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序章-切り取られた青空1

序章


20××年○月××日


…今日の体重は60.2kg 体脂肪率31.4%…

やっと50kg台が目前に見えてきました。でも、これがなかなかなんだよな~10の桁の壁ってどーしてこんなに厚いんだろうねぇ(泣)


私はそう書き終えると送信ボタンをクリックした。あ~、今日も更新完了っと!!

私の名前は板倉加奈子、36歳。夫と2人の子供(陸:9歳、瞳-まなこ7歳)との4人暮らし。

元々細いほうじゃなかった。成人式のときも80kgくらいあったと思う。だからみんながこぞって振袖を着る中、レンタルできないからと、洋服で出席したから。それが何だか悔しくて、一念発起してダイエット。極限までカロリーを抑えてガンガン運動をして…おかげで半年後には160cmの私は50kgという自分で納得できる体重を一瞬手に入れた。

でも、それは一瞬でこぼれ落ちてしまった。

ダイエットが終わったという開放感、禁欲の日々の反動-いろんなイベントを自分に作って食べられなかった隙間を埋めた。

で、ここがリバウンドのいやらしいところなんだけど、すぐには増えないし一気にも増えない。じわじわ増えて気がついたらあれっ3kg増量みたいな…

夫修司と出会ったとき、私は58kgだった。そして結婚式当日は64.5kg。結婚式を前にして、ブライダルエステに通う中、減らなくても維持だけでもしたいのに、私の体重は減ってはくれなかった。

当時はそれこそ水を飲んでも太ると思っていたっけ…

結婚後、私は2人の子供を産むたびにさらに太り続けた。

そして…1年3ヵ月前のある日、ついに見てはならないものを見てしまったのだ。

それは、3桁の数字を表示した体重計。もちろん私の…

約10年の間に、2倍に膨れ上がってしまった自分の体をもはや直視することすらできない自分がいた。
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出会い-切り取られた青空2

出会い 


そんなある日、私は朝の情報番組で「カリスマブロガーのレシピ」という特集を見た。

へぇ~、美味しそう…そう思って私は早速紹介されていたページにアクセスした…っていうとパソコンに強くてさくさくと検索できたように見えるけれど、実際は全くのパソコン初心者。紹介されたアドレス3つのうちの1つは入力ミスでつながらなかった。

それでも、最初の方のリンク先に飛ぶことを覚えて-友達からそのまた友達へ-普通の料理レシピからダイエット料理レシピへ。そして、私は私の運命を変えたブログ「バリバリ・ポッチャーのダイエット?レシピ」に出会うこととなった。

管理人のポッチャーさんは当時32歳。ダイエット開始時130kg!私が初訪問した頃でも105kgあった。
(女性でもそこまで太れる人がいるのねぇ)私は自分をすっかり棚上げしてそう思った。自分だってありえないほど太っているというのに。

それまでは見ていてもコメントを残そうなんて思ったことはなかったけど、ポッチャーさんと話がしたくて、初めて私はコメントを入れてみた。「私も3桁なんです、ダイエットしたいんですよ。」みたいなことを書いたような気がするけど、今となってはよく覚えてない。そこで「一緒にがんばろうよ」みたいなコメ返しをもらって嬉しくなった私は、度々コメントを入れていろんな話をした。
そして、彼女を媒介にして、私のパソコンのお気に入り欄には数多くのダイエットブログが1つ1つと並んでいくこととなった。

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始まり-切り取られた青空3

始まり


いろんなダイエッターさんのブログにお邪魔してコメントを残すうちに、私はもう一度ダイエットをしてみたいと思うようになった。

でもこれは、本当は正しくないのかも。ダイエットはずっとやろうと思っていたけど、食べてないと思っていても減らないし、ちょっと何かあるとすぐに体重に跳ね返るので、正直あきらめモードになっていたと言うのが正解。

ブログを見るようになって、置き換えドリンクの存在を知った私は、これならいけるかもと、ドラッグストアに行けば少量で売っているのに、ネットで箱買いした。どんなのが来るかわかんないから1箱しか頼まなかったと思うんだけど、何故か送料無料の2箱セットがやってきてしまった。計60食。毎日1食ずつ消費しても2か月分…
(こんなのどこに隠したらいいのよ)

狭い我が家に隠すところなんてなく、程なく修司に見つかって笑われた。
「加奈子、お前がそんなもんで足りるわきゃね~じゃん。ムダ、ムダ。」

だけど、その言葉が私の心に逆に火をつけた。(カンナちゃんもぷうちゃんもこれで20kgぐらい痩せてるのよ!よ~しやってやろうじゃないの!!)

「私ダイエットするから、ブログやっても良い?」
「ま、な、コレ無駄すんのもなんだから、やれば?」
明らかに続かないだろって顔をして見ている修司。無性に腹立たしかった。

とは言え、ブログを立ち上げる知識なんてとんとなかった私は、一応本屋に行って「ブログの作り方」なんて本まで買って、見よう見まねだけどブログデビューを果たした。ハンドルネームはかりん。好きな果物であると同時に、洋梨と姿が似てる。要するにそういう体型だから。

デビューは果たしたものの、最初は恥ずかしいし、アドレスをコメントに貼り付けることも知らなかったので、ブロ友にも自分がデビューしたことが言えなかった。

それでも、分からないなりに慣れていって、少しずつ来てもらえるようになっていった。






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決別-切り取られた青空4

決別


間違って2箱頼んだのは良かったのかもしれない。せめてこれだけは使い切らなくてはという義務感だったけど、それまでの食を見直すには2ヶ月という期間は妥当だったかもしれない。

私は同時にその日の体重と食べたものをブログに載せた。これは他のダイエッターさんたちがやっているので真似ただけなのだが、載せてみてびっくりした。

(私って、すごくいっぱい食べてるんだ!!)これが正直な感想だった。1日外で働いてきた修司と全く同じものを動いていない専業主婦の私が食べたらそれだけで多いって事を気づいてなかった自分。

それだけじゃなくって、修司が夜遅く食べた日は朝が食べられないとか言うのも理解できなかった私。
平気で「甘いものは別腹」とか言いながら夜遅くにお菓子を食べて、朝ごはんもきっちり…

これじゃ、太るはずよね!そう思った私は夜のお菓子を一切止めてみた。陸と瞳のためとか言いながらお菓子を買うんだけれど、ほとんど私の口に入っていたと思う。

最初は夜お茶だけで過ごすのはとっても辛かった。でも、ガマンだと思ったのは2週間くらい。それぐらいで食べないことに慣れてしまったし、ちょうど2週間くらいで3kg減って…私は2桁に戻れた。2桁の数字をたった2週間で見られたことが、自信につながったような気がする。体重計に乗るのが楽しくなり、1日に8回くらい乗ったかもしれない。ちょっとでも減ったことを確認したくて、トイレの度に体重を量ってしまうようなところがあった。

でも、この楽しい日々に水を差すようなことがあった。ポッチャーさんが突然更新をやめてしまったのだ。毎日毎日覗いても私の中の彼女の時間は止まったまま。

風のうわさによれば、ポッチャーさんにコメントをした誰かが、そのことに対する返事で傷つけられたと、すごい剣幕で抗議のコメントを入れられてしまってブログで語ることに恐怖感を感じるようになったらしい。

