を持って「これは私ではない」とも言えたりする。

共感してくださる方が1人でもいてくだされば、書いたことに意味があったと思っているのだが…

theme : ヒトリゴト
genre : 小説・文学

ご都合主義のつけ

亮平サイド…

苦戦中です。どうしてかって言うと、加奈子サイドでけっこうご都合でごり押ししてしまった部分が多々あったので、亮平の性格がいまいち一定しないのです。人間だからいろんな面を持っていていい訳ですが、1人の人間性として考えるとう~んとうなってしまうと…


スピンオフって初めての経験なので、いかに最初の作品をきっちりと仕上げてなければいけないかを思い知らされました。

でも、一方では難しい分やり遂げたいんです。そして、亮平サイドのあとがきに双方を鑑みての暴露話を書きたいんです。(今からあとがきが書きたくってしょうがないってどーよ)

またコーヒーの量が増えそうです。

theme : ヒトリゴト
genre : 小説・文学

あとがき!!

あ~、やっと…やっと終わりました。長かったですぅ~。

46歳の私にしか書けない物ってなんだろう…そう考えているうちにデブだったからこそ湧いてくる感情みたいなものを書きたくて書き始めたんですが、思わぬ方向に(あの手の描写は本来大の苦手)走り始めてかなり焦りました。でも、デブの持ってるコンプレックスとか心の闇の部分を書くためにはそういうところを通らないと、書ききれないと思って…最後は開き直りです。

ただ…台詞を頭の中で音声化して繰り返し演じる形態で書き上げていくたすくの手法では、2人が一番近づくシーンでは、亮平が大好きな小西さんの声でずっと愛をささやいてくれたりする訳ですよ。これって心臓にホント良くありません。

それと、ラスト2話は許されたいと思う気持ちが生んだ蛇足。本来、そういう形で丸く収まったとしても、絶対に加奈子は知ることはできないはずですから。

男心は理解できないので思案中ですが、亮平サイドのスピンオフがしたいなぁ~なんて思ってます。
(香織サイドにすれば何とかなるかも…)頭をよぎるのはよりハードなストーリーだったりします。

最後に、こんなつたない文章を読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。
この物語を書くきっかけになったなごやんさん・でぶぱんださんの元カレシスターズと、最後までお付き合いくださったあなたにこのお話を捧げます。

theme : ヒトリゴト
genre : 小説・文学

終章-切り取られた青空32

終章


「旦那様に忙しい思いさせちゃいますね。」
「いいのよ。2人でやるほどのものじゃないし、私は家のことをやってることも多いわ。」
「かりんさんのこと、実はずっと気になってたんです。急にブログからきえちゃったから。あの時、このバカがこともあろうにかりんさんにコクったって言うから、逃げ出したんじゃないかと思って…そういうの旦那様の前では聞けないでしょ。」
「たあけっ!。」
亮平が思わず訛って怒鳴った。エルちゃんは亮平に向かって、
「亮ちゃん、この際だからちゃんとあやまっとけば?」
と言った。
「香織、いーかげんにしろよ!大体…もういい!!」
亮平はそう言うと、私からもエルちゃんからも顔を背けた。
「でもね、それだから私たち一緒になれたんですよ。一言お礼も言いたかったんです。」
「お礼だなんて…私は何も力にはなってないわ。」
そのとき確かに解った。彼女は私たちの関係をすべて知った上で、それでも尚亮平を選んだんだと。
そう言えば晃平くんって…

「かりんさんも戻ってきませんか?私、あのままのアドレスで子育てブログ書いてるんです。」
「自分で主催するのはムリかな。でも、あのままなら見てコメ入れさせてもらうわ。」

私のしたことは許されることではないだろうけれど-本当に終った。いや、終っていたんだと思った。

そして夜遅く、私はエルちゃんのページを開いた。思った通り、エルちゃんはしっかりと亮平を支えていた。私にはそれが少し悔しく、そして嬉しかった。

私は、切り取られた青空をリアルな青空に仕上げた彼らの、これからの幸せを祈った。

                                         ~The End~

theme : 自作小説
genre : 小説・文学

邂逅-切り取られた青空31

邂逅

私たちは修司の故郷に居を移した。
料理は得意だとは言え、素人だった修司がちゃんと一本立ちするにはそれなりに日数がかかる。私はパートに出て働き始めた。少しでも生活の足しになればというだけだったのだが、余計なことを考える暇がなくなって日々に追われる中、私は次第に仕事に癒されていった。結局、店が軌道に乗り始めるころには逆に辞めるのが辛くなるほどだった。

そして、引越しするのを嫌がっていた陸も、いざ引っ越してみると新しい友達もでき、新しいFCでレギュラー入りも果たせたため、今やすっかり方言まで使いこなすすっかり土地っ子という風にに生まれ変わってしまった。
瞳はと言うと、今度は板倉の両親になついて…要領が良いのは誰に似たのだろうと空恐ろしいくらいだ。