時々、ふとお気に入りに入れたままの彼女のブログにアクセスしてみるけれど、時間は今も止まったままになっている。



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学習-切り取られた青空5

学習        


最初の師を失った寂しさで、私は一気にいろんなところにアクセスした。勉強しているつもりはなかったけれど、自然とダイエットに関するいろんな知識が入ってきた。

まず、今まで当たり前だと思っていた食習慣が狂っていたことを思い知らされた。

「ダイエットにはね、食べ過ぎちゃいけないけど、食べないのはもっといけないのよ。」

リアル世界で聞いたらおそらく素直になんか反応できない言葉も、ネットでなら素直に聞くことができた。

彼女らの多くはランキングに参加している。最初正直言ってブログに優劣をつけるって感覚は嫌だと思っていた。でも、そうやってより見える形でブログを晒すことで、同じ気持ちの人と分かち合うことができる。そう思った私はランキングに登録した。

なんとなくいっぱしのダイエッターになった気分を味わってた。元が元だけに減るのが早くて半年で18kgと言う数字にも酔い始めていたのかもしれない。

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逆転-切り取られた青空6

逆転


ブロ友たちは私の小さなデータの変化にもいちいち反応してくれたけれど、修司は20kg痩せたって何にも言ってはくれなかった。次々に変わっていく服のサイズに、安いものだけどどんどんと買い換えていってることにも気づいてないのかもしれない。まったくウチの男どもときたら、妻や母には興味ないって感じ。瞳だけは「ママ、小さくなったね」って言ってくれたけど。

(そうよ、同じ男でもエイプリルさんの方がずっと私のことよくわかってる)

エイプリルさんはダイブロ仲間。そのとき39歳で修司と同い年。早生まれらしいから、学年は1つ上のはずだけど。175cm開始時が115kg。痩せようとする体重(約50kg)も一緒だし、彼の書く記事を読みながら本当に考え方が似ていると常々思っていた。

一応リアル世界の用事はこなしていたけれど、専業主婦の私には結構作れば時間があって、そんなときはネットの海をさまようことが多くなっていった。

夢と現実とのバランスが逆転していたのだ…たぶん。それに気づかないほど、気づかないふりをしたくなるほどリアル世界は乾いていた。


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秘密-切り取られた青空7

秘密


修司の帰りは日に日に遅くなっていき、休みの日も今までならうちにいたのに、出かけることが多くなった。聞いても「仕事」としか答えないし、ご飯もそこそこに寝てしまう。ちょっと前なら、折角作ったのに…とぷりぷり怒りながら修司の残したおかずを夜中につまんでいた私。それをしない今は、ぽつりとテーブルに夕食だけが残される。

それだけではなかった。今までメールなんかにパスかけてなかったのに最近ではかかっていること。

想像したくはないけれど…「浮気」の二文字が頭を離れない。

気持ちの落ち込みとリンクするように、私の体重減少は止まった。俗に言う停滞期、そう思えばいいのだけれど、妙に焦っていた気がする。改めていろんな本を読み漁っていた。

そんなとき、エイプリルさんが私の読みたかった本のことを記事にしていた。もう絶版になっている本だったが、以前手に入れて本棚にあったのを読み返したらしい。

-その本読みたかったけど、絶版になってますよね-

-中古ででもあればいいんですけど、どうしてもなければ貸しても良いですよ。-

古い本だったので、やはりなくて…わたしは非表示でメアドを教えてもらい、メールで住所を知らせた。

数日後、綿貫亮平(エイプリル)と書かれた小包が届いた。

送り状の最後にはこう書いてあった。
僕がなぜ4月生まれでもないのにエイプリルなのかと言うと、四月一日とかいてわたぬきと読むことからなんです。

わたぬきだからエイプリル…他のブロガーさんが知らないことを私だけが知っている。それだけで何かドキドキしている私がいた。

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距離-切り取られた青空8

距離


本を読み終えた私は彼にお礼にマグカップと感想の言葉を添えて送り返した。しかし、わたしはそれを自分のブログで記事にはしなかった。

-お礼なんて良かったのに。でも、とっても気に入りました。毎日これでコーヒーを飲むのが楽しみです。-

-気に入ってもらえたなら良かったです。でも、彼女とかに見つかったら叱られるかな-
-彼女なんていませんよ。時々お袋が尋ねてくるくらいで、女気なんて全然ありませんから。-

それから、私たちは通常の記事のコメントとは別に、まるでチャットのように短いメールのやり取りを楽しむようになっていた。内容は他愛もない日常のことだけれど、語るたびに私たちが本当に同じような感性を持っていることに驚かされた。

そして、しだいにその距離は縮まっていった。私は横浜、彼は岐阜…地図上の距離は埋まらないけれど、たった一本の線が2人の遠く離れた距離を一瞬にして引き寄せる。

そして…相変わらず修司の帰りは遅かった。そして帰ってくるとすぐに眠ってしまう修司の横顔を見ながらすぐ隣にいるのに、とんでもなく遠いところにいるように感じてしまう。

私は修司に背を向けて眠ることが多くなった。

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ア・イ・タ・イ-切り取られた青空9

ア・イ・タ・イ…


彼-亮平とのメールのやり取りで高揚したのだろうか。そうじゃなくても停滞期はいつか終わるものだし…きれいに痩せたい-私は3桁の頃には考えたこともなかったウォーキングを始めた。

そして開始から1年5ヶ月、私は最後の難関の60kgを切った。亮平も順調に減らして後数kgで目標の65kgにたどり着こうとしていた。

目標に達しても、直ちにダイエットを止める気はさらさらなかった。むしろ、多少食べる量は増えるだろうけれども、この生活を一生続けてもいい、そう思っていた。ずっと亮平とつながっていたい、そう思っていた。

-逢いたいー

最初どちらからそのセリフを切り出したんだったろうか。どんな顔をしているのか、どんな声をしているのか…毎日のやり取りの中、その思いは日に日に強くなっていく。

-君に逢いたい-
亮平からのメールの締めくくりにはいつもその一言が添えられるようになっていた。


そんなある日、亮平は自分のブログで目標達成したら記念に東京に旅行しようと思っていること、そのときに東京でオフ会をしたいと思っていることを記事にした。

あっという間に6人が参加を表明して、達成してもしなくても1ヵ月後にオフ会をする段取りが決まった。

当日は陸と瞳を私の実家に預けて…そうだ服を買いに行かなきゃ!