決して派手でも裕福でもないけれど、平穏な時間が流れていく。

そして気がつけば、あの日から3年半の月日が経っていた。

春の昼下がり、お昼のピークを過ぎたころだった。

「すいません、まだ大丈夫ですか。」
「いらっしゃいませ、まだまだ大丈夫…」
私がそう言って振り返ると-そこにはなんと亮平が立っていた。確かに距離では近づいてはいるものの、まさかそんな会うとは微塵も思ってもいなかったので驚いた。向こうもかなり困惑している様子で、固まったまま立ち尽くしている。
「ねぇ、遅かった?こら、晃ちゃん!」
そして奥さんらしき人物が入って来た。3歳くらいの男の子が亮平にまとわりつく。
「パパ、おなかちゅいた~。」
亮平は笑顔でその子を抱き上げた。パパ…亮平、もうそんな子どももいるんだ。
それから私は亮平の奥さんをみてまた驚いた。エルちゃんだった。
「エ、エルちゃん?!」
「えっ?え~っ?!かりんさん??」
エルちゃんはひどく驚いた様子で、私と亮平を交互に見た。
「かりんさんって横浜じゃなかったですか?」
「あの頃は。あの時、旦那が脱サラして店始めたいって言い出して…あの人、ここの出身なの。同じやるなら知り合いが多い方がいいしね。私がブログから急に抜けたのはそのせい。立ってないでどうぞ。」
私は座席を勧めながらエルちゃんに説明した。
「ありがとうございます…へぇ~、そうですか。」
「エルちゃんたちこそ、り…エイプリルさんと結婚したんだったら岐阜じゃなかったっけ?」
「昨日から名古屋に遊びに来てるんです。前島さんに名古屋に行くって言ったら、この店の話されて、あんまり美味しそうなんで、場所聞いちゃいました。」
前島さん…修司の親友で、今でも何かと連絡を取り合ってる人だ。
「何か嬉しいな、そう言うの。じゃぁ、自慢の味をご賞味いただきますか。で、何になさいます?」
私は亮平に背を向けて、エルちゃんにばかり話しかけた。

「いらっしゃいませ、加奈子、友達か?」
そこに修司が店に出てきてそう言った。友達の一言にちくんと胸が痛む。
「そ…ダイエットの時のブロ友。」
「ああ、その節は…家内が大変お世話になりました。」
「あ…いや、こちらこそ…」
亮平が返事に困っていた。修司は型どおりの挨拶をしただけなのだけれど。
「かりんさんとブログで知り合ってなかったら、私たち結婚してなかったですもん。こちらこそお世話になりました。」
エルちゃんは私のほうに最初にコメして来たんだっけ…よく覚えていない。

「ねえねえ、少し話できませんか、こんな偶然ないですし。」
彼らが食べ終わった後、エルちゃんにそう言われて答えそびれている私に、
「夕の分までに帰ってくればいいよ。、喫茶店にでも行って来いよ。積もる話もあるんだろ。夕の仕込みは俺がやっとくから。」
と、修司が言ってくれた。そう言われるともう行かざるを得なかった。
「うん…」
「じゃぁ、女同士で話してくる?僕は晃平連れて別のとこにでも行こうかな。」
「ダメ、亮ちゃんもブログ張ってたんだし、一緒じゃなきゃ。」
エルちゃんはいたずらっぽく笑ってそう言った。
「ね~、晃ちゃんもママと一緒がいいよね~。」
「うん。」
エルちゃんがそう言うと晃平くんがかわいい声でそう答える。
私には、見ないようにしている亮平の当惑した表情が見えるような気がした。



theme : 自作小説
genre : 小説・文学

Hold on me-切り取られた青空30

Hold on me

もう一度声を聞いたらやっぱりどんなことをしてでも亮平のところへ行ってしまいたくなる。そんな思いで私は携帯を水の中に投げ込んでしまった。そんなもので、データのようにすべて消えてしまいはしないけれど。
糸があればたとえ細くても繋いでしまいたくなる…だからそれを切ってしまったことですっきりした部分があったことは否定できない。

翌朝、私は起きてきた修司に思わず「ただいま」と言ってしまっていた。
「何だ?おはようだろ。ちゃんと寝たのか?目赤いぞ。」
「あ…、おはようだわね。変なこと言っちゃったわ。なんか眠れなくて…」
「ごめん、俺のせいだな。」
「ううん、あなたは悪くないわ。悪いのは私。これから忙しくなるから、しゃきっとしなきゃいけないのにね。」
本当に謝らないといけないのは私の方。本当は何もかも話してあなたの許しを請いたいけれど…私は心の中でで手を合わせた。