オフ会の日を指折り数える日々が始まった。


theme : 自作小説
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たすくの頭の中1(理解できなくても気にしないでね)

ぐわぁ~ww。恥ずかしすぎるこの展開!!てな訳で、ちょっとブレイクタイムです。

私は書くときに性格設定をしたら、シチュエーションを揃えてその中で本人たちにしゃべらせるんですよ。

アニメのアテレコみたいな感じで、たすくの頭の中には豪華声優陣が控えています。

ちなみにこの「切り取られた青空」では、

板倉加奈子   川澄綾子さん(のだめカンタービレ:野田恵)
板倉修司    森久保祥太郎さん(ナルト:奈良シカマル)
板倉 陸    川上とも子さん(ヒカルの碁:進藤ヒカル)
板倉 瞳    折笠富美子さん(あたしんち:立花みかん)
綿貫亮平    小西克幸さん (スキップビート:敦賀蓮)

の方々の声で製作しております。どなたかでもわかられる方がおられましたら、頭の中で思い浮かべてもらうと良いかもしれません。

それから、エイプリル=四月一日=綿貫の図式は、「XXXHOLIC」からですし、探せば自分でも気づかないところにアニメネタが隠れているかも知れません。

理解してくださいとは申しません。理解してもらえるほうが怖いかもとも思っておりますが、こういう裏話もたまには良いんではないかと思って書いてみました。

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集合-切り取られた青空10

集合


「ママ~お土産わすれないでね。」

私の両親になついている瞳は一緒に行きたいとか言って困らせるかと思っていたが、あっけないほどすんなりと送り出してくれた。どうもあの子の好きなゲームを父が買ってやると約束したらしい。その笑顔を見ると尚更後ろめたい気分で私は実家を出た。

後ろめたいまま歩くごとに弾んでいく心。複雑な気持ちのまま、私は東京駅を目指した。

亮平は岐阜だし、大阪に茨城、千葉など…ほとんどが他県から来るのなら、「ベタに東京駅でもいいんじゃない?!」みたいなことになり、正午に八重洲口に集合になったのだ。参加条件はMAXの写真を持参すること。

だからと言って、デブの頃の写真を振り回して同じような人を探すなんてできないし。とにかく写真を手に握り締めたまま人の波に目を凝らしていた。

しばらくして背後から肩を叩かれた。
「かりんさんですか?」
びっくりして振り向くとセミロングのぽっちゃりとした若い女性が笑っていた。
「ええ、そうですけど」
「良かった~!!私エルですwwこんな人の多いところでみんな見つかるのか、だんだん心配になってきてたとこでした。とにかく1人ゲットだわ。」
エルちゃんは小さくガッツポーズをしてみせた。

エルちゃんは茨城に住む28歳の独身の女の子。今日の参加者の中では最年少だ。MAXは96kg。ダイエット期間が一番短いので、まだ当時72kgぐらいあったが、身長も165cmあるせいか、思ったほど圧迫感はないような気がした。

それから程なくして大阪からきたTomさんが合流した。Tomさんも3桁経験者で、33歳。長女のエリーちゃん(これは本名なのかハンドルネームなのか判らないけれど)が生まれたとき、こんなかわいい子を残して早死にできないとダイエットを決意したって言う子煩悩パパ。今は1歳になったエリーちゃんをダンベル代わりにエクササイズしてるらしい。
「もっと簡単に見つかるかと思たけど、みんな頑張ってるから時間かかるなぁ~。なんや、肝心のエイプリルさんが見つかってないん?なんなら、<歓迎!元デブご一行様>みたいなノボリでも作って振ったらよかったかな。」
さすが関西人、考えることがお笑い。
「そんなことしたら恥ずかしくて死んじゃいますよ。このデブ写真握って立ってるのでもいっぱいいっぱいなのに…」
エルちゃんがそれを真に受けて怒っていた。

「すいません、遅くなりました。あまり来ないと迷ったみたいです。はじめまして、エイプリルです。」
振り返って、一瞬時間が止まった。この人がエイプリル…亮平。決してイケメンではないけれど、彼はまっすぐに…私を見ていた。体が急激に熱くなるのがわかる。

「さすがやなぁ。たしか、3日前に目標達成したんでしたよね。ホンマ普通やから、1対1やったら見つけられへんかったんちゃうかな。」
「なんとか間に合いましたよ。これで心置きなく祝杯が挙げられますから。」

「はじめまして…かりんです」
「はじめましてエルです」
「男1人やから僕はわかりますよね。Tomです。あとは渚さんでしたよね。一番近い人が一番遅いってホントですね。」

そして5分後東京在住の渚さんが合流して私たちは予約しお店に場所を移した。





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引力-切り取られた青空11

引力


私たちは最後の参加者である千葉在住のうららさんが指定した店に移動した。うららさんはフリーのライターをしていて、おいしいお店を本当に良く知っていた。
「ちっとも良いことなんてないわよ。それだけデブになる危険があるってことだから。」
忙しい彼女はみんなが少し食べ始めた頃やってきて、この店の料理を口をそろえて大絶賛する中、そう言って笑った。

私たちは約束だったデブ写真を公開しあった。

「こうして見るとなんかみんな似てるよね~。」
最年長45歳の渚さんがため息をつく。顔に肉が付いて凹凸がなくなってしまうのか、みんな似た顔になっていると私も思った。

「それにしてもさ…エイプリルさんとかりんちゃんって以前から知り合い?」
「ぜ、全然…。初対面ですよ。」
うららさんから出た一言に私はうろたえた。かろうじて返事を紡ぎ出す。何をあわててるんだろ。初対面は初対面なんだわ。ホントにイメージ通りの人で初めて会った気が全くしなかったとしても。
「一番長いことコメントのやり取りをしてるからかな。なんだか初めて会った気が僕もしないんですよ」
さらっと亮平がフォローしてくれたので、私はすこし落ち着きを取り戻した。
「私も。他の人もそうじゃないですか。」
「確かにね。顔だけは知らなかったけど、お互いいろんな話して性格なんかはよくわかってる…おかしな関係だよね。」
うららさんはくすくす笑いながら
「でもなんかちょっと2人にアブナイ雰囲気期待しちゃったりしたんだけど…」

見抜かれているのか、それともただからかわれているだけなのか。私はうららさんのその茶目っ気たっぷりの笑顔が怖かった。

でも、それが解っていても止められないほど私は亮平に惹かれている自分を感じていた。



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思考停止-切り取られた青空12

思考停止


楽しいときはすぐに過ぎていく。オフ会はあっという間にお開きの時間となった。

「これから1本取材なの。」
忙しいうららさんは来たとき同様風のように去っていった。また渚さんは男の子3人のママで、
「腹すかして待ってるのがいるから帰るね。なんか買ってかないとうるさいから、買い物しないと。」と言いながらデパートの方に歩き出した。
「みんな大変ですね。かりんさんはどうするんですか?」
「私は実家に子供預けてきたから…少し買い物して帰ろうかと思って。」
「私も一緒に行きたいなぁ…でも、今日も休んで参加したから、明日は絶対休めないし。それに、服とかも見たいけど、まだ選り取りでサイズ選べる状態でもないですしね。今日は帰ります。」
そういって元来た道をエルちゃんも手を振りながら去って行った。

彼女が一緒に…と言ったとき、私は内心心は穏やかではなかった。

そう、私たちはみんなと別れてから別におち合う約束をしていたからだ。

亮平が指定した店は雑居ビルの中にある小さな喫茶店。
「無事、撒いてきた?」
「みんな結構忙しいみたいだから、全然大丈夫だったわ。…でも、このお店…」
「大学はこっちだし、しばらく東京で仕事してたんだ。」
「へぇ…そうなの?」
岐阜に帰ってもう14年くらい経つからね。記事にはしてなかったかもしれないけど。」

「うららさんに言われて、ちょっとどきっとしちゃった。ホントに初めて会ったのにね。」
「でも…僕はすぐに君がわかったよ。」
「えっ…?!」
「実は、みんなと合流する前から、君を見つけてた。」
「なんで、声掛けてくれなかったの?」
「なんでって…どう切り出したらいいのかわからなくて。あまりにも君が僕の思ってた通りの人だったから。」
その一言にまた体が熱くなった。私は何も言えなくなってしまった。

「外、出よっか…。」
亮平の一言に、私はこくりと頷いた。

都会の雑踏の中では誰も私たちのことなんて見ていない。それに、デブの頃より目立たないという気持ちが私を大胆にさせていた。賑やかな大通りから人気のない路地へ…

私は不意に後ろから抱きすくめられた。
「僕は…うぬぼれてるんじゃないよね。」
驚いて振り返った私の唇に亮平のそれが重なる。
「君も同じ気持ちでいてくれてるんだよね。」

そして、私の思考は完全に停止した。







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操り人形-切り取られた青空13

操り人形


道化師に操られているマリオネットのように、私たちは夜の街に吸い込まれて行き、そして…私たちは肌を重ねた。

「お願い、あんまりよく見ないで。」
「どうして?」
「痩せられたけど…お肉だってぶよぶよだし、皮は余ってるし、ぜんぜんきれいじゃないもの。」
「そんなことないさ、とってもきれいだよ。それに、余ってる皮は君の努力の勲章だからね。そんなこと言ったら僕だって余ってる。」
「男と女とは違うわ。」
「違わないよ。」

私は亮平の海に溶けていった。そして、彼の中でゆったりと呼吸していられる自分を見つけた。
傷の舐め合いと人は言うかもしれないけれど、私はリバっていく中で、修司とのそれに少なからず引け目を感じていた。女として見られていないとさえ思っていた。。

だから…素直にきれいだと、肉のたるみを勲章だと言ってくれた亮平の言葉がすごく嬉しかった。

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塗り重ねる噓-切り取られた青空14

塗り重ねる嘘


「こんな時間なの?!帰らなくっちゃ!!」

時間を確認するのに携帯を開いた私は一瞬にして現実に引き戻された。

-プルルル プルルル…-
「あ、おかあさん、私加奈子。ごめんね話し込んじゃっててすっかり遅くなっちゃって…マナ寝ちゃったの?陸は?やっぱりテレビ…うん、じゃぁ明日迎えに行ったら良いのね。ありがと、じゃぁそうするわ。」
私はまるでもう家にいるかのような口ぶりで母に電話を入れた。lここはまだ東京-しかも私の隣には亮平がいる。

「今のはお母さん?」
「私のね。」
「迎えに行かないでいいなら、もう少し一緒に居られる?」
「…でも、今日は…帰るわ。」
「明日も、逢えるかな。」
「明日は日曜日だから、ちょっとムリ。」
「じゃあ明後日は?もう1日ならこっちに居るのを延ばせる。」
「後でメール入れるわ。」
「待ってるよ。」


家に帰り着いたとき、修司はすでに寝ていた。
私はあわててシャワーを浴びて自分の香りをこの家のものに戻した。

風呂場から出てきた私は、リビングにぼーっと座り込んだ。そこに、しばらくして修司が起きてきた。
「いつ帰ってきたんだ?」
「うん…?ちょっと前。」
「こどもたちは?」
「マナが寝ちゃってて、置いてきちゃった。陸も最後までテレビ見たいって言うし。」
さも、実家に寄って置いて来たように言う私。陸がテレビを最近遅くまで見てるのを私が怒っていることを修司も知っているから、それまで付け加えて…
「そう、俺、明日も出かけっから、あっちでゆっくりしてきていいよ。」
すると、修司は私の嘘に気づきもしないでそう答えた。私はホッとする反面、休みの度にどこかに出て行く修司に少し腹を立てていた。
(本当は、もうこんなことを言える立場ではないのに)そう思いながら。

「じゃ、先に寝るわ。」
修司が寝室に戻り際、そう言うとすっと私を抱きしめた。
「きゃぁ!」
それはいつものことなのに、私はその時叫び声を上げて飛び退いてしまった。
「ん?何??」
「ごめん…今日はかなり疲れてるみたい。メールだけチェックしたら寝るから」
「おう、早く寝ろよ。」

私はパソコンを開いた。宣伝以外にメールは2通、1通は亮平から。そしてもう1通は…うららさんからだった。

-かりんちゃん、どーも!きょうはおつかれさんでした。(中略)

ところで、今日の取材の帰りにかりんちゃんとエイプリルさんが一緒だったのを見かけたような…もう2人とも普通だから良く似たカップルを見間違えたのかもしんないけどさ。
私もオフ会でアブナイとか言ったし、なんか気になってね。人違いならいいけど。
んじゃぁ、また♪                                         うららー

-人違いですよ~。私、こども迎えに実家に帰ったし。 
今日は楽しかったですね。また、オフ会やりましょうね 
                           
                                                  かりん-
そう打ち込んだら、涙が出た。私はどれだけ嘘をつけばいいんだろう。

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悪寒-切り取られた青空15

悪寒


さっき、修司に抱きしめられたとき…私はなんで声を上げて飛び退いてしまったのだろう。
亮平のことに対する後ろめたさか…

そもそも、私は修司を愛しているんだろうか-

私と修司は職場結婚。好意がなかったって訳じゃないけど、みんなからお似合いとほだされてなんとなく付き合い始めて、修司のプロポーズをすんなり受け入れて結婚した。

それでも結婚してすぐ陸が生まれて、瞳が生まれて…子育てに一生懸命で…それが幸せだと思っていた。

パパ、ママと呼ばれるようになって、生活共同体にすり替わっていった私たち夫婦の関係。それにそんなに寂しさなんて感じていなかった。

私は最初から今まで、本気で修司を愛していなかったのかもしれない。そう考えた時、私は自分の気持ちがおぞましくなり、体が震えて吐き気を感じた。(私の結婚って自分の居場所が欲しかっただけ?)だとしたら、私ってサイテーだわ…

私は亮平のメールをその夜開かなかった。いや、修司がすぐそばに居る空間で開くことができなかった。

そして、修司の隣にもぐりこむ事さえできずに、こどもたちの居ないこども部屋で、まんじりともせず朝を迎えた。

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木は森の中へ…切り取られた青空16

木は森の中へ…


私は翌日、こどもたちを迎えに行く前にネットカフェに寄って亮平のメールを開いた。

-やっぱり僕たちは元々同じひとつのものだったんだよ。だからこんなにも惹かれあうんだと思う-

明日の夕方にはどうしても帰らなくちゃいけない。本当は君を連れ去ってしまいたくらいだ。
それが駄目でも、せめてもう一度逢いたい-

もう一度逢いたい…それは私も同じ気持ちだった。

-今日できることはやっておくわ。そしたら子供たちを送り出してから9時には横浜駅にはいけると思うから。-

ずっと待っていてくれたのかもしれない。すぐに返事が来た。

-じゃぁ、9時に横浜駅西口で待ってる。-

木は森の中へ…人は人の中へ。最初はみんなと一緒に東京駅で、次は2人で横浜駅。デブの頃には目立つからと、こんな逢い方は考え付かなかっただろう。ましてや「人違い」なんてしれっと言うことなんてできなかっただろう。