「俺、今日帰りに小橋に寄るわ。」
それから、朝食を食べながら修司が言った。
「時間合わせて私も行こうか?」
「そうしてくれる?」
私が行くと答えると、修司は嬉しそうに笑った。なんだか少年のようだった。
「何だか…」
「何?」
「結婚の承諾をもらいに行った時みたいだな。」
「そうね、でも10年前よりもっと大変だと思うわ。あの時は私だけかっさらって来たら良かったし、家も近くに借りたしね。今度はこども達込み、しかもあなたの実家の方…」
「そうなんだよなぁ、だから言いにくくてさぁ…俺が言い出したことなんだけどさぁ…」
意地悪っぽく言った私に、修司は本当に困ったというような表情で答えた。今朝の修司ってまるでこどもみたいだと私は思った。しかし、そんな修司の態度が今の私には心地よかった。


もしかしたら亮平が訪ねてくるかも…そんな心配もしたけれど、そんなことはなくて、私の時間は急速に回り始めた。無事(しぶしぶだけど)親の承諾ももらって、仕事の方もけりが付き、新しい世界に飛び込む目途も立った。私たちの新しい城の店舗兼住宅も、修司の故郷日進市に見つかって、私たちは「親孝行」と称して子ども達を私の実家に預けて2人だけで荷造りを始めた。

「なんかあの子達が居ないと静かね。」
「昔に戻ったみたいだな。加奈子の体型も元通りだし。」
修司は私を上から下まで眺めてそう言った。
「あら、結婚したときより痩せたんだけど、私。」
「気付かなかった。」
「意地悪ね。」
ニヤニヤ笑いながら言う修司に、私は少し口を尖らせて返した。そして、私たちは見つめあい長く唇を重ねた。
「いい?子ども達もいないことだし。」
唇を離した修司はそう言って私の体をまさぐる。
「うーん、あなたムードないからやだな。」
「へいへい、ムードですか。お姫様の言われるとおり善処致しますから。」
あからさまに拒絶しない私に修司は手を休めずそう言った。
私は亮平の影が残ってやしないかと不安だった。でも、私は修司と共に生きると決めたのだ。一生拒み続けることなんてできない。
「それが第一ムードないじゃん。」
と笑いながら、私は修司に腕を絡めた。そしてもう一度口づけを交わして…

私は私の体が修司を待っているのを感じて驚いた。特に瞳が生まれてからは、修司1人が盛り上がって私が置き去りにされている、そんな感じだったから。それが嫌で、最近は何かと理由をつけて逃げることが多かった。
修司もいつもよりは独りよがりではなかったように思うけれど、明らかに私の方が違っていた。

「お前、何かあった?」
でも、終わった後、修司にそういわれて私は凍りついた。
「…どうしてそう思うの…」
私は震えながら修司に尋ねた。
「ノッてたクセに、それが不思議だって顔してたからさ。」
気づかれた!どうしようと青くなった。
「デブってたから感度悪くなってたってことじゃねぇのか、それって。デブってそれだけでどっか病気なのかもしれないぞ。加奈子、痩せて良かったな。」
修司はそういって笑った。

亮平のことは気づかれなかったのは良かったけれど、彼との一体感がただ感覚が戻っただけだったとしたら、それはそれで悲しいと思った。





theme : 自作小説
genre : 小説・文学

The End-切り取られた青空29

The End


メールを送った後すぐ、亮平から携帯に直接着信があった。
「もしもし、かりんちゃん?」
亮平の低い声が響く。
「どういうことか説明してくれるかな僕はあんなメールでは納得できない。」
「ちょっと待って、車に行くわ」
「家族にはそうやって隠し通そうとするわけか…まぁ、いいけどね。」
言葉がつめたい刃のように私に突き刺さった。私は亮平には返事せず、そっと家を抜けだしてマンション1階の駐車場へ…自分の車の後部座席に座った。

「結局、旦那にかまってもらえなかった分の遊びだった訳?旦那が戻ってきたら何事もなかったようにしれっと元の鞘に納まればそれで良いって。」
「それは違うわ!」
「一体、どう違うの…同じことだよ。」
気持ちの中では違っていても、一方的に別れを告げようとする事実に変わりはないのだと解ってはいるけれど。でも、遊びだとは思われたくはなかった。
「私の都合でこどもたちからパパを取り上げることはできなかったの。亮平さんが言ってくれたことはとても嬉しかったけど、あの子達にとってパパはあの人だから…」
「そんなの最初から解っていたはずだろ!後悔はないっていってただろ!!」
「ごめん、恨んでくれてもいい…でも、もう決めたの。子供たちをとろうって。」
「勝手すぎる!」
「だから、本当にごめんなさい…それしか言えない。」

私はそれだけ言うと電話を切って、また家に走りこんだ。また亮平からの着信が鳴る。私は反射的に携帯をシンクの水を湛えた水桶の中に放り込んだ。

ぽちゃんと軽い音がして-その時、私の季節はずれの恋が終わった。

theme : 自作小説
genre : 小説・文学

プロフィール

こうやまたすく

Author:こうやまたすく
FC2ブログへようこそ!

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

FC2カウンター

カテゴリ

Web page translation

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

QRコード

QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。