痩せると性格まで変わってしまうのかもしれないなと私は思った。

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うらはら-切り取られた青空17

うらはら


月曜日-こどもたちを送り出した私は、すぐに横浜駅に向かった。

(朝量った時には増えてなかったんだけどな、何だろう)弾む心とは裏腹に、なんだか体が重かった。

「待った?」
「ううん、全然。」
横浜駅に着いた時、亮平は既に待っていてくれた。

「そういえばお土産も買わなきゃな。1日伸ばしてるし、なんか持って帰らないと何言われるかわからない。かりんちゃん、おススメはある?!」
「そうねぇ…それなら東京で買ったほうがいいんじゃない?!東京に行くっていってるんでしょ。」
「あっちじゃ、東京も横浜もさしてかわらないさ。なんせ、『箱根を越えると闇の中』だから」
亮平は笑いながらそう答えた。
「何それ?」
「僕がこっちの大学に行くときばーちゃんがあんまり心配するもんだから、『心配することないじゃない、同じ日本の中なんだし』って言ったらそう言われたんだよね。『箱根を越えれば闇の中だから』って。」
「へぇ、そうなんだ…。」
「実際、関東地方に疎い人は多いよ。」

「じゃぁ何がいいかしら。それでも横浜っぽいものは…」
私はそう言いながら駅の土産物売り場に向かおうと歩き始めて…足元の地面が歪んだ。一瞬、目の前が暗くなり、亮平の声が遠くなる。

「かりんちゃん?!どうしたの??かりんちゃん!!」
「うん…だいじょぶ…」
何だか上手くしゃべれない。急に体が冷たくなっていき、汗がどっと噴き出した…そして、しだいに世界は元に戻り始めた。
「大丈夫じゃないよ!真っ青な顔をしてるじゃないか!!」
「ううん、もう大丈夫よ。もう何ともないわ。」
「ダメだ、お土産なんてどうでも良い!とにかく落ち着けるとこ探そう。」
そういって亮平は、私を支えるように肩に手を回してゆっくりと歩き始めた。

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重圧-切り取られた青空18

重圧


しばらくして、私たちは駅近くのネットカフェのペアシートにいた。パソコンの前にいるのが一番2人らしい気もする。

「ホントにもう大丈夫?」
亮平が冷たいドリンクをボックスに運びながら心配そうに覗き込んだ。

「うん、おかしかったのはあの時だけだから…もう平気よ。」
「僕としては2人でいられればどこでも良いんだけど。楽にしてて、ついでだから、更新しておくよ。」
「こんな早い時間に更新して大丈夫?」
「どうしてさ。」
「結構、更新してる時間も見てたりするわよ、特に女は。」
「へぇ~そうなの。」

意に介さない様子で、亮平は自分のページを開く。
「あれ、Tomさんからメールが着てる。」

-自分、言わないでおこうとも思ってたんですが、なんかやっぱり気になって。
エイプリルさん、もしかしてかりんさんのことを好きなんじゃないですか?かりんさんもまんざらじゃない様子だったし。

でも、かりんさんには旦那さんもお子さんもいらっしゃる訳だし、そういうのって、やっぱダメですよ。
みんなが不幸になるじゃないですか。

自分みたいな若輩者が言うのは失礼かと思いましたが、敢えて言わせてもらいました。
違ってたらすいません
                                                       Tom-


「心配してくれてるのね、みんな…」
「みんなって?」
「あの日、一緒に歩いてたところをうららさんに見られてたみたい。『大丈夫?』みたいなメールが着たわ。『人違い』って返しておいたけど。」
「ばれてるか…」
亮平は、ため息を吐き出すかのようにそう言った。
「でも、僕は後悔なんかしてないよ。」
「私も…」
続きの言葉は亮平の唇で塞がれた。

theme : 自作小説
genre : 小説・文学

ゴール-切り取られた青空19

ゴール


亮平と別れた後、私はそのままデパートで弁当を3人分買って帰った。なんだか何もする気になれなかったのだ。

私がダイエットを始めてから、弁当を買うことがほとんどなくなってしまったため、この手抜きは逆にこどもたちには好評だった。

「遠足みたいだね、ママ。」
瞳はそういって笑った。
「でも、3つしかないよ。パパの分は?」
と陸。
「だってマナは1個じゃ多いでしょ。ママも今は1個は多いし、これでちょうどいいのよ。」
「ヤダッ!マナ食べられるよ~。」
「じゃぁ、食べられるだけ食べて。ママはおそばでも食べるわ。」

そして、2人にお茶を用意しよう立ち上がろうとしたとき-

…あ、まただ…
世界が一瞬歪んだ。

「ママどうしたの?」
「…ん?なんでもでない…」
陸にそう答えながら、心の中では確かに動揺していた。本当にどうしてしまったんだろう。

結局、食欲のないまま、私は夕食を食べずに眠り、そして、翌朝-私は眩暈と吐き気で起き上がることすら困難になっていた。
「いいよ、朝飯ぐらい俺がするから、今日は寝てろ。」
修司にそう言われても、這うように台所に立とうした私。彼らを送り出した後、母に電話して病院まで車で連れて行ってもらった。

診断の結果は過労。睡眠不足だ。わたしはオフ会の日からまるで眠れなくなっていた。

点滴を施された私は、自宅に戻ると今度はこんこんと眠り続けた。まるでこの数日のことをすべて忘れてしまおうとしているかのように、3日間母にすべてを任せて眠った。
いきなりの過労の診断に母は訝り続けたけれど、実の母親と言えどその理由を言うことなどできるはずもない。ただ、眠れなかっただけというしかなかった。

亮平も心配しているのではないかと思ってはいた。あのあと更新はおろか、彼に一言のメールも送ることができないままだったから。少し元気になった4日目の日にも母は家にいて、私はパソコンに触ることができなかった。

実のところ、私の携帯に亮平のメアドは入っていた。しかし、私がそれを入れたとしたら、たぶん彼は返事をすぐに携帯によこすだろう-そう思うと、母の目を盗んでまで私は、着信音の鳴るメールは使いたくなかった。

今回のことで私の体重は激減、3.2kg減って、私はあっさりと自分の目標の55kgを達成してしまった。
嬉しいはずのゴール。でも、こんな形で来てしまうとは…私は何か複雑だった。

母が帰った後、すぐに私は亮平にメールを入れ、それからゴールを報告する記事を更新した。

theme : 自作小説
genre : 小説・文学

たすくの頭の中2

引き続いてたすくのアテレコ劇場ブロ友編です。

エルちゃん  皆口裕子さん  (YAWARA!:猪熊柔)
Tomさん   鳥海浩輔さん  (NARUTO:犬塚キバ)
うららさん   大原さやかさん (×××HOLIC:壱原侑子)
渚さん     皆川純子さん  (テニスの王子様:越前リョーマ)

前回の裏話で、修司の声を森久保さんにしたと書きましたが、森久保さんの声を充てたとたん、修司しゃべりだしました。それまでかなり無口だったんですよ。彼がしゃべりだすことによって、エンディングの細かいとこ、がとんとんと決まって…。

なので、森久保さんありがとうございました。でも、こんなとこでお礼言ってどうする。

あとですね~…こんなにちゃんと声の人が決まってるということは、文章中ではほとんどしゃべってない渚さんなんかも、私の中ではオフ会でかなりしゃべってるんです。加奈子目線にしてしまったために、かわいそうにカットされてしまったんですよ。

だから、最近流行のスピンオフの気持ちがすんごくよくわかるんです。主人公以外にもそれぞれ人生も想いもいっぱいあるんだから…作者の親心ってやつでしょうか。

theme : ヒトリゴト
genre : 小説・文学

Stand by me-切り取られた青空20

Stand by me


案の定、亮平はひどく心配していた。病気はもちろんのこと、自分たちの関係がばれたのかと、いろいろと気をもんだらしい。

-ごめんなさい、もっと早く連絡したかったんだけど母の前でパソコンを触ることなんてできなかったし、母には私がブログをやっていること言ってないから-

すぐ目の前の画面の中にある愛しい人。でも、すぐ目の前なのに触れることさえできないもどかしさ。

-今すぐ君をここに連れてこれたら-
(何もかも捨てて亮平の許に行けたらどんなに幸せだろうか)

でも私にはそんな勇気はありはしなかった。1日に何度もパソコンを開いて彼の言葉を反芻して空を抱きしめる…それが精一杯だった。

theme : 自作小説
genre : 小説・文学

反発-切り取られた青空21

反発


変わり映えのないいつもの日常。そこにさしてきた光に私はしがみつきたかったのかもしれない。

あれから1ヶ月が経とうとしていた。

-休日出勤したんで代休が取れた。月曜日の朝にそっちにいられる様にするから出てきて欲しい-

金曜の夜、そんなメールをもらって、私は浮き足立っていた。久しぶりに亮平に逢える!それだけでひとつひとつの事柄さえ、違って見えるような気がするほどに。

「ママ、最近お化粧してるね。」
そんな土曜の朝、FCに送っていく車で、私は陸からそう言われた。修司同様そういうことには無頓着だと思っていたから、それにはかなり驚いた。
「痩せたらねいろんな服も着られるようになったし、おしゃれしたくなったのよ。」
「でも…ママじゃないみたいだ」
「デブのままの方ママらしいって言うの?」
「別に…そうじゃないけど…」
いつもは陽気な陸の口はこの日重く、そしてちくちくと私の心に突き刺さった。

「明日、サッカーのお当番(FCのお茶当番が定期的に回ってくる)忘れないでよ!」
練習場に到着して、陸はそう言うと車を降りて駆け足でグラウンドに走っていった。

たぶん…陸は私の心の変化を理屈じゃなく感じ取っているのだろうと思った。表に出すまいとは思ってはいるけれど、きっとそれは何かの形でこどもたちには見えているのかもしれない。
怖かった。ものすごく恐怖感を感じているのに引き戻れない自分のことも怖かった。

theme : 自作小説
genre : 小説・文学

苛立ち-切り取られた青空22

苛立ち


亮平と再会する日の朝、私は苛立っていた。こどもたちの動きがいつもよりのろく感じた。特に瞳はいつも結んでやっているツインテールがきまらないと涙目で訴えてくる。
(この子もやっぱり何かを感じ取っているんだろうか)
こどもたちに後ろめたいという思いが苛立ちをさらに加速させたのかもしれない。私は瞳に向かって、つい大声で怒鳴ってしまった。
「いい加減にしなさい!そんなことばっか言ってたると、ママどっかに行っちゃうからね!!」
「ヤダぁ~、ママどこにも行かないで~」
私の一言で瞳は火がついたように泣き出した。しまった!この子そういう事に敏感というか過剰反応しやすいんだったわ。赤ん坊の時には、冗談で「バイバイ」って手を振るだけで泣く子だった。
「ごめんごめん、行かないわよ…行かないし、もう一度結びなおすから、学校行ってらっしゃい。」
「ホントに?!」
瞳は涙声で私に念押しした。
「当たり前じゃない。ママの家はここだよ。」

それで、何とか機嫌を直して瞳は出かけたけれど、なんだか私の方が出鼻を挫かれたようで、疲れてしまった。やっぱり後ろめたい気持ちがつきまとう。

その一方で、何もかも忘れて亮平にのめり込んでしまいたいと思う部分もあって、私は自分の気持ちの裏腹に一番苛立っていたのかも知れない。

theme : 自作小説
genre : 小説・文学

後悔-切り取られた青空23

後悔

待ち合わせ場所に、亮平は車で現れた。
「新幹線降りてからの乗り継ぎも良くないしね。それに、この方がずっと2人でいられると思ってね。」
彼はそう言うと、しばらく車を走らせて人気のない川の土手の少し下がった所に車を停めた。そして、シートを倒して腕を絡めてきた。
「いい?」
「…ここで?」
「ダメかな…」
亮平はいたずらっぽく笑って言った。私はゆっくりとかぶりを振った。

人通りはないとは言え、いつ誰が来るのかわからないという思いと、デブの頃にはこの狭い空間で重なり合うなんてことを考えもしなかったから、わたしは恥ずかしさと嬉しさの中でどんどんと昇りつめていった。まるで、私の中に何か別の生き物でもいるようだった。

でも、ふとわれに返って思い出すのは…今朝瞳の泣き顔。
私は本当に後悔していないのだろうか…そう、後悔が微塵もないと言えば嘘になる。

「なんだか浮かない顔だね。こんなとこでって、やっぱり思った?」
「ううんそんなんじゃないの、朝瞳に泣かれたことを思い出しただけよ。あんまり朝ぐずぐず言うから『ママ、出て行くから!』ってつい怒鳴っちゃって…あの子置いてかれるって事にものすごく恐怖感が強いから。」
「そう、じゃぁこどもたちも連れて僕のところに来ればいい。僕は君といられれば、一向構わないよ。」
嬉しいはずの亮平の言葉に私は何故か返事できなかった。


しばらくして、私の携帯が鳴った。
「はい、板倉です。あ…中村先生、お世話になってます。はい、瞳が?はい…ちょっと今、出先なんで1時間くらいはかかると思うんですが、迎えに参ります。はい、ありがとうございます。それでは失礼します。」
「どうしたの、瞳ちゃん…」
「熱があるって。だから今日はおかしかったんだわ。ごめんね、折角休みまでとって来てくれたのに、私帰らないと…」
「いいよ、送るよ。」
「ありがと、近所だと見られてもいけないから、一駅手前で降ろして。そこから電車で帰るから。」
「わかった。」


亮平と別れた後、私は家に戻って車で瞳を迎えに行った。保健室で寝ていたあの子はかなりぐったりとしていた。
「ありがとうございます。」
「さっき測ったら、8度9分でした。ちょっと胸を開いてみたんですが、水疱瘡のようですね。」
「熱があるっていうんで車で迎えに来ましたから、帰りに病院に寄って帰ります。」
私はそう言って養護の先生に会釈した後、瞳に謝った。
「ごめんね、朝から辛かったんでしょ。」
「ううん、学校に来てからだよ。」
私は自分のことにかまけて瞳の不調のサインを見逃していたんだ。そう思うと、今まで分かっていながら目を背けていた後悔の念が一気に噴出してくるのを感じた。








theme : 自作小説
genre : 小説・文学

電話-切り取られた青空24

電話
   

その日は修司は朝早く大阪に出張していた。瞳はやはり水疱瘡で、
「今時は大人になるまでかからないで重症化する人が多いんですよ。こどもの内の方が軽く済みますから、良かったんじゃないですか。」と診察を受けたお医者様に言われて帰ってきた。

「陸ももう済んでるけど、今日はパパもいないし、マナはママと一緒に寝させるわね。」
「あ~、 マナずるい!」
「小学校3年にもなって、何言ってるの、陸。」
「マナだって小学生じゃん」
「そうだけど、マナは病気でしょ。」
「…」

そんな話をしていると、電話が鳴った。修司からだった。
「あのさ、仕事が長引いちゃってさ、明日帰れると思ってたんだけど、まだこっちに2~3日かかりそうなんだ。」
「大変ね。でも、こっちも大変だったのよ、マナが熱出したって学校から電話かかってきて、病院に連れて行ったら水疱瘡だって。」
「水疱瘡か…ならないより、なった方がいいんだろ。」
「それはそうだけど、今日からしばらく動けないわ。」
「目処がついたらなるべく早く帰るから」
「わかった、気をつけてね」
「おう」

前にも出張が長引くことはなくはなかったから、私はすんなりとその言葉を信じていた。

しかし…その翌々日のことだった。
「もしもしコハちゃん?(私の会社時代のニックネーム、旧姓小橋から)修いるかな。」
「え、まだ帰ってきてないですよ。」
それは私も知ってる修司の同期の男性社員北川さんだった。
「病院にでも行ってるの?電源切ってあったから、こっちに電話したんだけど。一昨日、大阪からファックスしてもらった資料のことで、帰ってきたら電話くれるように言ってくれるかな。で、ちょっとは元気になった?修。連日オーバーワークだったから、風邪も引くわな。」
「え?ええ…まぁ。」
病院?風邪?何のことだと思いながら、驚いた私は咄嗟に修司のアリバイ工作の片棒を担ぐような返事をしていた。北川さんに修司が帰ってきていないことを知られたら、それはそれで会社には問題なのだろうからと思って…
「コハちゃんも移されんなよ。」
「はい。」
私は当たり障りなく返事をして電話を切った。

本当は出張はやっぱり1日でおわっていたんだわ。じゃぁ、何のためにあんな電話をよこして帰って来ないんだろう…やっぱり浮気?
受話器をホルダーに戻してから私は、わなわなと震えてリビングの床にへたり込んだ。
私ってば、自分のことを棚に上げて動揺してる…
それはどうにも説明のつかない不思議な感情だった。

私は修司の携帯に電話を入れてみた。やはり電源を切ってあってつながらない。
とにかく私は、修司に北川さんに電話を入れるようにとだけメールを入れた。

そして…次の日には珍しく修司の兄が珍しく電話をかけてきた。
「加奈ちゃん、修司に言われてた物件だけど、1つ良さそうなのがあるって言っといて。早めに1度帰って来いって。」
「物件?…」
「えっ、あいつ…まさか加奈ちゃんにまだ…あ、それならもう一度携帯に電話してみるよ。」
お兄さんは、私が物件の意味が解からないのが判ると、明らかに慌ててそそくさと電話を切ってしまった。
修司は愛知県の出身で、お義兄さんは家を継いで今も実家に住んでいる。そのお義兄さんが見つけてくる物件って…一体何?修司は何をしようとしているんだろうか。

私はまた修司に電話を入れた。しかし、このときにも電話はつながらなかった。いろんなことで頭が混乱し、いっぱい聞きたいこと、聞かねばならないことが山ほどあるというのに…

気がつくと、学校にはまだ行けないが、元気になった瞳がそばに来ていた。

「ママ、どうかしたの?」
瞳は私の顔を覗き込んでそう言った。
「どうしてそんなこと聞くの?」
「だって、すごくこわい顔してるよ」
「そう?」
私は心配そうな瞳に向かって無理に笑ってみせた。
「今日はパパ帰って来るかな。お土産何かな。」
すると瞳は待ち遠しそうにそう言った。
でも…修司は本当に帰ってくるのだろうか。2~3日帰るって言ってはいたから、今日か明日には…けれど私は帰って来るとは言えず、瞳を抱きしめて泣いていた。
「ママ、痛いよ。」
という瞳の声に
「ごめんね…」
と謝り続けながら。





theme : 自作小説
genre : 小説・文学

真実-切り取られた青空25

真実


その日の夜、修司は帰ってきた。
「ただいま。」
とドアを開けて入ってきた修司は、いつも通りの笑顔だった。
「あ…おかえり…」
ものすごく言いたいことが、聞きたいことがあるのに、ありすぎて空回りしているのか、私がまず言えたのは、型通りの挨拶のようなことだけだった。
「北川さんに電話した?」
「ああ、メール入れてくれたから。ありがとな。」
本当に聞きたいことが聞けない。

「あなた…出張じゃなかったのね。それに、お義兄さんの物件って何?」
私が聞きたいことを聞けたのは、食事を終えて修司がリビングのソファーに座った後だった。
「ばれたか…」
修司はバツの悪そうな顔はしたけれど、驚きはしなかった。ばれるのも時間の問題だと開き直っていたというこうなのだろうか。
「そのことで、相談したいことがあるんだ。いや、お願いっていうのかな。」
修司はそう言って照れた。私はその照れた様子が無性に腹立たしかった。それが妻に他の女の存在を暴露する顔?そう思った。


「俺、仕事やめようと思ってる」
辞めて誰と故郷に帰ろうと言うの…
「最近うちの会社があんましよくないのを加奈子もわかってるよな。」
今のご時勢どこだってそうだけど、修司の会社もご他聞に洩れず不況の波をモロ被っている。
「んで、なんとか転職できないかと思って、先輩のツテたどっていろんなとこに声もかけてたりしたんだけど、なかなか思うところはなくってさ。」
もどかしい、早く言えばいいのに。もう一緒には暮らせないって。そしたら…
「いっそのこと自分で商売始めた方がいいかもなって思い始めて、俺元々料理が好きだしさ、そっちの方でこんど探してみたんだ。で、大阪でやっと見つけた。俺、お好み焼き屋するわ。」

確かに、大学時代からこっちに出てきて外食が多い学生の中、小まめに自炊していたみたいだし、結婚した頃は時々作ってくれたりもしたけれど、それがどうして脱サラしてお好み焼きを焼くという発想になるのだろう。てっきり女性の話が出てくると思っていたのもあって、私の頭はますます混乱し、もうショートし寸前だった。

そんな私を置き去りしたまま、修司はなおも続けた。
「大阪にお好み焼き屋を開店するための塾があるんだ。そこに行ってきた。条件が合えばきっちりサポートもしてもらえるって聞いてきた。」
修司はそう言うと、背筋を伸ばして座り直した
「でさ、こっちでやるのもいいんだけど、なんせ店舗を借りるのも高いし、何となくこの辺ってお好み焼きって感じじゃない。なら、日進の方がいいんじゃないかと思って兄貴に電話したんだ。ちょうどいい条件のがあるらしい。だから…」
「だから?」
「俺についてきて欲しいんだ。」




theme : 自作小説
genre : 小説・文学

慟哭-切り取られた青空26

慟哭


いきなり告げられた修司のこれまでの行動とそれに至る想いと…そして、何より私は彼の潔白に押しつぶされそうになっていた。
私はそれまで、彼を「同じ穴のムジナ」として見る事で安心している部分があった。それが崩れ去った今、私の罪が私によりのしかかってくるのを感じた。
修司が別の女と家を出たら、大手を振って亮平のところへ行ける…私は一瞬でもそう思ってしまったのだから。

「いきなり言われても…」
私は震えながらそう答えるのが精一杯だった。
「ま、いきなりじゃな。でも早いにこしたことはないんだ。会社辞めるにもある程度時間はかかるし、いい場所なら待ってはくれないだろうし。それに…」
「それに?」
「加奈子が痩せてくれたから、俺も踏み出そうと思えたんだからな。」
私が痩せることと、修司が脱サラをすることに何のつながりがあるんだろう。
「実はこれは、会社がどうのとかそんな話じゃないんだ。」
「えっ。」
「ホントはいずれそういう店を持ちたいとずっと思ってた。でも、言えなかった。店を開くとなると、加奈子の協力がなきゃ何も出来ない。でもお前、どんどんデブっていったろ。そんな時に店なんて始めたら、もっとデブになってくんじゃないか、逆に疲れて体壊す方に行くんじゃないかって、そんなこと思っちまったからな。」
「…」
「痩せ始めてからは店が原因でリバったら、一生うらまれそうだなとか…。でも、今回の加奈子は違ってた。全く別の人間生まれ変わった、そんな気がしたんだよ。今なら大丈夫だって、そう思った。」
修司は私のことに無頓着だった訳じゃないんだ。何にも言ってくれないから、どうでもいいと思われてるとばかり思ってたのに…
「じゃぁ…」
「じゃぁって何だよ」
「じゃぁなんでそれを言ってくれなかったの?!私はもう愛されてないんだと思ってたのよ!!」

そうよ、愛されていないと思っていた。もっとしっかりとつなぎとめていてくれたら、あんなことはしなかっただろうに。
すると修司は照れくさそうに頭を掻きながらこう言った。
「頑張ってるお前に、頑張ってるなんて言ったら頑張りすぎちゃうだろーが。俺の夢なんか話したら、それに近づこうと絶対に焦って、ちょっとでもできないと落ち込む。お前ってそういう奴だろ?」
口で言わないとダメなのか?修司の目はそう言っていた。

メーテルリンクの「青い鳥」。幸せの青い鳥は探さなくったって家の鳥かごにちゃんといた。私って大バカだ。

「私、行けないから!!」
反射的に私はそう叫ぶと、寝室に走りこんで鍵をかけ声を上げて泣き崩れた。

私はもう…どこにも行けない…











theme : 自作小説
genre : 小説・文学

欠片をつなぐもの-切り取られた青空27

欠片をつなぐもの


「加奈子、開けろよ!」

修司はしばらく扉を叩いていたが、少しするとその音はしばらく止んで、鍵を開ける音がした。ああそうだ…このドア、鍵のタブは内側しかないけど、実は硬貨を使えば外からも開けられる…
「来ないで!!」
私はドアを開けて入って来た修司にそう叫んだ。
「ごめん俺、加奈子がそんなに嫌がってるって思わなかった。そりゃそうだよな、いきなり板倉の家の方に来いって言ってもな。」
そうか、修司は自分の親元に引き寄せる形になることを嫌がってるんだと思ってるんだ。実際に近くなればトラブルがないかどうかはわからないけど、板倉の義父や義母を私はちっとも嫌だと思ってない。
「そんなんじゃないわ。」
「じゃぁ、何だ?」
「私、あなたをちっとも信じてなかった。あなたが浮気してるんだってずっと思ってた。」
それを聞いて修司はあきれたという顔をした。
「お前…そんなこと考えてた訳?!俺がそんなにモテる訳ゃねーじゃん…バカだな。」
そして、修司は私の頭を優しくなでながらこう言った。
「そんな風に思ってくれるのは…加奈子お前だけだよ。ホント、今日はお前…恥ずかしいことばかり言わせるよな。」
修司は座り込んでしまっている私に合わせて腰を落として、口づけた。
私はこんなに優しい人を裏切ってしまったんだ。そう思うと尚更涙が止まらなくなって、私は思わず彼から顔を背けた。
そうだ、こんな優しい人を裏切ったんだもの…私は罰を受けなくちゃいけない。言わなきゃ…そして、修司からも亮平からも離れよう…

「…実は…」
私が涙でかすれた声で自分の罪を告白しようとした時、陸が部屋に飛び込んできた。
「引越しだなんて、僕はイヤだよ!パパは自分のことしか考えてないんだ!来年からやっと正メンバーに入れてもらえるのに!」
陸は少し遠くても、全国大会に頻繁に出ている今のFC行きたいと自分から言い出したくらいだから、離れたくないのだろう。
「陸、聞いてたのか。」
「あんな大きな声だしたら、聞こえるよ!」
陸はふくれっ面でそう答えた。
「ねぇママ、ママも行きたくないんだよね。行かないって言ってよ!!」
そして私に向かってすがりつくような目をしてそう言った。
「サッカーなんてどこでもできるじゃん。」
「僕はあのチームが良いんだ、パパは何もわかってないよ、パパのバカ!パパなんてだいっ嫌いだ!!」
そう言うと陸はこども部屋に泣きながら走っていった。
そして、入れ替わりに今度はおずおずと瞳が入ってきた。もう既に目に一杯涙を溜めながら…
「ねぇ、マナ一緒じゃないとヤダよ。パパもママもお兄ちゃんもみんな…バラバラなんてダメだよぉ…マナはみんな一緒だったらどこでもいくよ…」
そしてついに本格的に泣き出した。

私にはその瞳の一言が痛くてとても温かかった。

みんなが一緒にいなくちゃダメ…それが、私が亮平の岐阜への誘いに答えられなかった本当の理由なのかもしれない。
たとえば、私と修司の欠片同士が隙間だらけで今にも崩れそうであったとしても、そこに陸や瞳とが溶け合って新しくつなぎ合わされていたんだ。そしてそうやってつなぎ合わされた欠片はきれいに合ってはいてもつなぎ直されていないものよりずっと強くなる。見た目はいびつだとしても…

私は自分の罪を償うことで今度はつなぎ直された欠片を粉々に壊してしまうことになるのか…それもできない。そう思うと、私はすんでのところで自分の罪を飲み込んでしまうしかなかった。




theme : 自作小説
genre : 小説・文学

切り取られた青空-切り取られた青空28

切り取られた青空


夜…私はブログの閉鎖を報告する最後の更新をした。

-この度事情があってブログを閉鎖することになりました。目標も達成しても維持するのが大変だからホントは続けたいんですが、家庭の事情でそうも言ってられなくなりました。

今まで仲良くしてくださり、励ましてくださった皆様本当にどうもありがとうございました。
時間ができたらリバらなくても戻って来たいので、またそのときはよろしくお願いします-

1年半の思い出が走馬灯のように駆け巡る。夢のような時間だった。そして魔法にかかったように新しい私を手に入れた時間でもあった。

でも、夢はいつか覚めるもの。最初からそんなこと解かっていたはず。私はできるだけ目覚めることを遅らせようとしてた眠り姫だったのかもしれない。

パソコンの中はいつも青空。そこにはいつも亮平と仲間の笑顔があった。でも、それは本当の世界じゃない。リアル世界には嵐も来るし雷も鳴るし、突風も吹く。だからこそ、晴れた空の青がとても愛しいのだ。

私は私の本当の世界を青空にするために今、この切り取られた青空を自分の手で封印する。

それから亮平に別れのメールを書いた。どう取り繕ろおうが、私のわがままでしかない、それは解かっている。許してとしか言えない、恨んでくれてもいい。そんな風に書いた。

ただ、あなたが好きだった。たぶん…世界で一番。それだけは嘘じゃない…それは書けなかったけれど…

私は震える手で送信ボタンをクリックした。

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